謎が解けるまであと5分
電気ケトルに水を入れ、ボタンを押す。
お湯を沸かしている間に、透明なフィルムを剥がして、カップの蓋を三分の一くらい開ける。スープの素を取り出して袋を開け、カップに入れる。そうしているうちに沸いたお湯で、カップを内側の線まで満たしてやる。
「よし」
あとはスマホのタイマー機能で、きっかり5分を測るだけだ。
「わー律儀だな」
ひょっこり横から顔を出す助手。
「当然のことだろ?」
「いやー、僕はいつも体感で測っちゃうんで、特にタイマーとか使ったことはないですね」
「なっ……君は文明の利器を何だと思っているんだい!? これは初歩の初歩だよ!?」
「初歩って何の初歩ですか」
「それは君、赤いきつね理論のだよ」
「どんな理論だ!」
そこで突然、助手が勢いよく蓋に手を伸ばしたので、慌てて器を持って避ける。
「えっ、いやいやいや、何開けようとしてんの? 早いよ? 早漏にも程があるよ?」
「えっ? 今ので大体5分じゃないすか?」
「いやいいとこ30秒くらいだったよね!? 君の体内時計ほんとどうなってんの。てかいつもこんなガッチガチなまま食べてたわけ!?」
すると助手は、ハッとした顔になる。
「そうか、そうだったのか……通りでうどんなのに異様に固いなと、前から謎だったんです。また一つ事件を解決しましたね、先生!」
「いや、事件でも謎解きでもなんでもないからねこれ。君がぶっ飛ぶレベルで何にも読んでないだけだからね」
そうして何度か開けられそうになる蓋をなんとか熱と箸で押さえつつ、私たちは五分を過ごしたのだった。
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