第13話 只今会議中
「どこ行くんですか?」
俺は歩きながら尋ねる。
本日は休暇最終日の昼と朝の間くらいの時間帯。
床に寝たせいで朝早めに起きてしまい、朝の盛り上がりそのままに出しそうになったのを、筋トレと鍛錬でなんとか抑えたあと。
俺は船長に連れられて街を歩いていた。
「来たらわかるっての」
船長は陽気に鼻歌を歌いながら前を進んでゆく。
向かってる方向は街の中心街の方。
船長の話しぶり的にプライベートなものではなく、航海に関係があるものだと思われる。うん。
なんだ。新しい地図でも買ったのか?
俺が回らない頭を回して行く先を予想していると、
「着いたぞー!」
船長がとある建物の前で立ち止った。
表に出された看板には大きく、『市営図書館』と書かれている。
図書館……? 俺は本を読むことはわりかし好きだが、船長が読書なんて……想像がつかない。
「船長、読書するんすか?」
俺は想像がつかなすぎて、本人に尋ねてしまう。
「たまにね。今回は、航海の日程を組もうかなと。だから、船長と元帥くんと、後もう一人を呼んだのさ。」
なるほど。北に行くっていうあれのことね。
「もう一人って……」
「すみません、遅れました。」
俺と船長で今まで大体は決めてきたのに、もう一人とは誰なのかと俺がつぶやきかけたとき、俺らが来たのとは反対側からそんな声が聞こえてきた。
「いやいや、ジャストタイミングだから大丈夫! 今日は休みなのに呼んじゃってごめんね。」
船長がやってきたもう一人に軽く頭を下げる。
一応言っとくが、俺だって休暇のはずだ。
まぁ、いつものことだからいいんだけど。
「ノース、おはよう。」
俺はもう一人の肩を叩いて挨拶をする。
「げ、元帥、おはよう御座います。」
ニッコリと微笑んで挨拶を返してくれたこいつは、ノース。
休暇前の戦いで俺が飛び出そうとしたときに、心配して声をかけてくれたやつだ。
こいつがうちの団に入ったときからの付き合いで、何故か俺を慕ってくれる数少ない後輩である。
他の奴らともよく話すし仲はいいけど、慕われてる……わけではない。
どちらかというと対等というか、友達って感じだな。
俺的には慕ってくれてもくれなくても、仲がいいのは変わりないからどっちでもいけど。やっぱり慕ってくれると嬉しいというのはある。
「なんでノースを?」
俺はノースの肩に手を乗せたまま船長に尋ねる。
ノースが駄目なわけじゃないが、呼ぶなら参謀役してるような奴ら呼べばいいんじゃないかな。
「ノースは北の生まれだから。参考になると思ってね。」
なるほど。そう言えば、北生まれで名前もノースって言うことで一時期からかわれていたような気がしなくもない。
「時間もないし、中入るぞー」
図書館の前でずっと話してるのも何なので。俺たちは中に入る。
図書館の中は、至って普通の図書館で本棚がたくさんと机と椅子が何個かおいてある。
「では、スペース海賊団の会議を始めようではないか。」
北の方の詳しい地図を持ってきて席についた船長が、改まった声で切り出す。
「よろしくお願いします。」
別にそんな改まったものでもないが、そこはノッておこうということで俺も神妙な顔つきで頷く。
「まず今回の目標は、七つのお宝の一つ、青の神剣。これはその名の通り青色の剣だと言われている。今まで他の二つとともに詳細不明とされていたが、最近になって赤が南。青が北にあるという情報が出回り始めた。ここまではいいか?」
説明した船長が確認に俺たちを見るので、俺は軽く頷く。
ここまではノースも聞かされていたようで、コクリと頷いている。
船長の説明の中で、他の二つとあったが、なんで七つの大財なのに他に二つしかないかと言うと、実際に集めるのは三つだからだ。
意味がわからないかと思うが、これは簡単なことで。
荒波の中を進み行く“勇気”
味方を守り海に骨を埋める“覚悟”
胸一杯に詰まった“希望”
赤の“羅針盤”
青の神“剣”
緑の透“盾”
金の“財宝”
この七つのうちの上の三つは、手に入れるものではなく自らのうちに秘めるものとされている。
そして、最後の金の財宝は他の六つを揃えたら手に入るとされている。
なので、実際に集めるのは三つということ。
いや七つの大財って名前なのに、実際は三つなんてありかよと思うかもしれないが、ありなのだ。
というか、この解釈自体昔から言われてるだけで定かじゃないし、そもそも本当にお宝があるのかすら確証はない。
だって誰もまだ見たことがないんだから、確証が得られるわけがない、
ただ、俺ら海賊はそれが正しいと信じて突き進んでいるだけ。本当にバカな奴らだ。
「でだ、ここからは小声で行くが、私独自の情報網で得た情報だが、青の神剣は北の海の中でも、この辺りの海底神殿にある……らしい。」
船長が俺たちに顔を寄せて本当に小声になりながら言う。
話の途中で彼女が指さしたのは、北方の地図の中の海のど真ん中。
地図上だと本当になにもないところ。
俺ら海賊ですら行かないようなところに、お宝があるんだな……。
俺はその事実に興奮してくる。海賊の血が疼くと言うか、こういうところが海賊をやめらんない理由だよな。
「そして今から決めるのは一つだけ。どういう航路でどういう日程で行くかということ!」
船長も大分ノッてきた様子で、少々息荒目に俺とノースを指さした。
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