2巻発売記念 とあるテコ入れヒロインのプロローグ
いつもお読みくださりありがとうございます!
本日、いよいよ2巻の発売となります。
せっかくなので、記念に特別SSを書かせていただきます。
語り手はもちろん、2巻で初登場となるメアリーです。
web版の第二章、文化祭編を8割ほど大幅に改稿しました。
web既読の方にも楽しんでいただけると思います。
1巻でも9割ほど書き下ろしているので、この機会にぜひ手に取ってくださると嬉しいです。
それでは、どうぞよろしくお願い致しますm(__)m
――たとえば、ワタシの物語を読んでくれている読者がいるとするならば。
キミたちには心からの謝罪を送ろう。
本当に、こんな駄作に付き合わせてしまって申し訳ない。
退屈だっただろう?
ワタシが今まで作り上げてきた物語は、期待外れだっただろう?
分かるよ、その気持ち。ワタシもキミたちと同じ感想を抱いているからね。
つまらない。
ワタシの手によって構築されたストーリーは、ことごとく面白みのない結末を迎えて幕を閉じる。
たとえば、妻の浮気を暴いた夫の復讐劇を作っても。
妻の女は離婚しただけで、それ以上の痛みを受けることなく今は平凡な人生を送っている。
もっと不幸にできたのに。
自分が見下していたような最下層の人間たち以下の生活になるくらい、落ちぶれていくよう……ワタシががお膳立てしてやっていたというのに。
『かつて愛した妻がこれ以上不幸になる姿を見たくない』
そんなくだらない感情論で、ワタシの物語を穢すなよ。
せっかく、主人公にしてやったというのに。ただ生まれた家が金持ちだった、運がいいだけの平凡な人間の分際で、ワタシの指示通りのこともできないなんて……ありえない。
彼はワタシの父親だとは思いたくないほどに情けないキャラクターだった。
大抵の物語は、こんな感じでワタシの望まない退屈な結末を迎える。
いじめを受けていた少年に手を貸して、いじめっ子に仕返しを促そうとも。
いじめられっ子がちょっとやり返しただけで、いじめっ子は怯んで何もしなくなった。そしていじめられっ子はそれで満足した。
その程度で本当に良かったのかな?
もっと苦しめてもいいのに。
ワタシが差し出した手を掴めば、いじめっ子の両親を失職させて彼を不幸にすることだってできるんだよ?
なんでみんな、中途半端なことしかできないのだろう?
本当に、つまらない。
こんなくだらない結末だと、こう言うことができないじゃないか。
ざまぁみろ――って、ね?
見たいじゃないか。思い上がっていた人間が、無様に落ちぶれていく様を。
嗤って、嘲笑って、胸の奥からカタルシスが沸きあがって……それから、脳みそが溶けてなくなるような快楽が全身に広がる。
あの感覚を知ってしまったら、もう戻れない。
ワタシも、それからワタシの物語を読んでいるキミだって、きっと『ざまぁ』の味を知っているはずだ。
他人の不幸は蜜の味と、日本のことわざでもあるだろう?
いわゆるメシウマってやつかな?
だからワタシは『ざまぁ』を求めている。
創作では物足りなくなって、現実の世界からざまぁ系物語を作ろうとしているくらいには、あの快楽を欲している。
それなのに、ワタシはまだ理想の『ざまぁみろ』を作れていない。
なぜ? ワタシが悪い?
いいや、違う。ワタシは正しい。
だって、メアリーというキャラクターはなんでもできるように設定されている。
生まれながらに天才だった。運動も勉強もできないことなど何もない。
パーフェクト――というより、これはもうチートだ。全能だ。
つまり、ワタシはキャラクターという枠に収まっていない。
メアリーは『クリエイター』なのだ。
だから、悪いのはこの『現実』だ。
起承転結が弱いくせに、発生するイベントが少ないし、盛り上がりにも欠ける。キャラクターはほとんどがモブキャラで……面白い要素がとにかく薄い。
このワタシですら諦めかけるほどに、現実世界は駄作だった。
でも、安心してくれ。ワタシはようやく見つけたんだよ。
――リュウザキリョウマ。
彼は『本物』だ。
モブキャラ共とは違う、生粋の『主人公』だ。
何も特徴がないくせに女の子に好かれる。
大して魅力がないくせに、とにかくモテる。
そして、自分のことを客観視できずに、一人称の視点でしか物事を見ることができない。
だから能力もないくせに自信だけに溢れていて。
ハーレム要員たちにちやほやされて、満更でもない顔をしている。
……残念ながら、ナカヤマコウタロウという存在がリョウマの物語を一度壊したようだけれどね?
まぁ、それくらいなら許容範囲だ。ワタシという一流のクリエイターの手にかかれば、修復は可能。
再び、リョウマのハーレムラブコメを構築できる。
そして、コウタロウの時のような中途半端な結末ではなく、今度こそリョウマを完全に終わらせる。
不幸にして、苦しめて、そんな彼を嘲笑う。
これは、駄作だった一巻の続きを書くようなイメージだ。
二巻ではちゃんと、リョウマを不幸にする。
そうすることで、みんなきっとこう思ってくれるはずだ。
『ざまぁみろ』
――って、ね?
さぁ、始めようか。
最高の作品を作るために。
キミたちも、ついてきてくれよ。
思い上がったキャラクターが、無様に落ちぶれていく様を。
どうか、見てくれると嬉しいよ。
今度こそ失望させない。
ワタシが……このメアリーが、最高の『ざまぁ』を提供することを、ここに約束しようか――。
【2巻発売特別記念 終わり】
お読みくださりありがとうございます!
いよいよメアリーの登場です……僕が一番大好きなキャラクターなので、書いてて本当に楽しかったです。
たぶん、僕はこれからの人生において、『霜月さんはモブが好き2』以上の作品を書くことはできないでしょう。作者なのに、読み返しているとまるで違う人間が書いたような感じになります。
それくらい、僕にとって2巻は最高の傑作になりました。
どうか、見てやってくれると嬉しいです。
『霜月さんはモブが好き』を、どうぞよろしくお願い致しますm(__)m
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