第46話 撤収!

 しばらくするとガシャンガシャンという金属のような音が近づいて来るのに気づいた。


「待たせたな、思ったよりガタが来てて手間取っちまった。」

 そう言いながらロゼッタがゴーレムの肩に乗りながらこっちに歩いてきた。


「ボロイけど丁度いい感じの鎖も見つけたから一緒に持ってきたよ。」

「ありがと、いけそう?」

「ああ、あたしがここから直接命令を入力する形だけどちゃんと動くし大丈夫だと思う。」

 そう言うと両手で持っていたコードがぐちゃぐちゃと繋がった端末を見せてくれた。


「とりあえず、こいつにいい感じの下敷き持ってこさせるからもうちょっと待っててな!」

 そう言うとガシャンガシャンとタルタロスの方へ向かいロゼッタとゴーレムは歩き出した。


「ちょっと面白そうだなぁ…。」

「ご主人はそんなことより体のことを考えてください!!」

 バシッとムゥに肩を叩かれただけで体中に痛みがズキズキと走り回った。


「ちょっ…ムゥ!!」

「むちゃな動きするから体がついてこれなくて悲鳴をあげたんでございます、いったい何をしたんだか…。」

「…わかんない、なんか紫の竜みたいなモヤに力をよこせって言ったあと、ゼルの声で意識が戻ったらああなってた…もう無我夢中でよく覚えてないんだよ…。」

 そう、ゼルの声が無かったら意識すらも完全に飲み込まれていたほどの力を無理やり使った…そういう印象だった。


「じゃあとりあえず竜の力、ドラゴンフォース(仮)とでもしておきましょう。」

「竜が見えた気がしたのは確かだけど、そのまんまじゃん…。」

「いいのでございます!とりあえず、ドラゴンフォースは現状、諸刃の剣不用意に発動させようとしないでください、リスクが高すぎます。」

「善処するよ…。」

 実際、現状体の無理に加え使おうとする意識が奪い取られる、つまり暴走の危険性もあるということだ下手に使うわけにはいかない…これで大事な人を傷つけたら意味がないのだから。


「あそこまでヤバイ敵はそうそう来ないとは思いますけどね、筋肉バカは異常事態もいいとこでございますし、アルビノのハイドラも滅多に居ませんからね。」

「あのハイドラそんなレアなの?」

「そうでございますよ、普通のハイドラはもっと小さいし弱くて脆いです。」

 今回遭遇した敵はそうとう運が悪い分類だったらしい、タルタロスという援軍もあったがホントよく退けれた…。


「あ、ロゼッタ帰ってきたよ。」

 ゼルの指差す方向を見るとロゼッタとゴーレムが何かを掴みズルズルと引きずりながら戻ってくるのが見えた。


「お待たせ!いい感じの鉄板見つけたよ!」

「それではさっさと頭乗っけて帰りましょ!撤収でございます!!」

 そう言いながらロゼッタとムゥは鉄板にハイドラの頭を乗せ、ゴーレムに鎖で引っ張らせるように準備を進めた。


「こんなもんかな?」

「そうでございますね、一応スペースもありますからこのまま頭と一緒にあたくし達は乗って行けそうでございます。」

 ゴーレムの肩に乗ったロゼッタと鉄板の上にハイドラの頭と俺達3人を乗せてゴーレムに鎖で括りつけた状態が完成した。


「乗り心地は良くないだろうけど歩いて行くよりマシだろうし我慢してくれよな。」

 ロゼッタが言うのに俺は大丈夫と手を振ってみせた。


「それでは、帰還いたしましょ!」

「出発!」

 ロゼッタが端末を操作しゴーレムがガシャン、ガシャンと音を立てながらゆっくり歩きだしズルズルとソリを引っ張るように動き出した。


「結構揺れるな…。」

「ただの鉄板に乗って引っ張ってもらってるだけですからね~。」

 しばらく乗っていたが思いのほかガタガタ揺れてお尻がブルブルと振るえるようだった。


「中層はネズミ狩りまくったせいでちょっと臭いのでございます。」

 中層に入ると確かに血の臭いや獣の臭いなどが溶け合いなんとも言えない悪臭が漂っていた。


「まぁほっとけばそのうち収まるでしょう。」

 ハイドラの頭の上にちょこんと座り足をブラブラと遊ばせながらムゥは休んでいた。


「ご主人も少しは休んでください~一番重傷なんですから。」

「寝れないよ!!」

 流石にこの揺れでは寝れなかった…。


「もうすぐ上層に上がれそうだよ!」

 ロゼッタの声が石畳の上をギィギィ擦れながら進む中聞こえてきた。


「結構音酷いよね…。」

「まぁ、鉄板擦り付けてるようなもんですから…。」

 ムゥはうるさそうに耳を塞ぎながら周りを眺めている。


「結構時間たってるのかな、ここに突入してから…。」

「周りは薄暗いし感覚狂ってる気がするけど、そんなに経ってないんじゃないかな?」

「2~3日くらいでしょうか?結構時間的には経過してますよ~。」

 食事の間隔などからたいして経ってない気がしていたが思ったより時間が掛かっていたようだった。


「これの解体やご主人が動けるようになるまで1日以上確実に掛かってますからね~。」

 ムゥがハイドラの頭をベチベチ叩きながら教えてくれた、時間なども把握しててなんだかんだ優秀なのだ。


「でも、あのネズミ達帰りは出てこなかったね…。」

「流石にあれだけ薙ぎ払われたら警戒して出てこないでしょ、数もだいぶ減っただろうしね。」

「上層は普通に冒険者が活動してるみたいですし、もうほぼ安全と言っていいんじゃないかと?」

 そう話しているとだんだんと坂道になってくる、上層への通路に入ったのだろう。


「今回の冒険は大変だったなぁ…。」

「まだ報告というとってもめんどくさい仕事が残ってますけどね~。」

 ムゥに報告しろと言われて少し気が遠くなる気分だった…。


「とりあえず、そういうのは出てから考えな。」

「そうするよ、はぁあぁ…やだなぁ…。」 

 なんだかんだで出口はもうすぐだ、とりあえず街に着いたらゆっくりベッドで寝たい気分だよ。

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