第40話 行くぞ!
暗い、何も見えない暗闇…前にも、そうドルテルスと戦った後にもこのようなことがあった…。
「お前はなんだよ…。」
暗闇の中、モヤモヤと何かが漂ってくる、体は重く動けそうにもない…。
「俺は…そっか、ハイドラに尻尾ビンタ食らって…倒れたのか…。」
ならば直ぐにでも起きなければ、皆を助けなければ、どうにかしないと…だが体が動かない。
「まだ、死んでない…はずだよな…ここはどこなんだよ…。」
(シンデナイ…。)
正面のモヤモヤから声のようなものが聞こえてきた。
「お前は、いったい何なんだ?俺はここでのんびりしてるわけには…。」
(オマエ…オレ…。)
俺の言葉を繰り返しているのだろうか?よくわからない…。
「行かなくちゃいけない、待ってる人が…。」
(マッテル…ヒト…イル?)
「居ない?もう皆やられて…もう…。」
(カナシイ…ゼンブ…ナクシタ?)
「そんな…嫌だ…俺達の冒険はまだこれからなんだろう?こんな穴の中で終わりなんて…。」
(チカラ…ホシイ…?)
ゼル達がやられてしまったなら今更起きたところで何も…。
(フクシュウ…ウラミ…ハラソウ…?)
「そんなことしない、皆が居ないなら俺も一緒に…。」
目を瞑るとあまり長くはないが一緒に戦ったり歩いたり、話したりした記憶が蘇る…。このままいっそ、この暗闇に沈んでしまおうか。
「…キッ!」
「…きて、…して!」
声が聞こえる、ゼルの声だ…どうやら迎えに来てくれたみたいだ。
「タカユキ!起きてっ!」
はっきり聞こえた!起きてって言われたのだ、まだゼルは生きているのだ。
「さっき、力、欲しいとか言ってたよな?ならその力、俺にくれ!!」
生きているなら、こんなとこで死ぬわけにはいかない、ハイドラ、ウガルルムと強敵が居る、それでも負けるわけにはいかない。
(フクシュウ…ウラミ…?)
「復讐でも恨みでもない、俺達が前に進むために!直ぐにでも立ち上がるんだよ!!」
正面のモヤモヤに何を言っているのかとも思うが、今は直ぐにでも起きたいし使えそうなものは何でも使う。仲間のために!!
「皆、タカユキが起きるのを信じて待ってるよ…だからお願い、私も信じてるから…。」
ゼルが、皆が信じてくれている、ならば応えなければ男じゃない!!
(チカラ…オマエ…。)
モヤモヤはどことなく竜のような姿になっていってる気がする。
「だから行くぞ!お前の力も使いこなして見せる!!だからよこせ!!」
竜は大きく吠え、俺を飲み込むように近づいてくる。
ドクンッ!ドクンッ!
心臓の鼓動のようなものを感じるその度に力が湧き上がってくる、力を感じる旅に破壊や怒り、恨みのような負の感情が湧き上がり飲み込まれそうになっていく。
「違う、違う…俺はっ!!」
負の感情に飲まれそうになるのをどうにか耐えてその溢れる力をどうにか使いこなそうと試みるが次第に意識が薄くなっていく。
「ゼルっ…。」
完全に飲まれる、その時だった、唇のあたりだろうか何か温かいものを感じ一気に意識が蘇る。
「俺は…行くぞ!!」
その瞬間、暗闇が一気に吹き飛び光に飲まれていく。
ドスンッ!
凄まじい音を立ててタルタロスが倒れた。
「親父ぃぃ!!」
右腕は左の頭の中に残されたまま左足を砕かれ、胴体の装甲が砕け散りその巨体は地面に崩れ落ちた。
「ロゼッタさん、気持ちは分かりますが白蛇もこっちに来ますよ!今はっ。」
「わかってるよっ!」
ロゼッタはマガジンを換装し戦闘に備えムゥの後方で狙いを定める、タルタロスが潰した左の頭をズルズルと引きずりながらハイドラがこちらへ歩いてくる。
「フハハハ、また乱戦になるのう…これで祭りの終いかのう…。」
少し物足りなさそうなウガルルムはそれでも笑っているようだった。
「あんたが居なかったらどれだけ楽だったか!!」
ムゥがギリリと牙を剝き出して怒りを露わにする。
「では、参る!!」
ウガルルムは両手の剣を構えムゥ達に向かって飛び掛かり、それに反応するようにハイドラの足も速くなった。
「ロゼッタさんどうにかハイドラの足を止めてくださいっ!」
「くっそ!!」
ウガルルムの斬撃を槍と鉈で受け止めギィっとムゥは睨みつけ、ロゼッタはハイドラの傷ついた部分を狙い撃ちどうにか足を止めようとする。
「やはり今の貴様では味気ないな…本領を発揮できるのであればまだ楽しめたのだがな…。」
「グダグダうるせぇのでございます、あんたは何も考えてねぇのでしょうけど、こっちはいろいろ考えた結果なのですっ。」
グッとウガルルムの両腕に力がこもりムゥが押し込まれる、地面がピキッと音を立てて割れ始めるほどだった。
「ダメだっ止まらねぇ、ムゥ逃げろ!!」
ロゼッタの叫びが聞こえる。
「貴様はここまでのようだな、兄妹の好だ見届けてやる。安心していくがいい。」
「ギシャーーーー!?」
その時だった、ガスンという音と共にムゥの目の前に迫っていたハイドラの中央の頭が何かに当たり怯んだのだ。
「なに!?」
ハイドラを怯ませた何かはそのままウガルルムを狙うように降ってきた、ムゥにはそれが何か直ぐにわかった、ガダラルだ。
ウガルルムは何が降ってきたのかわからずムゥから距離を取った。
「やっと起きましたか、死んだとは思っておりませんでしたがちょっと遅かったんじゃないですか?ご主人!!」
バチンと音を立ててガダラスから鎖が外れ、そのまま地面に突き刺さっていたディスペリオンの元へと飛んで行き、それを主の元まで運んで行った。
「待たせた、悪かったよ…だから、全力を持って俺達の敵を薙ぎ倒す!」
そこにはディスペリオンを振り、ゆっくりとウガルルム、ハイドラの元へと歩き出すタカユキの姿があった。
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