第28話 初依頼、鉱業都市ドルガード
「お~い!そろそドルガードが見えてきたぞ~。」
酷い揺れに意識を失っていると、ふとおじさんの声が聞こえてきた。
揺れるぞとは言われていたがデコボコの岩の上を駆け抜けるとは思ってなく、想像以上の揺れに酔って完全にダウンしていた。
「は…い…。」
丁度夜明けの日が差す頃、クラクラする頭を抱えながら前を見てみるとそこには大きな崖というより山をくりぬいたような大穴の中に街が広がっているのが見えた。
「ホントに一晩で着いちゃうんですね…。」
「これがバイタリスが人気の理由さ、長距離を平気で駆け抜けてくれる。」
そのまましばらく進んで行くと街を囲んでいる大きな石の壁が見えてきて、すぐそばに来たあたりで馬車をおじさんは止めてこっちを向いた。
「すまんが門を通る前に降りてもらってもいいかい?このまま行くと通行税を人数分払わにゃならんのだ。」
通行税がかかるらしい。
「わかりました、ここまでありがとうございます。ゼル、ムウ降りるよ動ける?」
俺は先に馬車を降り二人に呼びかける、するとちょっとつらそうなゼルが降りようとしてきたので手を貸して手伝った。
「ありがと…。」
ゼルもちょっと辛そうにしていると続いてムゥもよろよろと出てきた。
「おぇ~…。」
「吐くなよ?」
「あたくしの扱いが雑なのでございます…。」
流石に酔ったのかいつもの元気はなかった。
「じゃあ、達者でな~。」
そう言いながらおじさんは馬車を走らせドルガードの門へと向かって行った。
「俺らもいこっか。」
そう言いながらゆっくりと門を目指して歩き出した。
しばらく歩き、門の前までくるとそこには二人の人影が見えた。
「止まれ!」
片方の番兵だろうか話しかけてきた。
「要件は?」
「三人とも冒険者です。」
「となると旅の途中で立ち寄るのか?」
「はい、ギルドの方で依頼でもこなそうかと。」
話している番兵は2メートルはある巨体で筋肉質なガッチリとした体格で迫力がる、そして何より顔の中央にある大きな一つ目だ。お話によく出てくるサイクロプスだろうか?
「了解だ、通行税銀貨3枚になる一回出るとギルドの手形が無い限りもう一度入る時に払ってもらうことになるから気を付けろ。」
「ラドレス銀貨でも大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だぞ。」
俺達は通行税を支払い鉱業都市ドルガードへと入国したのだった。
天井があるせいか少し暗い感じがするが、街灯は明るく門を潜り真っすぐ歩いていくとずらりとお店が並んでいた。
「武器屋に防具屋、雑貨店いろんなお店がございますね。」
ムゥもいつもの調子が戻ってきたのか周りを見渡しながら歩いていく。
「でも、鉄とか金属製品が多いみたい、杖とか魔法具はあるかな…?」
ゼルも武器屋などを軽く除きながら自分に合いそうな物を探しているようだった。
しばらく進んで行くと料理店の並ぶエリアに来たらしく多いに賑わっているようだった。
先ほど門番をしていた者に負けないくらいガタイのいいサイクロプスや、その半分くらいの身長だがガッチリとした体格で立派な髭を蓄えたまさにゲームなどに出てくるドワーフといった感じの人々がウィンナーをパリッと音を立てて齧り、ビールなのかお酒をガブガブと飲んで笑い、話していた。
「すごいな、ラドレスとは全然雰囲気が違う。」
「朝っぱらから飲んでるなんてすごい国でございますね。」
「雰囲気的にオールナイトしたんじゃない?」
ムゥはうわぁ…という顔をしながら騒いでるドワーフとサイクロプスを眺めていた。
「とりあえず、ギルド行ってみよっか。」
そうして奥に見えるおそらく冒険者ギルドであろう大きな建物を目指して歩いて行った。
ギルドの中に入るとまだ朝早いせいか人は少なく受付嬢も一人しか座っていなかった。
「ドルガード支部へようこそ、御用がありましたら承りますよ。」
受付嬢は普通の女性と同じくらいの体格のサイクロプスであった。
「おはようございます、俺はタカユキと言います今さっき到着したばっかなんですがこの街はどういうとこなんでしょうか?」
とりあえず教えてくれそうな人に聞いてみた。
「はい、ここは鉱業都市ドルガード、金属を生業としているドワーフとサイクロプスの共同国家となっています。」
そう受付嬢はニコッと微笑みながら教えてくれた、勝手に決めつけていたがドワーフとサイクロプスで合ってたらしい。
「とりあえず俺ら三人ともアドベンチャラーなんだけど受けれる依頼ってありますか?」
「はい、掲示板に出ている物なら大丈夫です。もしよろしければ皆さんのランクに合わせて良さそうなものを選びましょうか?」
「ほんとですか?ぜひお願いします!」
これは助かった、自分たちに合ったものを選んでくれるなら好都合だ。
「では、ギルドカードの提示をお願いします。」
「はい、これです。」
俺は、この時何も知らなかった。ゴールドランクの貴重さそして何よりルビースターの示す意味を…。
「ゴ、ゴールドランク!?それにルビースターまでっ!?」
ギルドカードを見た瞬間、サイクロプスの受付嬢が急に慌て始めた。
「す、すみませんっ少々お待ちいただいてもよろしいでしょかっ!?」
「は、はい…?」
するとダッと受付嬢は奥の部屋に走っていった。
「ギルド長!!ギルド長!!!大変です~!!!」
すごい大声が聞こえた。そして、しばらくたったあと受付嬢が戻ってきた。
「大変お待たせいたしました、皆さん奥でギルドマスターがお待ちですのであちらの応接室に来てください…。」
なんか雰囲気が急に変わり何かしてしまったのかと不安になってきた。
「失礼します…。」
ムゥとゼルを呼び、奥の応接室に入るとそこには立派な茶色の髭を蓄えたドワーフのおじさんが奥のテーブル席に腰掛けていた。
「ようこそいらっしゃいました、ささ、座ってくだされ。」
ドワーフのおじさんに招かれ応接室のテーブルの席につかせてもらった。
「わしはここのギルドマスターをしているベダロット・カブスという。」
「俺はタカユキ・ヒグサと言いますこっちはゼルシア、こっちはムゥです。」
ベダロットはまじまじとこっちを見てくる。
「失礼ですがギルドカードを見せてもらっても?」
「は、はい、どうぞ。」
ベダロットは俺のギルドカードを受け取るとじーっと確認し始めた。
「たしかに、これは間違いなく本物のゴールドと赤星…まさかこんな時に会えるとは…。」
「どうかしました?」
なにか喜んでいるようなやっと見つけたというような雰囲気をかもしだしている。
「いや、失礼しました。お返しします。」
そう言うとギルドカードを返してきた。
「さて、早速で申し訳ないのですが、とある依頼を受けていただけませぬか?結果次第で無制限に報酬の上がる特殊任務なのですが?」
驚いた、試しにてきとうな任務を受ようと思っていのだがとんでもないものが舞い込んできた。
「なぜ、俺達に?アドベンチャラーよりワークスにそういう任務は割り振られると聞いていたのですが?」
ベダロットは神妙な顔になり、一気に暗い雰囲気になってしまった。
「無理だったのです、この任務を受けた者は二度と帰ってきませんでした。そしてもう時間がないかもしれないのです。」
「…以来の内容と状況を詳しく聞いても?」
ベダロットはゆっくりと頷き語り始めた。
「依頼は、旧ドワーフ王国遺跡総合調査、このギルドの奥にこの街のさらに奥に進む普段は立ち入り禁止の洞窟がありそこの奥には旧王国の遺跡が眠っております。」
「そこに入って何を調査すれば?」
「すべてです、最近そこに巣くっていたラットマンがドルガードに出てくるようになってしまったのです。恐らく奥で何かがあったのかと…。」
「ラットマンは人の膝上くらいまでの大きさしかないネズミが直立した知性の低い獣人種で略奪を生業している敵対種族でございますよ。」
ムゥにチラっと目配せすると小声で教えてくれた。
「立ち入り禁止と言っても冒険者には解放していまして、探索やラットマンの討伐など依頼を出していました。しかし、最近ラットマンの数が異常なほど目撃され奥の調査に行ったチームも行方不明となってしまったのです。」
「つまり討伐と探索をしてきてくれと?」
「できるのであれば最深部まで、何が起きているのか調べていただきたい。そして、最悪の場合、行方不明者のギルドカードの回収もお願いいたします…。」
ラットマン大量発生の調査と探索、そして可能なら安否確認ってことらしい。
「我がギルドで一番のゴールドランクチームも行方不明になってしまっております、もう赤星持ちの貴方がたにお願いするしかないのです…どうかっ!」
そう言うとベダロットは頭を下げてきた。
「報酬はあなた方が持ち帰る情報量に応じて報酬を追加させていただきます!」
さらに深く頭を下げてきた。
俺はムゥとゼルを見やると、ムゥは相変わらずめんどくさそうな嫌そうな顔をしているがゼルはちょっとほっとけなさそうな感じだった。
「タカユキ、やってみない?もちろん無理はしない程度で。ちょっと助けてあげよ?」
俺は頭を掻きながら考えたフリをするが、やる気になってるゼルを否定するわけにはいかなかった。
「ご主人チョロ過ぎなのでございます。」
ムウに心を読まれながらもベダロットさんに向かってこう答えた。
「わかりました、やってみましょう!」
ベダロットはこっちを向くと泣きそうな顔をしながら。
「ありがとう!!!ホントに、ありがとうぅ!!!!」
と感謝を続けていた。
「とりあえず、俺達は準備ができ次第調査を始めようと思います。」
「あぁ、よろしく頼む!!」
その時だった、バサッとムゥが急に立ち上がり応接室のドアをバンッと開けたのだ。
「どうかしたの?」
「いえ、誰かが盗み聞きしていたような気がしたんですが…気のせいでございますかね?」
なんか大変なことに巻き込まれた気がした…。
「では、俺達はこれで。」
「こんなことお願いして申し訳ないが、どうか無事帰ってきてくだされ。」
ベダロットは深々とお辞儀をして俺達を送り出していった。
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