第17話 朝の異変
テントに光が差し込む、朝になったらしくすっかり明るくなっていた。
目を擦りながら起き上がると、目の前でムゥが黒い下着姿で背伸びをしていた。
「あ、ご主人おはようございます。よく眠れました?」
「お前は、なんでそんな恰好でいるんだよ…早く服を着てくれ…。」
大きくはないが綺麗な肌に細い手足、幼い雰囲気もあるが普通に美形で可愛らしいその姿は男子にとってはある意味目の毒だった。
「ご主人、何照れてるんですかぁ?もし望むなら襲ってくれてもいいんでございます
よ。」
ニヤニヤしながらムゥはポーズ決めて見せつけてくる。
「ふざけるなよ、ささっと服着てくれ!」
そう言いながら毛布をムゥ目掛けて投げつけた。
わぷっと毛布を頭から被らされたムゥがなにかごそごそしてるなぁと思っていたら毛布の中からいつもの服を着たムゥがひょこっと顔を出した。
「どうなってるんだよ。」
「企業秘密でございます!」
口に人差し指を添えて内緒!と楽しそうにムゥが答えてきた。
「準備して、ご飯でも食べに行くかな。」
ベッドから立ち上がり防具の置いてある机へと歩いていく。
「装備するのお手伝いしますね。」
毛布をベッドに戻したムゥがそう言いながら寄ってきて装備を整えていく。
「やっぱサイズが違うのでちょっとめんどくさいでございますね、落ち着いたら調整してもらいましょう。」
そう話しながら左腕のガントレットを装備させてもらった。
テントから出るとやはり夜中とは違い活気がある。冒険者や兵士、避難民の話声が聞こえてくる。
いくら争いの中でも朝くらいこんな光景があるのはいいことなのだろう。配給所にムゥと一緒に歩いていくとやはり朝は様々な人が食事にやって来ているようで人で溢れかえっている。
いつも通りムゥと一緒にシチューとパンを貰い席について早速食べようと思った時だった。何かわからない、でもいつもと違う、違和感を感じた。
普通に美味しそうなシチューとパンなのだが何かがダメだ、食べてはいけないと警笛を鳴らしているような感覚に襲われる、臭いだろうか?自分でもわからないでも感覚が危険を感じている。
「ご主人?」
「ムゥ、まだご飯食べるなよ…わかんないんだが何かがおかしい気がする…。」
食べようとしていたムゥも俺の異常に気が付き見つめてきている。
(毒消しなんだがこれには体内の毒を消す以外にな、食べれるかわからないキノコなどにかけて毒を確認するのに使えるんだ。)
コウダイから教えてもらったことを思い出し俺は腰のザツノウから毒消しを取り出しシチューにポタポタと垂らしてみる。
するとシチューからシュ~という音を立てて紫色に変色していった…毒だ!!
「全員食べるのをやめろ!!シチューに毒が入っているぞ!!」
俺は立ち上がり大声で叫んだ。周りの人たちが一斉にこっちを向きだすと同時にドサッと音を立てて地面に倒れる人が出始める…遅かった。
周りはあっという間に大騒ぎになった。配給の食事に毒が盛られたとなり犯人を捜そうとするもの、食べた物を吐き出そうとするもの、恐怖で叫ぶものなど大混乱だった。
「落ち着け!!皆冷静になるのだ!!」
大きな声が響き渡った。サーリヤ姫殿下が騒ぎを聞きやってきたのだ。
「まだ動けるものは、自力で医療所に食べてない物は倒れた者を運んでやってくれ。」
まさに鶴の一声という感じだ、周りの人たちは姫様の指示に従い行動を始める。
俺はそんな中周囲を見渡す。この大騒ぎの中状況を確認するために冒険者に成り済ましてる犯人がまだ居るかもしれないからだ。
「一応避難所の方の見回りを頼む、遅延性の毒ならテントで倒れてる人も居るかもしれない。」
お姫様は今も兵士に指示を出し状況の終息を急いでいるみたいだった。
シチュー鍋の近く、黒いローブ姿の冒険者立っているのが目に入る。なんとなくだったが注視して観察してみるとチラっと見えた肌が明らかに人のその色ではなかった。ダークエルフや別の種族の可能性ももちろんあったが、俺はその黒ローブに向かって駆け寄っていく。
それに気づいた黒ローブはスッと横にスライドするように逃げようとしている。
「お前か!?」
俺は黒ローブに向けてブレスレットから長剣を取り出して斬りつける。
黒ローブは滑るようにそれを避けて距離をとった、その時フードがバサッとめくれあがりその顔があらわになった。黒髪を後ろで編んだロングに青い肌、生気の全く感じない虚ろな瞳の少女だった。
「ラン?ランじゃないか…どうしてお前が!?」
それを見ていたお姫様が驚いたように叫んでいた。ランと呼ばれた少女はそのまま空中に飛びあがり逃走を図ろうとしている。
「彼女を逃がすな、あれは元勇者の仲間なんだ!!」
お姫様がそう叫ぶのを聞き俺は空中に浮かぶ少女に目掛けてグレイプニルを思いっきり伸ばす。グレイプニルはそのまま少女の右足に絡みついた!
「大人しくしてろ!!」
片手剣を地面に突き刺し両手でグレイプニルを握りそのまま思いっきり少女を地面に叩きつける。
少女はドンと音を立てながら地面に叩きつけられバウンドして倒れ込だ。
「リッチーにされているのかもしれない体になにか操る道具が付いてるはずだ。それを破壊してくれ!!」
その声を聞き片手剣を引き抜きランと呼ばれた少女の元に駆け寄った。その時だった、彼女はグレイプニルの魔法封じの効果を知っているのか右足を引き千切り両手を空中に広げた。
次の瞬間上空に巨大な魔法陣が生成され、ムゥが叫んだ。
「ご主人、あれは骨亀出された時と同じ召喚魔法です!早く止めてください!!」
「嘘でしょ!?」
俺は急いで彼女に駆け付けそのまま蹴り飛ばす、その時にチラっと見えた胸のあたりにある紫色の水晶目掛けて片手剣を思いっきり突き刺した。
するとランと呼ばれた少女は完全に動きを止めたが後方でドスンという巨大な何かが降ってくる、召喚阻止には間に合わなかったのだ。
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