四百六十一話 ロリコンじゃなくて小さいのが好きなだけ
子供用水着はお気に召せなかったらしい。
「もっとおとなっぽいやつがいい!」
と、子供っぽいことを言って次はセパレートタイプのビキニを試着室に持って入った。
「似合ってたのに……」
そのことを残念に思いながら、待つことしばらく。
しかし、五分ほど待ってもしほは出てこない。
どうしたんだろう?
「しぃちゃん、何かあったの?」
カーテン越しに声をかける。
すると……スッとカーテンが少しだけ開いて、しほが顔だけを覗かせてきた。
「幸太郎くん? も、もうちょっと小さいサイズ、ないかしら……」
「いやいや。女性用のサイズは分かんないよ?」
「そうよね……うぅ、一番小さいのを選んだのに、ちょっとゆるいの……このままだと幸太郎くんにとって刺激が強い映像をお送りすることになるわ」
「しぃちゃんって、俺のこともちょっと子ども扱いしてるよね」
お互いに、お互いのことを少し子供っぽいと思っているのかもしれない。
二人ともそこまで幼いといえる年齢ではないのになぁ。
「しぃちゃん、やせ過ぎなんじゃない? あんなにお菓子を食べるのに、なんで太らないんだろう?」
「い、家では食べないもんっ。ママが栄養管理にはすごくうるわいわ……」
栄養管理師にして、調理師でもある霜月さつきさん(母)はすごい人である。
自堕落なしほの体重さえも制御する剛腕の持ち主だった。
「とりあえず出てきたら? いくら鏡とにらめっこしても、水着は小さくならないと思う」
「……ち、小さいわけじゃないのよ? いえ、まぁ小さいは小さいのだけれど……水着は、小さくないの」
「え? どういうこと?」
体が細いから、水着が大きいということじゃないのだろうか。
水着は小さくないけど、小さいって……つまり何が小さいんだ?
「――胸が、ちっさいのよ」
……そっちか。
なるほど、そっちのサイズが合わないらしい。
「幸太郎くんに見せるには、ちょっと恥ずかしいわ」
「大きさなんて関係ないよ。別に、胸のサイズでしぃちゃんを好きになったわけじゃないんだから……恥ずかしがる必要なんてないと思う。あと、俺は小さい方が好きかもしれないし」
「あ、そうね。幸太郎くん、私のせいでちょっと好みが変態さんになってるんだった……じゃあ、まぁいいかしら」
「変態ではないけどね?」
とはいえ、しほのせいで胸は大きめより小さめが好きになったのは確かである。
俺としては、露出なんてしなくてもしほは十分魅力的だと思っている。
なので、やっぱりこう思うのだ。
「さっきの水着でいいんじゃない?」
「……ねぇ、さっきからやけに子供用水着を推すけれど、もしかして幸太郎くんって『ロリコンさん』になっちゃっているの? 小学生は最高だぜ?って歌うの?」
「そんなわけないから!」
さすがにそこまで才能開花はしてないよ。
しぃちゃんのせいで、スレンダーなスタイルがタイプになっただけである。
だから、胸のサイズは気にせず、かわいいに特化した子供用デザインを魅力的に思っているだけ……と思った。
「まぁ、別に私はいいわよ? 偏見はないもの。今度、ランドセルを背負ってあげましょうか? 小学生の頃に使っていた体操着もまだ残ってるけど、見たい?」
「やめて。ちょっと理解のある雰囲気を出さないでっ……俺が本当にそうなってるみたいだからっ」
普段は心が狭いくせに
こういうところだけ寛容にならないでほしかった。
まったく……俺はロリコンじゃないのに――。
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