五百二十五話 終わりまでのプロット
さて、終わらせるとは言ったけれども。
具体的には何が達成されれば、シホとコウタロウのラブコメは『終わり』になるかな?
……まぁ、この質問は簡単か。
現状、二人は恋人以上に仲が良いくせに、恋人になれていない。
まるで引き延ばされているかのように、その一歩だけは踏み込めない。
それを見てみると、このラブコメにおいて……物語のゴールが『付き合うこと』であることは明確だね。付き合ってしまったら物語が終わるから、二人はなんだかんだ理由をつけて恋人にはなれないわけだ。
そういう、作り手側の意図が透けて見えている。
結局のところ、この作品はメタ的な視点が売りなだけであって、たいていのラブコメとやっていることは変わりない。主人公とヒロインが恋人になるまでの過程を楽しむだけの作品なのだろう。
付き合ってしまったら、二人の純粋なラブコメに亀裂が入ってしまうからね。それは仕方ない。
だって、仮に物語の途中で恋人になったとしたら、ラブコメに純粋さが失われる。
たとえば、シホとコウタロウが現段階で付き合っていたとしよう。
それでも『物語』を書くのであれば……二人の関係を悪化させて、再構築して、また仲良くなる――という『大人の恋愛』めいたものを書かなければならない。
その過程で、別のヒロインと良い感じになることだってあるだろう。
学生らしい恋愛では収まらない。コウタロウを好きになるヒロインが増えて、それがシホのライバルとなり、泥沼の三角関係へと発展していく。
二人が大学生であれば、そういう流れもありだったかもしれない。
でも、いまだ高校生という年齢であり、子供という範囲内に設定されている以上……そういう流れは似合わないし、読者に決して求められていない。
だから、物語を続けるのであれば……多少強引な手段を使ってでも、二人を『恋人にさせてはいけない』のだ。
あるいは、物語を放棄して『二人の後日談』にしてしまえば、付き合っても良かった。
何も物語のない、ただただ主人公とヒロインがイチャイチャするだけのお話であれば、付き合っていても不具合はなかっただろう。
しかし、この作品で二人が付き合うことはなかった。
おそらくは『余白』を残していたのだろうね。
ちゃんと、シホとコウタロウの物語が終わるように、決してゴールテープだけは切らせなかった。
とはいえ、引き伸ばされてしまったがために、ゴールテープの準備がまだできていない。
長く続きすぎてしまって、先の道が舗装できていない。
だからこその『ワタシ』だ。
この、便利で万能で全能なチートキャラがいれば、道はいくらでも繋げられる。
物語の外と内、両方に存在することができるワタシだからこそ、このぐちゃぐちゃの状況を整理できる。
――考えろ。
これがワタシにとって、最後の見せ場だ。
このイベントが終わったら、ワタシは権能を失う。
それ以降はきっと、全能の神ではなく、普通の女の子になってしまう。
今みたいに、自分を不憫に思うことだってなくなる。
メタ的な思考さえも失い、胸が大きいだけの明るいギャグキャラとなって、優しい人生を送るだろう。
きっと、そっちのほうが幸せにはなれるだろうけど。
絶対に、そっちのほうが楽しいだろうけど。
でも、ワタシらしくいられるのは、これが最後だ。
それなら後悔のないように。
最高の作品に、区切りをつけるために。
がんばるよ。心から。
それが『作者(ワタシ)』の願いだから――
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