第24話 再会


「皆のもの、我、サーリヤ・トラン・ラドレスはたった今、反逆の勇者ユージ・ヤマダを討ち取った!!この時を持って、ラドレス王国内乱の終結を宣言するっ!!!」


 何か道具を使っているのか城内にその声は響き渡ってきて、謁見の間で一休みしている俺達にもオーラシオンを高々と掲げて叫んでいるだろうお姫様の姿がはっきりと目に浮かんだ。


「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」


 それを聞いた人々の歓声も負けじと響き渡ってくる。


「ご主人、ほら、多分この奥の部屋が目的の場所でございますよ?」

 そんな中、はよいけとムゥに急かされながら俺はナタリアが出てきた扉へと向かう。


 扉の向こうにはナタリアが寝かされていたのであろう白い豪華なベッドが一つ置いてあり、その奥には部屋いっぱいに巨大な紫水大結晶が広がっていた。


 そして結晶の中に小さな人影が写る、ゼルアだ。彼女は白いマーメイドドレスを身に纏い眠るように水晶に包み込まれていた。


 ゼルアの前に黒い丸いものが一緒に結晶に入っている、それはユージが使ってい

た黒オーブと同じもので、おそらく二つは繋がっていたのだろう。


 俺は結晶の前に歩み寄り正面に立つ、そして思いっきり剣を振り上げ力いっぱい振り下ろした。


 ガシャーンという音を立てて黒オーブ諸共水晶は粉々に砕けて散らばり溶けて無くなっていく。


 ガランと剣を投げ捨て水晶が無くなり放り出されてくるゼルアの体をしっかりと抱きとめる。


「ゼルア…ゼルア…。」

 やさしくゆすりながら声を掛ける。ゼルアの瞼がぴくっと動く。


「んっ…。」

 そのままゆっくりと目を開けてくれる、ちょっと眠そうにも見えるその瞳は紫色に澄んでとても綺麗だった。


「タカユキ…?」

 ゼルアの声にギュッと抱きしめる腕が強くなってしまう。


「やっと会えたっ…ゼルア、助けに来たよっ!」


「タカユキ、ちょっとくるしいよ…待ってたよ。」

 ゼルアもそっと腕をまわし抱き返してくれた、ホントに嬉しい。


「約束したからっ…遅くなっちゃったけど、こうして抱きしめられるのが、ちゃんと触れるのがすごく嬉しいよ!!」

 ゼルアの熱が伝わってくる。


「絶対来てくれるって信じてたよ、ちゃんと私もあなたもここに居る…。」

 二人は抱きしめあいながら確かなお互いの存在を感じあった。


 しばらく二人だけの静かだが喜びに満ち溢れた時間が流れた。


「ぶ~ん、お邪魔虫でございます~。」


 わざと空気をぶち壊すようにムゥが部屋に入ってきやがった…。


「お前っ…。」

 ごっほんと咳払いをしながらムゥの後を追うようにゴルドが気まずそうに入ってきた。


「お取込み中悪いんだがぁ、ちょっといいか?ゼルア姫も一緒に。」

 俺とゼルアは顔を見合わせ少し照れながらゴルドの方に向き直った。


「ゼルア、歩ける?」


「うん、大丈夫…。」

 体力の戻っていないだろうゼルアに手を貸しながらゆっくりとベッドのとこまで歩き、そこに座らせてあげる。


「とりあえず、サーリヤ姫の宣言が今さっき終わってラドレス王国の内乱は終結した。ゼルア姫もいろいろあって疲れているだろうがお姉さんが話したいんだと。いいか?」

 サーリヤ姫がゼルアと会話をしたいとのことだった。


「大丈夫です。」

 ゼルアは微笑みながらそれを承諾すると、ちょっと待っててくれとゴルドは部屋を出ていった。


「このっKYドラゴンッ!!」

 俺はムゥのほっぺをギューっと抓りながら引っ張った。


「いひゃいふぇほはいふぁふ~~~!」

 バタバタする何言ってるかわからない空気読めないドラゴンに怒っているとゼルアがそれを見てふふふと笑っていた。


「失礼する。」

 そう言いながらサーリヤ姫が部屋に入ってきてゼルアの前まで歩み寄って来た。


「ゼルア、その…怪我はないか?」

 サーリヤ姫は何を言えばいいか迷っているような雰囲気だ。


「何というか…いろいろすまなかったな…。」


「なんとなく状況はわかっています、お姉さま。お疲れさまでした…。」

 久しぶりの姉妹の会話は少しぎこちない感じだった。


「これからちゃんと姉妹として、家族として向き合っていきたい。今までほったらかしにしていたダメな姉だが一緒に歩んでくれるか?」


「はい、お姉さまっ。」


 ちょっと照れくさそうに手を差し出すサーリヤ姫に笑顔でその手を握るゼルアの様子を見ていて心が少し暖かくなった。


 「タカユキ殿、国を救い妹を助けてくれて本当にありがとう。なんとお礼を言えばよいのか…。」

 サーリヤ姫はゼルアの隣にいる俺に向き直り改めてお礼を言ってくれた。


「いえ、俺はたいしたことしていませんよ。ただゼルアを助けたかっただけなんです。」

 結果的に勇者を打ち破り国を救ったが、それは純粋なゼルアを助け出したい俺の気持ちをやり遂げた結果だったのだから。


「これよりギルドにも協力を依頼し王城の修復作業を早速始める予定だ。タカユキ殿達も最初は慌ただしいだろうがこの城で落ち着くまで休んで行ってくれ。」


「一緒に居れるね。」

サーリヤ姫の提案に嬉しそうに笑っているゼルアを裏切れるはずもない。


「お言葉に甘えさせていただきます。」

俺とムゥはしばらく王城のお世話になることになった。

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