四百九十八話 ようやくの水着回! その28
本日、梓としほの第二戦は『どちらが中山幸太郎をドキドキさせられるか勝負』に決定した。
さっきは水泳対決でしほに軍配が上がったけれど、次はどうなるか分からない――と、言いたいところだけど、勝敗は既に決していると言っても過言ではない。
だって、梓は身内である。
彼女にドキドキすることは、正直なところ滅多にない。
なので、まず間違いなくしほが勝つと断言できるけれど……梓がやけに自信満々なのが不思議で仕方なかった。
「むふふっ。霜月さ……こほんっ。おねーちゃん、知らないの? おにーちゃんはね、呆れちゃうくらいのシスコンだよ?」
えっへん!
そう言って梓は胸を張っている。
一方、しほは不安そうにしながらも、対抗するように胸を張っていた。
「こ、幸太郎くんは『しほコン』だから、今度も私が勝つわ!」
しほコンとは、しほコンプレックスの略称らしい。
二人の認識では、中山幸太郎はシスコンでしほコンなのか……まぁ、完全に否定はしないけれど、だからといってそんなに過剰な愛は注いでいないと思うけどなぁ。
あと、別に優劣をつけたことだってないし、できれば勝負なんてしてほしくない。
しほも梓も大好きという意味では一緒だけど……うーん、どうやったら勝負を止められるかな?
と、思っているうちに砂浜に到着。
俺を浮き輪代わりにしていた二人がやっと離れてくれて、安堵したのもつかの間。
「何やら面白いことをやってそうだね!」
事態をややこしくすることに定評のあるメアリーさんが、意気揚々と首を突っ込んできた。
これはまずいぞ……!
「おやおや? アズサもシホも鼻息を荒くしているようだけど、何をやるんだい? ワタシも一緒にやっていい?」
「え? メアリーちゃんも『おにーちゃんをドキドキさせるか勝負』やるの? 別にいいけど……メアリーちゃん、たぶん負けるよ?」
「おいおい、アズサ……冗談は胸を大きくしてから言ってくれないかな? 確かにコウタロウは小さい方が好きみたいだけどね、それは『心』の部分であって、『体』はきっとこの大きな胸に抗えないんだ。男性とは、そういう生き物だからね」
「なるほど、分かんない!」
「ちょっとは会話の内容を理解する努力をしてくれよっ」
メアリーさんと梓って、絶妙にかみ合ってない。
理屈っぽい皮肉屋なメアリーさんと、直情的で素直な梓は水と油である。決して混じり合うことはないのに、共存はしているから傍から見ているとなんだか面白かった。
「め、メアリーさんまで……!」
一方、しほはメアリーさんの参戦にとても動揺していた。
「あんなにおっきーのに、勝てるわけない……」
彼女はメアリーさんの胸を凝視している。
いや、でも……えっと、あれだよ。
俺、しぃちゃんの影響で大きな胸に興味がないから。
たぶん、君の圧勝だと思うけどなぁ……どうして一番有利な女の子が一番不安になっているのか。
「HAHAHA! ひんにゅーどもめ、このメアリーさんが『分からせて』あげよう!」
「んー? ……あ、分かった! それ、アメリカンジョークってやつでしょ? おもしろいねっ」
「どうしてワタシの発言がジョークになるのかな!? アズサ、さすがにワタシを舐めすぎてだよ!」
「だって、メアリーちゃんってザコっぽいよ?」
「このメスガキめっ」
「うわぁ、言葉遣いが悪いなぁ~。メアリーちゃん、ダメだよ。めっ」
「どうして一番子供っぽいキミがこのナイスバディ―なワタシを子供扱いしているのか分からないね」
「そんなに言うなら、とりあえずメアリーちゃんからおにーちゃんをドキドキさせてみたら? どうせできないと思うけど!」
「ああ、いいだろう! 初戦で全てを終わらせてやるっ」
……そして、勝ち目の薄い二人の方が、しほよりも自信満々で不思議だった――
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