次元界学:奈落界アビス(その1)

 ありえないほど分厚い玉葱たまねぎの皮のように外方次元界を覆い、幾重にも層を成す”奈落界アビス”の入り口は、ステュクス河の毒水によって囲まれており、外方次元界の最も外側にある巨大な渓谷や口を開けた裂け目に存在している。

 アビスの無限の階層は全ての外方次元界に接しており、またお互いに常に変動する通路によって結ばれている。アビスには一切のルール、法、秩序、そして希望が無く、”自由”という概念が秘める最悪の可能性を体現している。

 この為、アビスは濫用される自由と終わることの無い恐怖に満ちた悪夢の領域であり、欲望も苦痛も悪魔めいた形で存在する──何故なら、アビスは”大いなる彼方"で最も古い存在の1つである魔鬼デーモンの無数の種族がひしめく場所なのだから。


奈落界アビスは以下の特性を持つ


異名:外圏アウター・リフト、パンデモニウム

圏:下方次元界(魔界)

広さ:無限大

時間:通常(しかし、領域によっては大きく変化する)

重力:通常(しかし、領域によっては大きく変化する)

霊性:混沌にして悪(強度な悪属性)

神力による変動性:アビスにその領域がある神格は考えるだけで次元界に変化を齎すことができる。

魔法の増強:[悪]または[混沌]の属性を持つ呪文や擬似呪文能力は増強される。

魔法の阻害:[善]または[秩序]の属性を持つ呪文や擬似呪文能力は阻害される。


◇アビスの領域

 無限に連なるアビスの階層は、各階層ごとに独自の生態系、独自の物理法則や重力、独自の時間軸、そして住人の数々を有しており、この次元宇宙の"混沌"の性質を体現するが如く、未知の新たな階層がランダムで誕生したかと思えば、既存の不安定な階層が予期せぬタイミングで消滅するといった、不安定なサイクルを永遠に繰り返している。このため、アビスには方向性の意味が殆ど無く、

 故にこの世界の法則性を知らない、外部からの訪問者は階層の亀裂の裂け目が閉じる(または消滅する)と同時に、自身も含めてこの多元宇宙から抹消されてしまう可能性がある。時にこの裂け目は予期せぬ形で発生するため、アビスの住人たるデーモンすらも巻き込み、彼らすら容赦なく餌食にする。


◇固定化された領域

 ただし、全ての領域がそれほど混沌に満ちているわけでは無い。アビスに本拠地を有する悪しき神々や、あらゆるデーモンの中で最強を誇る”魔王デーモン・ロード”が支配する領土であれば、アビスの絶え間ない破壊と創造の影響を殆ど受けず、彼らの支配する階層は個々の魔王デーモン・ロード(または邪神)の個性や性質に応じて、階層内に独自の宇宙を構成している。


 また、有力なデーモンを筆頭とした強者であれば、デーモン・ロードと同じくらい硬固な領域を有する事ができ、似たような階層はアビスに数多く実在する。

 時にこの様な階層には、支配者が存在しない”空白地帯”が存在し、この様な場所では、敵対するデーモン・ロード同士の軍勢が抗争を繰り広げている。こういった空白の階層はアビス自体から生まれたか、何らかの理由で放棄(または支配者が殺害)された場所であり、この空白地の固定化や支配をめぐり、野心的なデーモンやその他の強者が死闘を繰り広げる。


◇ステュクス河

 この絶えず変化する次元宇宙において確実に存在している唯一無二のものは、全ての主要な階層を通り抜ける、または全ての主要な階層に沿って流れ、支流がどの領域からも遠くなることが無い”ステュクス河”のみである。

 直線的な動きは殆ど不可能であり、無限ループと次元外の角度から至難の業とも言えるが、ステュクス河を見つけることが、不安定なアビスの裂け目から抜け出すための最良の方法であるのは疑いようがない。

 

◇住民

 無限なるアビスの階層に生息する2つの主要な種族は、最古の魔物フィーンドたる忌魔クリフォトと多産なる魔鬼デーモンであり、外方次元界の多数の種族全ての形而上学的な締めくくりとして機能します。

 クリフォトは”大いなる彼方”で最も古く、下手をすれば多元宇宙創造以前から実在していた”名状しがたい種族”であると考えられているが、デーモンは最も若いフィーンドである。

 クリフォトは奈落界アビスが最初に多元宇宙の残りの部分に顕現する前から、既に何年も前から存在していたが、デーモンは邪悪な人間の魂を用いたダイモンの実験により、創造されてしまった。時と共に文明が発展し、生物が知恵を付ける事で悪と罪に汚染された魂の流出は、想像を越えて急拡大し、デーモンはダイモンの制御能力を遥か超えて成長した。その結果、デーモンは今や全てのフィーンドの中で最も多種多様である。



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