第百一話 ※セリフです
ただいま、ママっ。
今からちょっと幸太郎くんにお説教するから、お部屋に入ってこないでね?
え? 今日の夜ごはんはハンバーグ!?
わーい、やった~♪ って、違うわっ。ごはんの前に私はどうしても幸太郎くんをお説教しないといけないのっ。おなかがいっぱいになったら機嫌が直ると思ってるんでしょ? 私はいつまでも子供じゃないんだからねっ。
ほら、幸太郎くんも行くわよ? いつまでもママが綺麗だからってデレデレしたらだめよ? まったく、節操がないんだから……ママも満更そうな顔をしないでっ。パパはあげるから、私から幸太郎くんを奪わないでっ!
まったく、うちのママったら幸太郎くんをたぶらかそうとして……あなたもあなたよっ? なんで笑ってるの? え、私のほっぺたがフグみたいに膨らんでてかわいい? そ、そそそそうやって褒めても嬉しくなんてないんだからねっ!
でも、もうちょっと褒めてもいいのよ?
そうしたら、お説教を少し減らしてあげてもいいわ?
…………そ、それは言い過ぎよっ。
天使みたいに可憐で美しくて見ているだけで幸せになれそうなくらいに輝いているなんて、そこまでじゃないわ。私なんてせいぜい、天使みたいに可憐で美しくて見ているだけで幸せになれそうなだけだと思うの。
え? そんなこと言ってないしまったく『けんそん』してないって?
けんそんって何かしら……あ、もしかして難しい言葉で惑わそうとしているのねっ。そうはさせないわ! まだまだ私の機嫌は悪いのよ? バナナを奪われたお猿さんみたいにムキーってなってるんだからね!
ほら、正座して!
あ、でも床だとおひざが痛くなるから、ベッドの上でいいわ。パパとママに無理を言って買ってもらったとってもお高いベッドなの、おひざも痛くないでしょう? あの二人は私のことが大好きだから、ちょっとおねだりしたら甘やかしてくれるわ。
でも、幸太郎くんは意地悪ね? 私、甘やかされて伸びるタイプなのよ? 放置されたり、叱られたり、冷たくされたら、うさぎさんみたいに寂しくて死んじゃうのよ? 私が死んでもいいの? あ、ごめんなさい。冗談でも死ぬなんて言ったらダメね。みんなが大切にしてくれている体なんだから、私も大切にしなくちゃダメよね……って、違うわ!
また話を逸らそうとしてもダメよ!
……え? 幸太郎くんは何も言ってない? 私が勝手に暴走してる? そうよ、私は今、とっても悪い子なのっ。だから幸太郎くんは私がいい子になるまでちゃんとかまってあげなさいっ。
だいたい、自分で言うのもなんだけれど、私はとっても簡単な女の子よ? ただ、私以外の女の子としゃべらずに、私だけを見て、私だけを愛してくれたら、満足する程度のちょろい女の子なのに……え? ちょろくない? ちょっとめんどくさい? でもそういうところもかわいい!?
……ふ、ふーん?
幸太郎くん、なかなか褒めるのが上手になってるわ。
なかなかやるのね。今の言葉はちょっとびっくりしたわ……自分でも自覚はあるのよ? 私、ママ譲りでちょっと重たい女の子でしょ? ほら、ママもパパが他の女性と一緒にいただけで拗ねるし、似てるじゃない?
あんまりめんどくさい女の子にはなりたくないけど……幸太郎くんがお友達になってから、自分の感情がとめられなくなっちゃったの。
ねぇ、だからもっとかまってほしいわ。。
まだまだ、足りないの。いいえ、満足したことがないの。幸太郎くんが一緒の家に住んでくれてたらいいのに――って何度考えたか、分かんないわ。
そんな状態なのに、演技だけど他の女の子とイチャイチャするところなんて見せられたら、我慢できなくなっちゃうわ……ねぇ、幸太郎くん? 私、どうしたらいいかなぁ?
別に迷惑がかけたいわけじゃないの。
幸太郎くんが私のことを特別に思ってくれていることも、しっかり理解しているの。
あなたが他の女の子に興味を抱いていないことも、ちゃんと分かるの。
だけど、それでもやっぱり満たされないわ。
だから、お願いよ。
幸太郎くん……私の頭を、なでなでしてもらえないかしら――
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