第14話 会議は踊るさらどパワハラ
「航路ですか……。」
ノースがつぶやく。
航路とは船の進む道のこと。
海岸線沿いを行ったり、ただ単に最短距離で行ったり。色々と行き方がある中で、何の道を使うかというか、船乗りでは一二を争う大問題。
「そう。北の方は独自の海流があって行きづらいって言うから、今までみたいにいきあたりばったりだとちょっときついみたいでね。」
船長が苦い顔をしながら言う。
前にいきあたりばったりで渦巻き潮にのまれて死にかけたことがあるから、航路は慎重に取らないとね。
「氷があるのはこの辺。海流はこの辺とこの辺が北向きで、こっちが陸向き。で、最大の難関がここ。」
ポンポンと地図を指さしていった船長が、海の真ん中。先程宝があると指さしたところとほぼ同じところを指す。
北の海も全部凍ってるわけではなく、一部寒いところが凍っている。
海は水で繋がってるから、凍るには全部の温度がゼロより下に……とかいう難しいことは知らんが、とりあえず凍っている。
「お宝があると言われてるとこの周りを囲うように、渦巻きの海流があるんだわ。」
「なるほど……これは大変ですね。」
船長がぐるぐると指を回すのをみて、ノースが頷いて考え始める。
俺らの団の会議とは思えない、とても真面目な雰囲気。そんな中俺は、時間を持て余していた。
いやねぇ、船長と二人のときも適当にこの辺かなーって言って終わりだったから、こんな真面目とか聞いてない。そのうえで、優秀な後輩がいるとなれば俺がいる意味というのはゼロに等しい。
あぁ、ねみぃなぁ。寝よっかなぁ、嫌でも流石に寝ちゃだめか。
「では、ここの海流に乗って、こう行けばどうでしょうか?」
「そうか……でも、これはどうする?」
「それはこっちに避けることで……。」
「なぁるほどぉ!! 君天才だわ!」
「ふぁぁ……」
俺があくびをする間も、お二人さんは会議を続けている。俺も理解することはできるけど、そんなぽんぽんとアイデアは出てこない。
やっぱ歳かなぁ。この中じゃ一番年寄りだもんな。けどまだ二十歳なんよなぁ。
「よぉし!! それで行こう!! 元帥くん、どうだい!?」
どうやら道が決まったみたいで、船長はキラキラとした目で俺を見る。
「あ、いいんじゃないっすかね。」
…………すみません、よく聞いてませんした。
けどザーッと見た感じ、多分最善策だと思う。あとは、最後の渦潮をどうするかだよな。
「最後のところどうしましょう?」
ノースも俺と同じことを思ったようで、船長に尋ねる。
「渦巻きねぇ。凍ってくれれば上飛べるんだけどねぇ。」
船長が悩みながら冗談気味につぶやく。
「凍らせます?」
「うーん、難しいなぁ。」
海ってのはなまじ広いから、凍らせるのは簡単じゃない。潮があって動いてるならなおさらのこと。
俺に氷の力とかあれば別だが、あいにくそんなファンタジー世界に生きてないんでね。
「一ついいですか?」
「なんだ?」
「どったん?」
おずおずと手を上げたノースに俺と船長の視線が集まる。
海賊団のナンバーワンと、実質ナンバーツーに睨まれて可哀想に。
「渦巻きなら流されても真ん中に行けるのでは……?」
「ッ!!? お主天才か!!?」
俺らからの圧力に負けず、ノースがつぶやいた案に、船長が驚愕の目をする。
た、確かに内側に巻いていく潮ならば流されれば真ん中に行ける。
ただ、船が転覆しないかという問題がある。それに……。
「けど、帰りはどうするんです?」
俺はこれで決定と喜ぶ二人に、最大の疑問を投げかける。
だって、行ったなら帰らなきゃいけないじゃん?で、潮は内側に行くんなら、帰りは逆向きでは?
俺はこの質問に賛同が得られ、また再び議論に戻ると思った……が。
「そこは……神剣の力で。」
「七つの大財の力だし、そんくらいできんじゃね?」
何故か二人は当たり前と言った顔で、そんな無責任な楽観的主張をする。
「いや、いくら神剣といえど、剣ですよ? ただの剣ですよ? そんな海を変えるなんて無理でしょ?」
逆にそんなことできたら怖いわ。
「いや。できるね。七つのお宝なめんじゃないよ。」
えぇ……なんでそんな全面的に信頼してんすか?
見たことないんですよね? 見たことある人もいないんですよね?
てか、本当にあるかすらわからないんですよ?
それはあまりにも楽観的過ぎん?
「良いんだよ。今までもこんな感じでやってきたけど、なんやかんや耐えてるから。大丈夫。どーにかなるさ。」
船長はうんうんと頷きながら、そう言って笑う。
「航路は完璧です。あとは、渦巻きを乗り越えるだけですから!!」
ノースもそう言って笑う。
やべぇよ、コイツラやべぇよ。
そうだ忘れてた、コイツラうちの海賊団の船長と団員だった……。
まともなはずがねぇわ
「はぁ、まあ死ぬときゃみんなおんなじですしね。」
この人たちに何言っても無駄だし、実際なんとかなってきたし。今回もまぁなんとかなるだろ。
「そうだぞ。こんな美少女と死ねるなんてありがたく思え。」
船長は俺のつぶやきに、髪の毛をかきあげながら答える。
「もうちょっとで二十ですけどね。」
俺はその姿に息子が反応するのを感じ、すぐさま目をそらしてちょっとばかし意地悪をする。
船長、歳のこと気にしてるから。
19なんてまだ若いだろと思うかもしれないが、巷の女の子は早けりゃ15、遅くても18には結婚が決まるから。未だに恋人すらいない船長は行き遅れているのだ。
「…………うっさいわ!! このアラサー!!」
「アラサーじゃねぇし!! まだピチピチの二十歳ですし!!!」
「まぁまぁおふたりとも落ち着いて……」
俺たちが口論するのを見かねて、ノースが止めようとするが。
「「15のガキは黙ってろ!!!」」
「あ、はい……」
逆に反論されて縮こまってしまう。
「だいたい船長は行き遅れてるわけじゃなくてね、ただ出会いがないだけなの。ずっと海にいるからね。出会いがないのよ。」
「団員なんて男だらけじゃないっすか」
「おま、船長が団員となんてそんなのダメだよ!! というか、君の方こそ行き遅れてるでしょ!!」
「バッ、バカ、俺は出会いがないんだよ!! 男ばっかの海で単に出会いが少ないだけですって!」
「陸に上がるタイミングだってたくさんあるでしょ!!」
俺たちの言い争いは続いてゆく。
スペース海賊団は今日も平和です。
p.s パワハラで訴えられないか心配です。
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