次元界学:奈落界アビス(その3)

 この章では、次元界学:奈落界アビス(その2)にて紹介しきれなかった残りの名所を記す。


⛧マルヴェリヤ

 ”棺の新郎”の異名を持ち、墓荒らし・死姦を司る新生デーモン・ロード ”メンカー” の支配する領土。

 ”ハーレムの墓場”としても知られるこの領土は、無数の遺体が埋まった墓で満たされた島であり、周辺の海域には難破した船や沈んだカタコンベがあり、そこにもメンカーが好む死体が眠っている。


⛧メフィジム

 沼・両生類・ボガード(邪悪な蛙人間)を司るデーモン・ロード ”ゴグンタ” の支配する領土。悪臭を放つ広大な湿地帯の島であり、ダゴンの領土”ヰ=シュサー”の海域内に含まれている。

 この特性は他のデーモン・ロードと比べて珍しいものであり、当のダゴン自身はゴグンタの活動に殆ど興味・関心を持っていない。一説によれば、ゴグンタはダゴンに仕えた強力なヘズロウ・デーモンであったため、今も尚、主従関係にあるとされる。


⛧真夜中の島

 闇・色欲・暗殺を司るデーモン・ロードであり、ソコスベノスの妹である ”ノクティキュラ” の支配する領土。官能的な不道徳と永遠の闇に覆われたこの島々は、上空に浮かぶ巨大な蒼ざめた月に8時間照らされ、次に薄暗い不自然な星と光の糸によって8時間照らされ、残りの時間は完全な闇に包まれる。

 この島の黒い海域は、ダゴンの領土である海域と繋がっており、この海はステュクス河とも接続している。領土内の各島は、彼女によって殺害されたデーモン・ロード

等の強力な実体が変化したものであり、彼女の領域は、暗殺が達成されるたびに新しい島が誕生し、拡大と発展を遂げた。

 各島は、ノクティキュラに仕えるサキュバスまたはインキュバスの固有種によって支配されており、島は元型となった犠牲者に由来する独自の生態系を有する。

 列島の中心にある最大の島”アルニシア”に”サキュバスの女王”が住まう私的な宮殿があり、この島の都市部は新生デーモン・ロードにして彼女の愛人である、 ”シャミラ”が統治している。


⛧月夜ヶ原

 人狼ワーウルフ・月・荒廃を司るデーモン・ロード "ジェゼルダ" が支配する領土。永遠に昇り続ける満月と星々に囲まれた永遠の夜の荒野であり、一説によれば領土内の星は、領域内で起きるイベントの数々を眺める彼女の愛人の瞳であり、満月はジェゼルダの瞳であるという。

 領土内は果て無き荒野、湿地、平原、沼地、森林地帯で構成され、他の領土から侵入したヘズロウ・デーモンやフロフェモス(蛙型の魔獣)、彼女に仕えるワーウルフの氏族やワーウルフ化したデーモンの眷属によって絶えず縄張り争いが繰り広げられている。

 最も重要な地域は、荒れ地にあるジェゼルダの狩猟場であり、ここでは多くの世界から人型生物が強制的に集められ、ジェゼルダの狩猟と獲物への欲求を満たすためにだけに設置された村が形成され、住人は絶えず恐怖に怯えている。 ジェゼルダに仕えるワーウルフとアンティ聖騎士パラディンは、湿原で永遠の狩りを行い、ジェゼルダの手先は常に彼らの人口を維持するために働いている。

 また、この領土はステュクス河に直接接続されている。


⛧ムラベララ

 憎悪・強奪・悪意を司る妖婆ハグの守護神格 "ギローナ" が支配する領土。この領土は、暗闇に包まれた森林地帯であり、森の中では彼女を崇拝する様々な女性クリーチャーが支配しており、不幸な男性が獲物として狩られる。

 ただし、ギローナはアビスの他に専用の領土を保有しているため、当の本人は不在であることが多い。言うまでも無く、ハグの守護神格たるギローナとハグのデーモン・ロードであるメスタマは敵対関係にあり、メスタマは自身を崇拝しないハグや魔女ウィッチに対して強い嫉妬と敵意を抱くことで知られている。


⛧ネス

 共喰い・吸血鬼ヴァンパイア・血を司るデーモン・ロード "ズーラ" が支配する領土。常に夜に覆われたこの世界は、物質界に酷似した様々な環境があり、常に雪に覆われた山脈と氷河の谷といった寒冷地から、谷、森林地帯、沼地、湿原や平野といった温暖地へと徐々に移行する。

 ジェゼルダの領土と同様、ネスには物質界から拉致された、または自分たちが物質界にいると信じ込んでいる人型生物の集落が数多く存在し、毎夜ごとにズーラと彼女に選ばれた従者が狩りを行い、血の饗宴に浸る。


⛧プレローマ

 禁断の伝承・魔術・蛇を司るデーモン・ロード "アブラクサス" が支配する領土。複雑な幻影の帳に覆われたこの領土は、侵入した者が脳内や心象で思い描く”楽園”を実際に映し出し、その危険な本質を明らかにすることを妨げる。

 複雑な幻想の帳の奥深くには、美しい螺旋状の都市”ディオヴェンシア”があり、この大都市をアブラクサスが支配している。この都市は禁断の知識や魔術的な秘儀を求める者にとっての聖地であり、都市内にある膨大な数の図書館の塔には、知識を求める勇敢な冒険者を強く惹きつける代物が数多く眠っている。


⛧ランカラス

 ノクティキュラによって暗殺されたデーモン・ロード ”ヴィリヤヴァクサス” が支配していた領土であり、今日では空白地帯と化している。この領域の深部はカマソッソ神の領土と通じており、一説によるとヴィリヤヴァクサスは、カマソッソ神の息子であったといわれている。


⛧軋る亀裂

 悪名高きパズズの息子にして、亀裂・蝗・侵襲を司るデーモン・ロード ”デスカリ” が支配する領土。この地は害虫の蔓延る亀裂の迷路であり、彼がゴラリオンへの侵略を開始した事で、無数の亀裂はゴラリオンへ到る直通ルートが数多く存在している。

 デスカリは喚き苦しむ”嘆願者”(生前、デーモン・ロードを崇拝した罪深い魂)で満たされた湖によって囲まれた廃墟の大都市に住んでおり、デスカリや彼の眷属に貪り食われていないこれらの魂や侵入者は、徐々に知性ある蟲の集合体へと変化し、デスカリの支配下に入る。


⛧休息の裂け目

 ”休息の裂け目”は引き取り手の無い魂をアビスに蓄積する場所であり、この地では殺害されたデーモン・ロードの魂が収容される。これは彼らの強大な力や存在の痕跡が何らかの形でアビスに残ることを意味しており、その亡骸はこの裂け目の壁に化石化した形で顕れる。

 この場所は空白地帯ではあるが、決して無人では無い。”キュレーター”と呼ばれる強大な神話級ナルフェシュネー・デーモンの管理者が化石化した死体を絶えず監視しており、彼はアビスの大いなる意思を受けて任命された管理人であるという。

 時折、正義や善の存在は、そのような悪は未来永劫復活する事が無いよう、デーモン・ロードの残骸を完全破壊しに、侵入してくるがそれは無駄な努力である──何故ならば、これらの残骸は、破壊された後に亀裂の別の場所で完全復活を遂げるのだから。


⛧囁く砂の海

 砂・渇き・蠍を司るデーモン・ロード ”アルディナク” の領土であり、彼女はラマシュトゥ神の娘にしてアレシュカガルの腹違いの妹である。

 かつてこの領土は、姉のアレシュカガルが支配していた領土であったが、数千年前に彼女が襲撃をし、姉から奪い取った。現在、アレシュカガルは”血の裂け目”と称される階層に亡命し、両者は果て無き抗争を繰り広げている。

 囁く砂の海は広大な砂漠の荒れ地であり、過酷な砂漠地帯特有の脅威に加え、デーモンなどの怪物が生息する砂丘と破壊された廃墟の街が果てしなく続いている。


⛧セクター・セラクティス

 この地は係争中の領域であり、一部は呪われた王国・卑劣な実験を司る新生デーモン・ロード ”ヤマサス” が支配し、残りの一部は強力なデーモン(バロール、ヴァヴァキア、ヴロリカイなど)によって支配されている。この領土は地理的に、デーモン・ロード ”イドトラス” の支配する”螺旋経路”の中心に存在しており、広大な地下の洞窟となっている。

 ヤマサスはこの地に”新鮮な肉の王国”と称される本拠地を設けており、ここでは彼の悍ましい実験による産物が跋扈している。


⛧スリザリング・プール

 エイローデン神によって殺害されたデーモン・ロード "イブドゥレニアン" の領土。現在は彼の有力な配下であったバロール・ロード、"煮え滾る潮"のアシズムンが死せる珊瑚の宮殿からこの場所を支配しており、彼は間もなく新生デーモン・ロードに変成を遂げる。

 スリザリング・プールは、ヰ=シュサーの領土に隣接する沿岸の領域であり、領土名の名称の元となった岩のプールと、その海の潮によって定期的に洗い流される何マイルもの砂浜が存在する。


⛧螺旋経路

 老化・時間・ワームを司るデーモン・ロード ”イドトラス” の支配する領土。螺旋経路は多くの領土に跨るという点において独特の階層であり、奈落界アビスはおろか外球アウター・スフィアを貫通するほどに広大なトンネルの迷路である。

 この領土は他のほぼ全てのアビスの階層に接続しており、外球アウター・スフィアを越えて他の次元宇宙の深さにまで到達する場合がある。


⛧ウリゴール

 憤怒・死・死霊術を司るデーモン・ロード ”オルクス” の支配する領土。アンデッドで満たされた様々な環境の世界であり、凍てついた海、湿地や平原、広大な山脈、

打ち砕かれた死者の骨で構成された砂漠地帯など、様々である。 

 興味深い事にウリゴールは常に戦争状態であり、アビスへと追放されたティタン神族である ”タナトニック・ティタン” とその被造物たる ”デモダンド” がこの地の支配を狙っている。だが、これらのティタン神族の一部は既にオルクスの崇拝者か同盟者と化しており、それに加え、オルクスの力を畏れた一部の神格やデーモン・ロードの暗躍によって、何千年も続くこの抗争は今や、終わりが見えないほど泥沼化している。


⛧アンダーサンプ

 怠惰・毒・粘体を司るデーモン・ロード ”ジュブレックス” の支配する領土であり、奈落界アビスに住まう一部の住人達は、この地をアビスに流れる一種の下水道と捉えている。

 領土は無限の迷宮の如き複雑な洞窟網やトンネルで構成され、アビスの他の階層や多元宇宙の様々な場所に通じる広大なネットワークとしての役割を果たしており、領土内を流れる水路は様々な粘体クリーチャーで満たされているだけでなく、下方次元界を貫くステュクス河とも接続しているため、触れただけで記憶を奪う死の河の水が混ざって流れている。

 アビスに住まう勇敢なクリーチャーや無謀な来訪者は、アビスの他の階層や他の次元界(地獄界ヘル第二階層であるディスの街の下水道、破滅界アバドンの沼地、混沌界メールシュトロームの領域など)へと侵入する為の秘密の導管としてこの領土内を往復するが、この領土を支配する"無貌の支配者"の注意を引かぬように最大限の警戒と努力を尽くさなければならない。

 しかし、ジュブレックスはその権能ゆえか、極めて怠惰であり、実際、彼の領域の一部は他のデーモンが支配しており、その正当性を主張している。


⛧ヴァンティアン

 異端・絶望・自殺を司るデーモン・ロード ”シフケシュ” の支配する領土。「解放された窓の都市」や「自殺都市」の異名で知られるこの階層は、ダゴンの領土”ヰ=シュサー”の海域と通じており、両者は一種の不可侵条約により、不干渉を保っている。

 ヴァンティアンには自殺者──特に誤った信仰を行ったか、堕落した、または神に対する信仰を捨てた状態で自殺を遂げた聖職者の霊が蔓延っており、彼らは生前の愚行を嘆きながら、絶えず自殺を繰り返している、

 この領土の地理は非常に不安定であり、街は絶えず崖の端に向かって忍び寄り、ヰ=シュサーの海域に崩れ落ちる。その結果、その中の建物や構造物の中には、10年以上前のものは殆ど存在しておらず、街自体も絶えず自殺と再生を繰り返しているといえる。

 この領域内で本当に安定しているのは、ごく僅かな場所だけであり、その1つは、シフケシュ自身の住処である。これは、街の残りの部分がその周りを「流れる」間、支配者の力のおかげで静止したままである。もう一つは、”復活された光の番人”として知られる、ナルフェシュネー・デーモンのウィザード”エロタンディー”の住まう尖塔である。この尖塔は”昇天する光”と呼ばれる灯台であり、地面に固定されるのではなく、街の端を越えて浮かんでおり、リトリーヴァーと称されるアビス産の蜘蛛型人造モンスターの群れによって所定の位置に保持されている。


⛧二億四千万の死の領域

 刃物・幻影・罠を司るデーモン・ロード ”アンドリフィク” の支配する領土。数え切れぬほどの致命的な罠で満たされた大陸規模の迷宮であり、多元宇宙に存在する様々なダンジョンや地下通路とつながっている。

 この為、別の世界からアビスのこの迷宮に閉じ込められてしまう可能性があり、一度踏み込んだら、この迷宮の内の何処かにあると噂されている”出口”を見つけなければ、未来永劫脱出することができない──最も、この階層が誕生して以降、その難行を達成できたものなど一人として存在していないのだが。


⛧ベラキヴァン

 嵐・災害・トロルを司るデーモン・ロード ”ウラゼル” の支配する領土。絶えず嵐と豪雨に襲われ、大規模な森が森林火災に晒されている過酷な自然環境の世界であり、嵐による落雷はこれらの森林火災を更に燃え上がらせる。


⛧ヴロラス

 地獄界ヘルの悪魔王アークデヴィル”ディスパテル” とその軍団によって殺害されたデーモン・ロード ”ザール=アズマク” が支配していた領土。完全な空白地帯であり、今では如何なる権力者によっても支配を主張されていない。

 この谷の領域は錆びたガラクタや建物で満たされており、谷の頂上を囲む廃城と同じくらいの大きさを誇るゴミの山も存在する。


⛧捻じ曲がった森

 時計・異形種・牢獄を司るデーモン・ロード ”シヴァスカ” の支配する領土。暗く温暖な気候の荒野であり、光が差さぬ緑の天蓋に覆われた大森林で構成されている。

 森の奥深くには”刻冥館”と称されるシヴァスカの宮殿があり、そこはある意味で巨大”救貧院”と言える。その最も注目すべき場所は、ダイヤルが13時間に分割されている巨大な時計であり、物質界などから拉致された膨大な数の子供達の奴隷労働によって、この時計は絶えず動き続けている。


⛧ヤド=アイアグノス

 奈落界アビスの最も深い場所に存在する”ヤド=アイアグノス”は、デーモンに敗れたクリフォトが蔓延る危険な領域であり、階層を得るメリットよりもリスクとデメリットの方が遥かに勝るため、誰もこの階層の支配を主張していない。


 ヤド=アイアグノスは、クリフォトが支配しているアビスの領域において最も高い場所に位置しており、これらのより深い領域へのポータルは、この階層全体の無数の空洞と隙間に隠されている。 


 ヤド=アイアグノスの多くは、準無形の肉と粘液で構成されており、有毒ガスで満たされた扇形の穴やポケットが突然現れて消え、侵入者を捕食する可能性がある。

 クリフォトが巣を作る恐ろしい肉質の構造物は、地面から立ち上がるか、空中に支えられずにぶら下がっており、その中で最大の構造物は、アビス自体の構造に損傷を与え、他の次元界に通じる穴を開ける。それらの1つは、クリフォトがゴラリオンの東方世界”ティエン・シア”への侵略するための切欠を数千年前に与えたが、上方次元界に軍勢よって撃退され、その活動を失敗に終わった。

 

 ヤド=アイアグノスには、サイクロプス式の黒い石の柱が階層全体に散らばっており、それぞれに刻々と変化するクリフォトのルーン文字が刻まれている。それらは近くの人々にとって有害であり、矛盾した方法で自然界の法則を歪める。

 珍しい古代の書物は、これらの柱には人間が作成する技術の枠を超えた宝物が含まれていると主張しているが、宝を求めた者は全て還らぬ人となるか完全に発狂してい戻ってくる。

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生生世世 @kabriri0036

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