第12話 初陣
「クランさんどうかしたのですか?」
武器を選んでる俺達を見てクランは簡単に説明してくれた。
「王城方面のアンデッド殲滅をしていたところ大型アンデッドなどが多数出現したらしく緊急の援軍要請がきたのです、行けそうならタカユキさん達も参戦の方よろしくお願いします!!」
そう言うとクランは別の場所へとまた駆けていった。
「ほらご主人、めんどくさいことがさっそく起きましたよ。」
ジトーっとした目でこっちを見てきた。
「しょうがないだろ、ムゥ行くぞ!!」
俺は追加でバスターソードをもう一本握りしめそのまま戦場へと駆けだした。
戦場は激しい攻防が繰り広げられている。冒険者や兵士が多くのゾンビやスケルトンを相手に善戦しているように見える。
「なんかデカいのもいるな、ムゥあれはわかる?」
戦場には骨ではあるのだが大型のドラゴンや獣らしきものが暴れておりその周辺は苦戦を強いられているようだった。
「あれは多分、スカルドールだと思いますよ、召喚者の記憶を媒介に召喚されるアンデッドで生前の特別な力はないですが純粋なパワーはそのままなので強敵でございますよ。どっかに水晶かなんかがあるのでそれを砕けば砂に戻るはずでございます。」
遠目から戦況を確認していると、援護要請を受けた砦にいた冒険者や兵士が次々と駆け込んでいく。
その援軍に付いて行くかたちで俺達も参戦した。やはりゾンビやスケルトンはそこまで強くは無いようで一振りで薙ぎ払える、数は多いが無双系のゲームをしているような気分でバッサバッサ突き進めた。
「そういえば、ゾンビって血が出たりしないんだな。」
近くにいるゾンビやスケルトンをバスターソードで薙ぎ払いながらふと思った疑問だった。
「流れる血は魔力、エーテルの象徴ですからマイナーエーテルの入れ物になってるゾンビは血が固形化して停滞してるのでございますよ。」
ムゥが火炎弾を両手でばらまきながら教えてくれる、つまり血が固まり吹き出たりはしないということらしい。
そのまま雑魚を薙ぎ払って戦場の中心へと駆け抜けていくと流石に敵の密度が濃くなってくる。次の瞬間なにかがこちらに向かい飛び掛かってきた。
「うぉ!?」
ギリギリで大剣で受け流し体制を立て直す、そこには大きなサーベルタイガーだろう骨格をしたスカルドールと呼ばれた怪物がこちらに狙いを定めていた。
観察する暇もなく爪と牙をむき出しに再び飛び掛かってくるそれを大剣で受け止め両足に力を込めた。
「骨の癖に結構早いし重いな…。」
そのままにらみ合いを続けていると額のあたりに紫色の水晶があるのが見えた。俺は大剣に力を込めて骨虎を横に押し飛ばしそのまま大剣で頭を水晶ごと打ち砕いた。
骨虎はそのまま砂となりサラサラと崩れていく。周りを見るとやはりスカルドールを相手にしている場所が負傷者も多く、苦戦しているようだ。
「勇者が戦ってきた敵は骨でもやっぱ強いのね…。」
俺は大剣をその場に突き立てブレスレットからガダラスを呼び出しそれにグレイプニルを繋げ、魔力を通し思いっきり振り回し始める。ブンブンと風を切りながら高速で回転をし始めた。
「ぶっ飛べっ!!」
ガダラスは遠心力をそのままにゾンビやスケルトンをべちゃべちゃと吹き飛ばしながら奥に居たマンモスのようなスカルドールの頭蓋骨にメキメキと音を立ててめり込んでいった。
マンモスと戦っていた兵士は何が起きたのかわからず驚いていたが、はっと気づいたようにすぐさま周りの掃討を開始しする。
再びガダラスを引き戻しブンブンと振り回しながら次の獲物を探していると視界に赤い鎧が目に入った。サーリヤ姫殿下だ、姫様は頭上から飛来する巨大な怪鳥のスカルドールに火の弾丸を連射しながら周りの兵士に指示を飛ばしているようだった。それを見て、怪鳥目掛けてガダラスを思いっきり投げつける。結構な距離があるがグレイプニルは魔力を食って無限に伸びるため問題はない。そのまま怪鳥の頭をぶち抜いた、ガダラスを勢いそのままに下の方で兵士が対応していた蛇のようなスカルドールにむけて思いっきり叩き落とした。
姫様は最初びっくりしたようだったがこっちを見て少しニコっと微笑んで見せたと思ったらすぐに前を向き兵士達に指示を再び飛ばすのであった。
「勇ましいなぁここのお姫様は、紅のジャンヌダルクって感じ?」
まさに勝利の女神というイメージがピッタリだと思った。
「ご主人、お姫様が美人だからって見惚れてるとやられちゃいますよ。」
近づいていたゾンビを火炎弾で燃やしながら隣にすっとムゥが降りてきた。
「お前、全然竜の姿にならないよな。」
そう言いながらまたブンブンとガダラスを振り回して周りの雑魚を薙ぎ倒していく。
「不便はないですし、可愛い女の子が隣にいる方がご主人も嬉しいでしょ?」
まだまだ話くらい余裕がある、この調子なら戦闘もすぐに落ち着くだろうと思ったその時だった。兵士や冒険者の悲鳴が聞こえた。
「ご主人、まためんどくさいのが出てきてますよ~。」
ムゥが遠くの方を見ながらめんどくさそうに眼を細めていた。同じ方向を見るとそこには黒いローブ姿のようなものが佇んでいる。
「あれは?」
「たぶんアンデッドの上位種でキャスター系のリッチーですね、魔法攻撃と骨怪物の連携で前線が崩れかけてます。」
亀のようなスカルドールなどが兵士や冒険者を蹴散らし、リッチーが魔法で追撃していく、無駄に連携して襲ってくるめんどくさい敵なのは確かだろう。姫様達も最前線に向かいリッチーや怪物の対応を始めたらしく魔法が飛び交う激しい戦闘となっていった。
「俺らも行ったほうがいいかな?、ちょっとは役に立つでしょ…。」
「そうですね、鉄球ブンブンで目立ってなければこのまま雑魚と遊んでてもよかったでしょうけど!」
ちょっと楽しくなっていたのは自覚しているがやはり目立っていたらしい。
「よし、ムゥ行くぞ!!」
嫌そうなムゥに声を掛けながらガダラスをブレスレットにしまい、突き立てていたバスターソードを抜き放ち最前線へと駆けていく。
ムゥが雑魚を魔法で倒し露払いをしてくれているので不意打ちを気にせず進んで行けた。
正面の雑魚を薙ぎ払いながら目に入っていたリッチーに向かい真っすぐに駆け抜けていく。リッチーの方もこっちを捕捉したらしく攻撃態勢に入っていた。
こっちも身構えるといくつもの炎の玉が飛んでくる。ズザザッと地面を滑りつつ足を止めて火の玉を切り払い横にステップを踏みながらまた前進する。大剣を盾にしながら進んで行き射程が変わるとリッチーは両手を正面にあげ炎の渦を火炎放射のように放ってくる。
当たる直前、咄嗟にマントで体を覆い左に思いっきり飛んだ。接触したマントの部分がパリパリと何かが攻撃を防ぎ崩れていく感触が伝わってプロテクションマントが機能してくれているのが感じられた。
俺は体制を立て直しリッチーに向けて思いっきりバスターソードを投げつける。剣を投げるという攻撃を認識していなかったのか火炎放射を放つリッチーの頭部から胸のあたりに直撃し、ドサっと音を立てて崩れていった。リッチーが崩れ地面に突き刺さっていた大剣を拾いなおし次のリッチーを倒しに行こうとしたその時だった。
「ご主人、上です!!」
ムゥが慌てた様子で叫んでいるのが聞こえふと上を見ると、巨大な亀のようなスカルドールが降ってきたのだ。
「なっ!?」
どうやって飛んで来たのかわけもわからず、とにかく潰されないようギリギリでボディプレスの回避に成功するが正面に出てしまい亀はそのまま噛みつこうとしてくる。
俺はそのまま大剣を咄嗟に横に構え噛みつきを受け止めた。さっきの虎よりも遥かに重いく体制もよくない、大剣もしっかり噛まれていて弾くことすらできず少しずつ体重を掛けられていく。
「くっそ!」
ギチギチと音を立てながら少しずつ地面に押し込まれていくような感じがし、何よりピキピキッと大剣にヒビが入り始めあまり長く持ちそうになかった。
「この野郎!!」
もうヤケクソな感覚で亀の下顎をガンっと蹴った。その時、急に地面が轟音と共に崩れたのだ。
亀の落下と重量に耐えられなかったらしく俺達は崩れた地面に吸い込まれていった。
「ご主人!?」
ムゥの叫ぶ声が聞こえたがもう逃げることもできず亀と一緒に地の底に落下し始めていた。
落下の途中、バキンと音を立てて大剣が砕けてしまった。自由になった亀は落下してるのもお構いなしにそのまま俺を嚙みつぶそうとしてくる。どうにか体をひねり亀の頭の上に位置取りブレスレットからバトルメイスを呼び出して思いっきり額の水晶目掛けて叩きつける。
水晶が砕け亀が砂になり崩れだしたのを確認したらそのまま上を向きグレイプニル
を伸ばそうと手を伸ばす。
その時、崩れかけていた亀の爪が左腕を引っ掛け完全にバランスを崩してしまった。俺はそのままなすすべ無く落下してしまった。
「うああああぁぁぁぁ!?」
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