第10話 船長とお買い物
久しぶりの休日。
船長と二人で楽しいお買い物………をするはずだった。
俺は完全に舐めていたのだ。
女の人のウィンドショッピングの長さを……。
1時間もあれば終わると侮るなかれ。あの大雑把で有名な船長ですら、もうかれこれ2時間は見ている。
怖い。もはや怖い。
俺なんて一発目に入ったお店で、一発目に手に取った商品を買うのに。
そこまで大きいわけではないこの街で、よくそんなに時間をかけられるよな。もしここが大都市なら、マジで一日中かかるんじゃないか。
結論から言おう。俺は疲れ切っていた。
街のベンチに寄りかかって、死屍累々の形相。
もう無理ぽ……。
「へたばっちゃって、情けないぞ。ほら、一通り周り終わったから。」
口から魂を放出する俺に、船長が腰に手を当てて言う。
逆になんであなたは俺と同じだけ動き回って、そんな元気なんだ。
「も、もう終わりですか?」
「いや。結局一番最初のが一番良かったから戻る。」
…………ダメだ。言っちゃだめだ。
やっぱ最初がいいんじゃねぇかとか、おまそれなら最初からそれにしとけやとか、他のところ行った分無駄じゃねぇかとか。
そういうことを言ってはいけない。喉元までせり上がってくるのを、なんとか押さえつけて出さないようにしなければ。
それが、真の男というもの……!!
「い、行きましょうか……。」
俺はなんとかぐっと堪えて、船長が楽しそうなら良しという結論になり、子鹿のように震える足で立ち上がる。
俺結構運動する方……というか、バッタバッタと敵をなぎ倒すタイプなんだけど、こんなに疲れるもんかな。
肉体的ではない精神的な疲労もあるのかもしれないけど。
俺は腰を抑えておじいちゃんみたいになりながら、船長についていった。
◇ ◇ ◇
「船長、何にしたんです?」
俺はお店に入って周りを見渡しながら尋ねる。
はじめに訪れたお店はなかなかに大きいお店で、たくさんのお洋服がおいてある。
メンズ向けもあったけど、俺は今のままでいいさ。
そういけば、海賊の格好を話していなかったかもしれん。
船長はずっとあのおっぱいの強調される服を着ているが、団員たちは基本無地の白ティーに黒のズボン。
頭になんかヒラヒラしたの巻いてるやつと、巻いてないやつがいるが、基本みんな格好はおんなじだ。
別に揃えろって言われてるわけじゃないが、そっちのが楽だからみんな着てる。
かくゆう俺も、普通にその服で今町を歩いている。
別にダサくないし機能的だし、俺らからすればこれで大満足だ。
閑話休題。
俺はどうか露出の低い服にしてくれと、心のなかで願いながら船長の返事を待った。
「コレかコレだなー」
船長は迷っているようで、二つの服を俺に差し出すと、どちらが良いかと尋ねてきた。
片方は濃い赤と黒を基調とした厚手のパーカー。
もう片方は紺色ベースのコート。
これから寒いところ行くから、それように防寒着か。
どっちも船長に似合ってていいと思うが……俺か選ぶなら断然に、
「こっちです。」
俺は迷いなく左のパーカーを選んだ。
理由は簡単。ダボッとしていて体の線が隠せるから。
コートもいいのだが、どうしても前の上側は襟になって隠れない。
つまるところ、船長の大切なものが隠れない可能性が大だと。
それならがわざわざ来た意味がないと。
なのでパーカー一択だ。
あれを着てもらって、船長の大砲に蓋をするんだ……!!
「なるほどねぇ。じゃあコレにしよっかなぁ。」
「それがいいですよ。」
自分に合わせてみてそうつぶやく船長に、俺は猛プッシュをかける。
成功すれば、船長の誘惑に耐えろRTAが開催されることはないだろう。
みんな、悲願達成なるかも。とうとう俺たち、開放されるかも……!!
「決めたわ。コレにしよう!!」
キタァァァアアアア!!
俺は買い物が終わることと悲願が達成されることのダブルで喜んで、思わずガッツポーズしちゃうところだったよ。
万事休す。
「おつかれ〜」
買い物が終わった船長が袋とともに現れる。
「お疲れさまです。良い買い物が出来たみたいで良かったです。」
俺の斜め下には巨大な双峰がそびえ立っているわけで、今までなら欲望を抑えつつも目が惹きつけられていただろう。
しかぁし、今日の俺は強い。
船長が服を買ってくれた上に陸の上でお休みの日だ。普段我慢することも我慢しなくていい。
そう。つまりは、俺は今無敵状態。
「昼過ぎたけどどうする?」
船長が周りを見ながら尋ねる。今いるのは街の中心から少しそれたところ。
建物はあるが、その多くは住宅でお店ではない。
けど、少し歩けばご飯屋さんくらいあるだろう。
「飯食いに行きましょう。」
「朝は野菜だったし、肉だな!!!」
俺たちは二人で愉快に歩き出した。
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