四百七十八話 ようやくの水着回! その8

 いったい、しほは胡桃沢さんとどういう水着を選んだのだろう?

 俺と選んだ時は、セパレートタイプとはいえ、パレオがついていて腰から下は露出の低いものだった。上も、胸元を全て覆っていて、谷間もそこまで見えない形状だったと記憶している。


 俺としては、あれでも最高に可愛いと思っていたけれど。

 それを上回る水着を着ているだろうか……考えるだけでドキドキするし、なんだか落ち着かない。


 そういえば、しほは最初……ものすごく露出の多いセクシーなビキニを選んでいた。

 ああいう形状だと、今日一日しほがまともに見られなくなる……恥ずかしくて直視できない。


 メアリーさんは、俺のことを男性的じゃないと言うけれど。

 そんなことは決してないと思う。少なからず、やっぱり女性の体を意識しないわけじゃない。


 ただ、その相手が限定されているだけ。

 だから、どうかしほには手加減してもらえることを祈っていた。


 まぁ、そうは言うものの、見たくないわけではもちろんなくて……気持ちとしては複雑である。そのせいでそわそわしてしまうのだろう。


「じゃ、じゃあ、見せるね? 幸太郎くん、あの……見せるけど、あんまり見たらダメだからねっ」


 俺の目を隠しているしほが、耳元でそう囁く。

 そんなこと言われたら余計に落ち着かなかった。


 お、落ち着け……気持ちの整理を――!


「『せーの』で離すからね? いくわ……せーのっ」


 心の準備を彼女は待ってくれない。

 いきなり、手が離されて視界が開ける。


 しほは背後にいる。

 見たいような、見たくないような……でも体は無意識に見たがっていて、ゆっくりと背後を振り返っていた。


 そして、見えたのは――ぶかぶかの洋服を着ているしほ。

 って、さっき俺が脱いだ洋服を、彼女は勝手に着用していた。


 水着は、もちろん見えない。

 予想の斜め上だった。肌色を覚悟していたので、肩透かしというか、拍子抜けというか……とにかく、緊張が一気に緩和したので、なんだか笑ってしまった。


「なんで俺のシャツ?」


「ちょ、ちょっとだけ、借りてるわ。あの、うん……どう?」


「いや、どうって言われても……」


 俺は少し、ゆったりとしたサイズ感が好きなので、シャツはLサイズを着用している。

 だからなのか、女子高校生の平均身長よりも小さいしほにとって、そのシャツはブカブカだ。太ももまできちんと覆い隠している……って、ふともも?


 まるで、ワンピースのように。

 シャツのすそが、ひらひらと揺れていて……その下には、真っ白なふとももが露わになっていて。


「こら、へたれないで。ちゃんと中山にも見せなさい」


「あ、ちょっ、ダメ……!」


 いつの間にか、しほの背後にいた胡桃沢さんが……ブカブカの洋服を、はぎとるように脱がせていた。


 シャツの下。

 そこに見えたのは――真っ白なビキニ。


 もちろん、俺たちが選んだパレオタイプのビキニよりも、露出の多い……というか、普通の水着にしても、布がやや小さいような形状をしていた。


 胸元は、眼帯?のような形状をしていて真四角の形をしている。

 しほが最初に選んだ水着よりは、セクシーというわけじゃない。


 でも、彼女の細くてしなやかな体にフィットするビキニのおかげが、魅力は何倍も増しているように見えた。


 純白という色も、しほの色素が薄い髪色と合っていて、とても映えている。


 はたしてこれを『綺麗』と表現すればいいのか。

 あるいは『可愛い』と言えばいいのか。


「……っ!」


 それが分からなくなるくらい、綺麗で可愛いしほの水着姿に、俺は言葉を失ってしばらく見惚れてしまうのだった――

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