第百三十四話(間話三) 語り手はサブキャラクター
――え? 私が語り手ですか?
よくもまぁ、そんなことができますね。私なんて物語には関係のないサブキャラクターなので需要がないと思います。
とはいえ、求められたらやるのですが。
一応、自己紹介をしておきましょうか。恐らく知らない方も多いと思います。
私の名前は仁王二子です。
生来ずっと悩んでいることは名字が強そうなのに名前が弱そうなことです。趣味は読書です。本の虫なのでたくさん読みます。
経済的な理由で図書館の本ばかり読んでいます。なので自然と文学的な作品ばかり読んでいますが、別にエンタメノベルが嫌いというわけではありません。最近は浅倉さんからライトノベルを借りて読むようになりました。すごく面白くてハマりました。私もお兄ちゃん♪って呼んでくれる妹がほしいです。まぁ、私は女性なのでお兄ちゃんにはなれませんが。
季節は12月。私は教壇の真向かいの席で、今は授業を受けています。
勉強はそこそこ得意です。というか、家が貧乏なので勉強と読書くらいしかやれることがなだけなのですが。
そんなこんなで、いつの間にか勉強が得意になっていました。
この成績なら大学も特待生を狙えるみたいなので、がんばります。私を片親で育ててくれている母に少しでも楽をさせてあげたいと思っています。
え? 興味がないですか?
お前なんてどうでもいい?
いやいや、落ち着いてください。どうせこれは間話です。物語になんて関係があるようであんまりないのですから、気楽にやらせてください。
普段からメタの多い作品ですが、今回は更にメッタメタにしてやります。何故なら私はサブキャラクター。今後はどうせ物語に登場しない端役なので、好き勝手に暴れてやります。
私は設定上、唯一の中立キャラクターという立ち位置みたいですからね。
竜崎龍馬陣営でもなく、中山幸太郎陣営でもない、平々凡々なキャラクターなのです。だからフィルターの通さない視点から、現在の状況をお知らせいたしましょう。
まずは、竜崎龍馬さんの認識について。
恐らくは皆さんも気になっているのではないでしょうか。ハーレム気質の彼が、クラスメイトからどんな印象を抱かれているのか――という点についてです。
端的に答えますと、まぁまぁ浮いてますね。
いえ、虐められているとか、無視されているとか、そういうレベルではないのですが……だいたいの男子は、彼を遠巻きに見ています。そして彼に好意を抱いていない女子も、あまり関わらないようにしていますね。
私もそのうちの一人です。だって竜崎さんの周囲ってかわいい女の子が多いので、私みたいに凡庸な女の子には居場所がないんです。だから浮いてます。触れたらやけどしそうなので、皆さん気を付けているのでしょう。まぁ、女子に関してはクラスのほとんどの子が彼に好意を抱いているので、私の方が少数派になりますが。
そういうわけなので、彼の物語を見てみると、関係者以外の人間はまるで存在していないように感じるかもしれませんね。
一方、中山さんの印象なのですが……何と言えばいいのでしょうか? 物静かで、大人しく、竜崎さんほど浮いていると言うわけではありませんが、どこか周囲を避けているように見えます。
とはいえ、霜月さんとは仲良しなので、いつも二人はイチャイチャしていますね。教室のすみっこでよくおしゃべりしているところを見かけます。声が小さいのでどんなやり取りをしているのかは分かりませんが、お二人とも幸せそうなので見ていて微笑ましいです。
一年二組の皆さんは、口に出すことはありませんが……中山さんと霜月さんの関係性については、応援されている人も多いと思います。
何故かというと、宿泊学習の時の印象が強かったからです。
あの時までは、恥ずかしながら私も中山さんがどんな人間なのか知りませんでした。
でも、舞台上で泣いた霜月さんを守る中山さんを見て、胸が打たれました。
別に、好きになったわけではありません。
単純に、人間として尊敬したのです。
だって、彼は一生懸命霜月さんを守ろうとしていました。
あんな姿を見てしまっては、応援したくなるのも無理はありませんよね――
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