第34話 準備、そして下層へ
「とりあえず、もう動いてる敵は居なさそうだね。」
俺は周りを見渡しながら動いてるモノが居ないか確認するがどうやら居ないようだ。
「この二匹は最初の一匹より弱かったな。」
「たぶん神官ネズミを倒して強化魔法が切れたのかと?」
ムゥとロゼッタが転がっている二つの死体を見ながら話していた。
「タカユキ、これどうするの?」
「あ、今行くよ!」
俺はゼルに呼ばれてジオプレートを回収しに向かった。
「なんだかんだ役に立ったね…。」
「ほんとね。」
ゼルと話しながらジオプレートもブレスレットに収納した。
「それにしてもこいつのベルト、なんなんだろ…。」
俺は一匹目の死体が付けていたベルトを触ってみる。
「普通のベルトだと思ったけど、何かを捻じった感じかな。」
「えいっ。」
バキンとベルトを繋いでいた中央の金具をムゥが鉈で砕いてしまった。
「お前…。」
「こうしないと外せないのでございます~。」
とりあえず解けたベルトの捻じれを戻していった。
「なんだろ、何かの皮かな?破けてるけど結構大きい…。」
それは薄っすら透けている何かの皮のように見える、蛇のような爬虫類の脱皮殻のような雰囲気の物だった。
「えいっ!」
ムゥが急にその皮に目掛けて鉈を振り下ろしてくる。
「だからお前、急にやめろって!?」
「ビックリでございますよご主人。」
皮を見てみると切れるには切れているのだが半分くらいの位置で鉈が止まっていたのだ。
「すごい強度だな、これなら鎧にも使えるレベルだぜ?」
それを見ていたロゼッタが皮を見て驚いていた。
「なるほど、それならライボルザードを受け止めたのも納得だよな…。」
「解けた状態でこれなら、捻じれてる状態ならもっと耐久度高いだろうしな。」
とりあえずこの謎の皮は何かの情報になるかもしれないし持っていくことにして。
「そういえばムゥ、お前に任せた神官まがいはどうだった?」
「全部倒しましたよ、ただ…。」
ちょっと歯切れが悪そうなムゥを不思議そうに見つめる。
「こちらへ。」
ムゥに呼ばれて全員で付いて行くとネズミ神官が4匹ほど転がっていた。
「これを見てくださいませ。」
ムゥは死体の中央にある魔法陣のようなものを指差して見せた。
「ムゥ、これは?」
「生贄を捧げて対象を強化する魔法陣でございます、おそらくあの死体の山はこれの生贄に使われた後に食べられたのかと。」
「あの毛のない筋肉ネズミはこれで強化されたネズミだったってわけね。」
「効力は低いのですけど生贄さえあれば重ねてかけることが可能ですのでそれで肥大化したのかと。」
とにかく人でも獣でもを捕まえて生贄に捧げてあの3匹を強化していたらしい。
「こっちの魔法陣は狂化させるものでございますが、同時に命令通りに動く隷属呪印も施されています。」
ムゥがさらに隣の魔法陣を指差しながら続けて説明していく。
「じゃああのデカいのは神官ネズミの人形だったってこと?」
「そうでございます、で、神官が1匹ずつ操作してるとなると…。」
「後一匹いるかもしれないのね…。」
ムゥは頷いて見せた。
「ここにまだいるかはわかりませんが、理性が無い狂化状態ですので暴走してどこかに行った可能性が高いです。」
「この先も気を付けなきゃいけない感じなのね…。」
先が不安になる情報だった。
「ところで、さ…そのハンマーちょっと見せてもらってもいいか?気になっちゃって…。」
うずうずとロゼッタがハンマーを見つめていた、話が終わるのを待ってたみたいだ。
「あ、いいよ、結構重いから気を付けて?」
「ありがと、さっき振り回してるの見てて興味沸いちゃってさ!」
そう言いながらハンマーを受け取ると重さに少しよろめきながらも早速いろいろ鑑定を始めていた。
「ドワーフの血が騒ぐのかね?」
「鍛冶師の血じゃないですか?」
そう話しているとゼルがふふふっと笑い少しばかりの平穏な時間が訪れたのだった。
「とりあえずこんなもんかな…ありがとう!」
満足したらしく、しばらく鑑定していたロゼッタからハンマーを返してもらった。
「それの名前はドボルガッシュ、予想通りの魔具で打撃の瞬間に重力波を生み出して強力な一撃を繰り出す土系統のバトルハンマーだな。」
「せっかくだしこれも貰っていっちゃおうか、ジオプレートみたいに役に立つかもだし!」
そうしてまたブレスレットに新たな武器が収納されたのであった。
「ご主人、一応あの山から回収できたカードは10枚でございます。」
「結構多かったね…。」
ロゼッタがドボルガッシュの鑑定をしている間に俺達はこのあたりの遺体のギルドカードを回収していた。
「相当な数の人が犠牲になってたみたいだね…こっちも結構あったよ。」
食い散らかされていた遺体が多く、めちゃくちゃになっていたこともありこれでも回収しきれているか怪しいくらいだった。
「それじゃ、最下層行ってみようか…この感じだとここがネズミ共の巣だったんだろうしあまり居ないと思うけど確認だけはしておかなきゃね。」
「依頼は遺跡の調査でございますしね。」
そして俺達は先へ進み、最下層を目指して歩みだした。
しばらく歩いて行くと中層と下層の間にちょっとした空間が見えてきた。
「ちょっとここで休憩しよっか、安全そうだし。」
「そうでございますね、ぶっ続けで進行してましたし休憩していいと思います。」
俺は無理がある程度きくがゼル達は辛いものがあるだろうし、少し休んでおきたかった。
「わかった~…。」
「了解だ。」
松明で明かりをとりながら俺達は少しゆっくりすることにした。
「ご主人、チーズと保存用の固パン、干し肉あたりでいいでございますか?」
「まかせるよ。」
「了解でございます~。」
ふと見るとロゼッタが左腰に付けていた機械をいじっていた。
「ロゼッタ、それは?」
「ん?ああ、クリスタルの加工機だよ。これであたしの武器に使う弾丸を加工してるんだ、消耗量が多いのが欠点だがな。」
そう言いながらロゼッタは風のクリスタルを取り出し加工機上部のカバーを開きそこにはめ込み、下部に付いているレバーをガシャンと引いていた。
「こうやって弾丸サイズに加工するんだけど、1つのクリスタルから作れるのはだいたい3発分くらいだな。」
「そうなのね、あの最後の方に使ってた銃も同じ弾丸が使えるの?」
「銃?あぁ、あれはスペルシューターだよ、取り回しと威力重視でいろいろ欠陥持ちだけどな。」
そう言うと3番目のバレルが3本ついている銃を取り出して見せてくれた。
「これは銃身に直接専用に加工したクリスタルを1発ずつ装填して使う単発式で、それぞれ内核、外殻、推進を形成するんだ。」
「つまり装填するクリスタルによって撃てる仕様が変更できるってことね。」
「そうだ、ただしクリスタル1本から1発しか作れないのと撃つと銃身が発熱して連射できない欠陥持ちだがな。」
連射できるなら強力な武器になる分連射不能、弾丸コストとちょっともったいない武器のようだった。
「無理すれば連射できるが、刻まれてる術式が損傷して壊れちまうんだよ。」
ムゥからパンとチーズを受け取り頬張りながらロゼッタの話を聞いていた。
「でも、すごい威力だったし助かったよね…。」
パンを食べながらゼルも話を聞いていた。
「結局さっきの山にもおやじは居なかった…。まだ迷惑かけるがよろしく頼むな…。」
「ここまで一緒に来たんだし、最後まで付き合うよ。」
そうして俺達はひと時の休息と親睦を少しだけ深めることができたと思う。
「…。」
「ムゥ?さっきから黙ってるけど怪我でもしたのか?」
ムゥは急に話かけられビクッとしてこっちを向いた。
「急に話しかけないでくださいませ!ビックリするじゃないでございますか!」
「そんなに驚かなくてもいいだろ?」
「ちょっと考え事してただけでございます!大丈夫そうなら先に進むのでございます~。」
ちょっと違和感を感じたが、大丈夫そうだしそっとしておくことにしよう。
「じゃあ皆、準備ができたら先へ進もうか。最下層だし何が起こるかわからない、気を引き締めていこう。」
「うんっ!」
「おう!」
そうして俺達は下層へ向けて再び通路を歩みだしたのだった。
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