三百七十六話 幸太郎にとっての『霜月しほ』(※しほキャラデザ有)
霜月しほ。
身長155センチ(※本当は152センチ)。
体重は秘密。
趣味はゲーム、アニメ、バラエティ番組、幼児番組を見ること。
文字を読むのは嫌いなのでマンガやラノベなどは読まない。
運動は見るのもやるのも好き。(※ただし上手ではない)。
性格は人見知りだけど、慣れた人に対してはすごく心を許すタイプ。内弁慶。
勉強は嫌い。しかし、成績は最近少しずつ向上している。
先天的に聴覚が良い。そのせいで感受性が鋭く、他人の些細な感情の変化を読み取ってしまう。
特技は耳を動かせること。
好きな料理は母親の料理。
……軽く思いついただけでも、しほについてたくさんの情報が浮かんだ。
彼女のことは誰よりも知っているつもりである。
でも、俺の知らないしほはきっと存在する。
だから、この程度で満足していることじたい、間違っていたのかもしれない。
そんなことを考えながら、家の玄関を開けると……銀髪の少女が、腕を組んで仁王立ちしていた。
「あっ……! こほんっ」
俺が来るとパーッと表情が明るくなったけれど、しかし嬉しさをかみ殺すように、しほはわざとらしくムスッとした表情を作った。
「ただいま、しほ」
とりあえず声をかけてみると、しほは唇を尖らせて俺からカバンを受け取った。
「ええ、おかえりなさい。荷物も持ってあげるわ。私ってとても優しい女の子ね」
「うん。しほはいつも優しくて素敵だけど?」
素直な感想を伝えると、しほは嬉しそうに唇をもにょもにょとさせた。
「うふふ♪ そう言われると悪い気はしない――って、違うわ! 危ない危ない、また幸太郎くんにデレデレしちゃうところだった……っ!」
デレデレしてくれてもいいのになぁ。
こんなにも「不機嫌だからね?」とアピールしてくるのには、何か理由があるのだろう。
……まぁ、なんとなく分かっている。
こういう時は、だいたいいつも――
「もしかして、やきもち?」
「…………んっ」
靴を脱いで、玄関に上がる。
俺の言葉に頷いたしほは、構ってほしそうに俺の洋服をつまんでいた。
「誰か、他の女の子とお話していたでしょう? わざわざ帰りを玄関で待って出迎えてくれる上に、荷物を持ってくれるような可愛い私を待たせてっ」
「……あれ? なんで分かったの?」
「雰囲気で」
しほは感覚が鋭い。
聴覚が目立つけれど、実は味や匂いにも敏感で、新鮮じゃない食材は嫌がる傾向がある。触感にも好き嫌いがあるようで、そういえばしほはピッチりとした衣服を嫌がることを思い出した。肌に密着するのが苦手らしい。
だからなのか、彼女には俺の分からない第六感めいたものがあるように見えることがある。今回も、俺が胡桃沢さんとメアリーさんに会っていたことを、なんとなくで察知したようだ。
(もしかしたら……こうやって勘が鋭すぎるから、俺に分からない悩みとか抱いているのかもしれないなぁ)
ふと、そんなことを思う。
しほは普通の人間じゃないから、俺の理解できない『何か』があるのだと……そう思ったわけだ。
しかし、
「いえ、雰囲気はウソ。本当は、幸太郎くんが胡桃沢さん?だったかしら。彼女と同じ車に乗っているのを見かけたから」
答えはもっとシンプルだった。
たまたま俺を見かけただけだったらしい。
「そ、そういうことかっ」
難しく考えすぎた自分が、ちょっと恥ずかしくなる。
……というか、待てよ? もしかして俺の悪いクセって、こういうところではないだろうか。
俺はどうしても、しほを『特別』だと思いたがる。
そういう思考のクセが『霜月しほ』の人物像に齟齬を生じさせているのかもしれなかった――
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