第45話 撤収準備

 ウガルルムとハイドラ、三つ巴の乱戦の結果ハイドラは死にウガルルムは去る形で俺達は生き残った。今は戦利品としてハイドラの解体をしているがムゥ達が言うには、タルタロスとの戦闘で想像以上に損傷が激しく頭の一つはぐちゃぐちゃに裂けていて完全にダメになっており他二つの頭も一つは報告用に、もう一つもトルナードの暴風を受けて首が内側からズタズタに裂けている。


「思っていたよりも損傷が激しいのでございます。」

「だなぁ、頭は三つのうち一つはタルタロスの腕ごとぐちゃぐちゃでもう使い物にならねぇし。」

「葬送魔法デスレクション、損傷していた部位も一緒に分解しちゃったみたいでちゃんと剥ぎ取れる部位が想定外に少ないのでございます。」

「この巨体だから、作業が少ないのは助かるんだけどなぁ…。」

 ロゼッタは頭を掻きながらハイドラの巨体を眺めていた。


「向こうは大変そうだな…。」

「あの大きさを解体するんだからしょうがないよ…。」

 俺とゼルは二人の作業を見つめながらハイドラの肉を食べていた、体が栄養を求めているのか予想外に肉が美味しいからか自分でも驚くほど食べるペースが衰えない。


「あ、ご主人~食べるなら全部食べちゃってくださいね、時間が経つと臭みが強くなりすぎてとてもじゃないけど食べれなくなるので!」

 作業中のムゥからそんなことを言われた、たぶん地球に居た頃はもう満腹で無理だったが今は全然食べれそうだし折角なので食べれるだけ食べてしまおう。


「こんなもんですかね~。」

 そのあとしばらく時間が経った、いつの間にか寝てしまっていたのだろうか焚火の横でごろんと眠りについていた。


「俺、いつの間にか寝てたのか…。」

「おはよ、お肉ホントに全部食べた後ばたって倒れてそのままぐっすりだったよ?」

 隣には笑いながら座っているゼルの姿があった。


「ご主人~とりあえず採取終わりましたよ~。」

 作業が終わったらしくムゥが手を振っている。


「ゼル、行こう。」

「立てる?」

「たぶん、大丈夫。」

 体がズキズキと痛むがどうにか立ち上がれるくらいに回復している、結構寝てしまったのだろうか。


「一応歩けるくらいは回復しましたね。」

 ムゥが残したハイドラの頭の上で手を腰にあてて立ちながら声を掛けてくる。


「お前は何やってるんだよ…。」

「ちょっとカッコつけてみただけでございます~。」

 ホントに何だったんだ…。


「とりあえず、分解させなかったその頭の他に採取したのはまとめておいたよ。」

 ロゼッタも腕をあげて体を伸ばしながら歩いてきた。


「想像以上に損傷が激しくて状態のいい物が少なかったですがそれでも十分な量かと。」

 そこには皮、鱗、甲殻、骨、牙や爪と解体したハイドラの素材が綺麗に並べられていた。


「手伝えなくて悪かったね…。」

「ご主人は倒すという大仕事をやってくださったので大丈夫でございますよ。」

「こういうのはあたしの方が得意だろうしね!」

 正直結構休ませてもらえて助かった、おかげで痛むが歩けるくらいにはなってきたのだ。


「で、これはどうやって持って帰るんだ?」

「素材はあたくしのカバンに入れて持って帰るのでございます。」

「頭は?」

「無理でございます!太すぎて入りません~。」

 あの万能カバンにも無理なものがあった…。


「え、じゃあどうやって持って帰るんだよ、さすがに担いでとか無理だぞ?」

「ふっふっふ!そこはちゃんと考えてあるので大丈夫なのでございます、ロゼッタさん!」

 すごいドヤ顔でロゼッタに投げた…。


「まぁ、任せて見てな!」

 ロゼッタはそう言うとライフルを構えて歩いて行く。


「ロゼッタさんにゴーレムを一体捕獲してもらい命令を書き換えます。それにこの頭ごと引っ張ってもらって帰るのでございます。」

 ムゥがロゼッタを見つめながらそう説明してくれた。


「それは確かに機構技師のロゼッタにしかできないよなぁ…。」

「そうでございます~。」

 話している次の瞬間グラりと視界が傾く、足の力が抜け倒れそうになる。


「大丈夫?」

「ありがと、ゼル…。」

 スッとゼルが隣に来て肩を貸してくれてどうにか倒れずに済んだ。


「そんな状態のご主人じゃ最下層のここから戻ることもできそうにないので、ゴーレムに運んでもらうのを考えたのでございますよ。」


 バシュン!


 話していると遠くから銃声のような音が響いてきた、ロゼッタの銃撃だろう。


「作戦としては、雷の弾丸で一度機能を強制停止させてそこから直接中身を開いて命令を書き換える手筈になっております。」

 寝ている間にそこら辺の事も準備していてくれたらしい。


「そうしてタルタロスの剥がれた装甲を台車の代わりにして頭ごと運んでもらうのでございます。」

 確かにそれなら今のガタガタの状態でも戻ることができそうだ。


「とりあえずロゼッタさん待ちなのでゆっくり休んでいてくださいませ。」

「そうさせてもらうよ。」

 俺はその場に座りロゼッタの帰りを待つのであった。

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