6話



一気に喧騒に包まれた集会。


至る所で怒号が響き渡り、黒騎士団と白騎士団、両者を止めようと間に入った他の三騎士団を巻き込んだ乱闘が始まった。


それを愉快気に壇上から見物していたロックだが、ふと自身を庇ったジルに目をやった。


ジルは頬が赤く腫れあがり、動けずにいた。


しかし、ロックの顔色は全く変わることがない。


「何をしている? 早く立て。お前はあの程度でノビるほど、やわではなかろう」


謝辞の一つもなく冷淡に言い放ったロック。


「……」


だが、ジルはピクリとも動かない。


あたりどころが悪かったのか、気を失ってしまっているのだ。


「ちっ」


誰にも聞こえない程度に舌打ちするロック。


そして、スゥーと息を吸い込んで、


「――静粛に!!」


「「「!!」」」


さすがというべきか。


収拾がつかなくなっていた場を一言で抑え込んだ。


「今日はここまでとする。 私は、息子を家に連れて帰る。解散!! 言っておくが、まだこの後面倒を起こすものがいれば、懲罰房に行かせるからな!」


パンパンッと手を叩き、ロックは未だに動けずにいる華奢なジルの身体を、背中に抱えて帰路についた。



☆★☆


――ロック邸。


帝国で最も贅の限りを尽くして建てられた大豪邸であり、その敷地面積は端から端まで移動するのも半日はかかるほど。


ロックが鉄製の門扉に立つと、中から大勢の使用人が出迎えた。


そして執事長を務める銀製の眼鏡をかけた老執事バトラーがお腹に手を当てて、ぺこりと礼をして、ロックの背中で未だに眠り続けているジルを、ほぉと溜息をついて


「お帰りなさいませ。ロック様。その様子ですと……うまくいきませんでしたか?」


「いや、上々だ。少なくとも、あの石頭に熱湯をかけてやることぐらいの成果はジルは見せてくれた」


そういう割に、いまいち表情が優れないロック。


だが、そこはあえて触れるべき事ではないと察した執事バトラー


「それは良かったですな。さ、さ。中にお入りください。いつまでも立ち話というわけにもいきません。どこで、誰が耳を傍立てている輩がいるやもしれませんし。後は私にお任せください」


急かすようにそう言い、辺りを警戒するように周囲を伺う素振りを見せた後、ジルをロックの背中から降ろした執事。


ロックから、ジルの介抱をするように、命を受けた老執事バトラーは彼を腕に抱きかかえて、部屋に向かった。

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