第16話 休息
「クランさん!」
俺とムゥは砦へと到着し本部で書類整理をしていたクランを見つけ声を掛けた。
「タカユキさん!それにムゥさんも!!昨日の戦闘中行方不明とのことだったのですが無事だったのですね!」
クランは目が合うと嬉しそうにこっちに駆け寄ってきた。
「はい、地割れに落ちた時はダメかと思いましたがどうにかなりました。」
クランは俺達の姿を見て少し驚いた様子だった。
「なんだか装備が変わってますね、でも死傷者も結構出てしまっておりますしご無事でホントよかったです。」
笑顔で出迎えてくれるクランは少し悲しそうな雰囲気を隠そうとしているのだろう。
「あ、タカユキさんが生還したなら報告書書き直さなきゃですね。テントはそのままにしてありますので今はゆっくりお休みください!」
そう言うとまた書類の山へとクランは消えていった。
俺とムゥはそのまま配給所へ行き、作り置きされてるシチューとパンを食べて自分達用のテントに戻った。
「疲れた…」
装備を外しボフっと仮設のベッドに横になったとたんに一気に疲れが込み上げてきた。
急いでゼルアを助けに行きたい、けど今は少しだけ休ませて欲しい…そのまま目を閉じた。
「おやすみなさいませ、ご主人。」
ムゥのその言葉を最後に意識がなくなった。
どのくらい時間が経ったのだろうか、周りはすっかり暗くなっていた。
「一日中眠ってたのか…?」
起き上がろうとすると左腕に違和感を感じる…覗いてみるとムゥがしがみ付いてスヤスヤと寝息をたてていた。下着姿で…。
黒いレースのかわいらしい下着すがたで勝手に人のベッドに潜り込み少し押し付けられているのか柔らかい感触を左腕が感じていた。
ちょっと照れながらも起こさないようにゆっくり左腕を抜き取りベッドから起き上がった。寝ている間にムゥが治してくれたみたいで左腕と右肩の痛みはすっかりなくなっている。軽く動かしたりして確認してみるがもう全く問題ない状態だ。
そのまま眠っているムゥに毛布を掛けてあげたら俺はテントの外に出る、周りはすっかり暗く月明りと松明の光がゆらゆらとあたりを照らしている。少しあたりを歩き回ってみるが見張りの兵士が起きているくらいで他は眠っているのかとても静かだった。食事の配給所に立ち寄るとお茶お飲みながら休憩しているクランを見かけた。
「クランさん!」
声を掛けるとクランはこっちを向き微笑みかけてくる。
「タカユキさん、こんな時間にどうしたんですか?」
「ちょっと、眠り過ぎたみたいで目が覚めちゃいました…。」
頭を掻きながらクランのほうへ歩み寄ると、彼女は自分の正面にどうぞと手を差し出してくれた。
「タカユキさんも災難でしたね、骨の怪物を結構倒したり活躍していたと聞きましたが途中から姿が見えなくなったと聞いておりましたので。」
「俺も地面が崩れて落ちるなんて思ってませんでしたからね。」
ハハハと笑いながらちょっとした会話を楽しむ。
「そういえば、クランさんもこんな時間に…ちゃんと寝てるんですか?」
「私は戦うことはできませんので、せめてこのくらいは…。」
お茶を飲みながらちょっと疲れたような顔を隠すように微笑んでくれる。
「そうだクランさん、一つ聞きたいことがあるのですがいいですか?」
俺にはどうしても確認しておきたいことがあったのだ、それを確認するのにいい機会だろう。
「はい、私に答えられることであれば?」
「ラドレス王国第二王女のことです。」
それを聞いた途端クランは下を向きちょっと言いにくそうにしていた。
「死霊の姫君、ですね…彼女はもう死んでいるとかお城の地下深くに監禁されているなど実際に居るのか定かではないって言われておりますね…。」
やはり、城に閉じ込められていたのは確か見たいだ。
クランはそのまま俺に手招きをして顔を近づけてきた。
「今回の騒動も虐げられた第二王女の呪いを勇者が利用し結託して王国を崩壊させようと、自分たちの怒りの道連れにしようとしてると噂されています。」
ヒソヒソ声で今この抵抗拠点で話されてる噂を教えてくれた。
「そうなんですね、第二王女の事を聞いたんで本当なのか気になってたので…」
やはりゼルアも共犯ということになっているみたいだ…最悪の場合ここに居る人たちと敵対してでも連れ出さなきゃいけない状況になるかもしれないことを覚悟した。
「ありがとうございます、俺ももうちょっと眠って起きますね。クランさんも無理しないでくださいね。」
「はい、そちらもあまり無茶はしないでくださいね。知り合いが減るのは悲しいです
し…。」
ちょっと悲しそうなクランに大丈夫ですと微笑みかけて俺は席を立ち自分のテントに帰っていった。テントに戻ると毛布に包まって熟睡してるムゥの横に座り様子を眺める。
黙って寝ていると普通にかわいいのになと思えた。そのまま隣に横になりもう少し眠ることにした。
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