第11話 ようやく来たぜ!!無敵タイム!

「ようやくこの時が………。」


俺は灯りの落ちた街の裏道で、一人うつむきながらつぶやいた。


船長と昼ごはんを食べて、雑貨を買って解散した後。


もうすでに、空は夜と言っていいほどに暗くなっている。


「クックック、ははは、ハッハッハハハハ」


俺は誰かに見られて変態と間違えられても構わないと、気味の悪い笑い声を上げる。


「昨日行っていた団員たちから、秘密裏にアンケートを取ったかいがある……!!」


俺はこっそりと団員共にアンケートを取って、一番評価のいいお店を選んだ。


「これで、これでついに、俺の息子の出番がやってくるわけだ。」


俺はブツブツとつぶやきながら、裏道を進んでいく。


えっと、この地図通りに行くとここを右……。


俺が団員に書いてもらった地図を頼りに裏道を曲がれば、そこにはキラキラでした夜の街……


「ほへぇ?」


……はなく、肩にバットを担いだヤンキーさんたちがたむろしていた。


「あぁん? てめぇどっから入ってきた?」


「なんだおめ、やんのかゴリァ?」


「ここが俺らの縄張りって知ってんのか?」


俺の姿を確認したお兄さん達は、コキコキと指を鳴らしながらこちらに歩み寄ってくる。


「あ、あの、ちょっ、マジ、すみません……」


俺はこんなヤンキーごときに負けるわけないのだが、性根の三下なところが出てしまって、そんな逃げ腰な言葉を吐いて、背中を向けてしまった。


あっ、終わった。ヤンキーと肉食動物には背中を向けちゃいけないんだった……。


背中を向けたらもう最後。ガブリといかれる。


「オリャァ!!」


「運が悪かったなガハハハハ!!」


「死ねぇぇ!!!!!!」


奇声を上げたり、変に笑ったり、単純な暴言だったり。色んな形で俺に声をかけたお兄さん達が、襲いかかってくる。


3人ほぼ同時に俺に触れて……そのまま仲良く地べたに転がる。


「運が悪かったのはどっちか……。街のヤンキー偽物海賊団の元帥本物相手にしたらこうなるよな。ごめんだわ。」


一応、俺こんな三下臭プンプンするけど、何百人規模を相手にする海賊なんだわ。


どれだけ欲望を前にして脳内お花畑でも、流石にヤンキーに負けることはないくらいには強い、


「あぁめんどくせぇ。こちとら早く抜きたいのに……。」


ヤンキーなんてしばって転がしておくのでもいいけど、流石にそれは不憫すぎるので詰め所まで運んでやろう。


「よいしょっと。ちょっとケツ痛いかもだけど、それは我慢しろな。」


俺は一人を背中に背負って、もう二人を小脇に抱えなが来た道を辿っていく。


少し足取りが遅いのは仕方ない。初めての街の路地裏なに来るそのんて、めったにないから


「すんませーん」


俺は最寄りの詰め所の扉をノックしたがら言う。


「ハイハーイ……って、あなたか。どうしたんです? ビザの延期ですか?」


幸か不幸か、寄港時に海賊たちを引き渡したあの保安官が当番していた。


コレなら話しが速いな。


「いや、お荷物処理だ。」


俺はそうとだけ言うと、男を三人詰め所のカウンターの前に突き出す。


モゴモゴと男どもが揺れて微妙にキモい。虫みたい。


「これはまた……どうも。」


保安官さんはまた引き気味につぶやきながらも、対応してくれる。


寄る街でこういうトラブルに巻き込まれることも多々あるので、こういうところのシステムを覚えてしまってるから、スムーズに行く。


書類書いて事情話して、自分のことをちょろっと説明すれば終わり。


「ご、ご協力感謝します。」


保安官さんが立ち上がってまで頭を下げてくれる。


この人、新人だからか知らんが丁寧だよな。

大体他のところ行ったら海賊ってことで嫌がられるのに。


「あの女の人達はどうだ?」


「一旦行政で保護しております。まだ傷は癒えませんが、回復に向かっております。」


俺が尋ねたらこれまた丁寧に返してくれた。


「そうか……じゃましたな。」


壊れたまま治らないかと思ったけど、案外回復に向かってるようで何よりだ。


俺は一言つぶやいて軽く頭を下げると、詰め所を出た。


「はぁ、せっかくなのによ……。もう裏道には行かないようにしよ」


俺は地図を取り出して、裏ではなく表のお店を探す。


団員たちの話だと裏のほうは安くてサービスが良く、表は高いがサービスも上々らしい。


陸に降りても金使うのこういうときばかりだし、たまには高いとこ行くか。


「えっと、こっちか。」


俺は地図の赤マークを指で指して、そこまでの道順を見つける。


海賊だから世界全体規模の地図見るのはプロ中のプロだけど、こういう街の地図とかは苦手なんだよな。


だって海の地図に道はないし。方角と大体の距離見るだけだもん。


「よっくぼ〜うよっくぼ〜う、ランランラーン」


俺はスキップして愉快げに、今度こそちゃんと夜のお店に向った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る