外伝:トレルマリキシアンの華麗なる日常
「全てのものは飢えており、それ故に死ぬ。
だが、それは新たな生の始まりに過ぎない。」
──トレルマリキシアン
『~♪』
もうすぐ理想的な最高傑作が完成するためか、無意識の内に鼻歌を口ずさむ。
思えばここまで長かった・・・!!
理想的な脳、理想的な瞳、理想的な髪、理想的な舌、理想的な声帯、理想的な皮膚、胸などを筆頭とした理想的な身体のパーツの数々・・・。一体どれほど永い時間をかけて、"素材"をかき集めて厳選し、そこから更に手間暇をかけた事か・・・・!!
だが、それもようやく報われる──ついに、遂に理想的な僕の"ママ"が再現できる・・・!!
愛しい"ママ"の姿形は今も尚、完璧に思い出せないが、恐らくこんな感じのハズだ──僕の天才的頭脳と直感がそう告げているのだから、多分間違いない。
緊張と高揚感を持って最後の仕上げ──アバドンで収穫した膨大な魂の燃料をこのフレッシュ・ゴーレムへと投下し、同時に電流を押し流す。
すると、研究室内に泣き喚く霊魂の合唱と激しい電流の嵐が巻き起こり、この部屋の殆どが濃厚な煙に包まれるが、僕にはハッキリと蠢くその姿が見える──実験は成功した!!
やがて、バチバチと電流の火花を鳴らしながら、煙の中からよたよたとフレッシュ・ゴーレムが姿を現した──とうとう"ママ"が覚醒する・・・・!!
『・・・・ママ? 分かるかい!!?ママ!!! 僕だよ!!姿形はおろか名前まで変わってしまったが、僕だよ!!ママ!!! さあ、"あの時"のように僕を愛しておくれよ、ママッッ!!!!!!!』
両手を広げ、万感の思いを込めながら"ママ"を迎えようとするが──"ママ"からは予想外の反応が戻ってきた。
「・・・・??あ・・あなたは・・だれ・・・?ここは・・・・どこ・・・・・?」──この"肉人形"は、僕の"ママ"であるという自覚はおろか、自分が何者であるかどうかすら分かっていなかったのだ。
幸福の絶頂から絶望のどん底に堕とされた僕は、暫く無言のまま茫然自失としていた──次第にワナワナと全身が震え、腹の奥底から地獄の業火のように熱い激しい怒りが滲みだし──
『──どういうことだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!この畜生がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
そう叫ぶと同時に”俺”は、とんだ見掛け倒しの駄作だった、この"肉人形"を容赦なく引き裂き、貪り始める。
ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ
────『クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッッッ!!!!!!!』──── ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ
『何が不味かった!!?やはり脳か!?もう少し"素材"を厳選して精密につなぎ合わせて、記憶と意識の固定化に時間をかけるべきだったかッ!!!?それとも魂の燃料に粗悪品でも混ざっていたかッ!!?もっと良質で質のいい魂に狙いを定め、かつコストなんぞは目を瞑って大量に資源を消費するべきだったかッ!!!?いや、それとも心臓か!!?心臓に"素材"の霊魂の残滓や血液中の成分に余計な不純物でも混じっていたかッ!!?やはり、コストと手間を惜しまず最高品質の"素材"の一通りを、アスティルテの奴から仕入れておくべきだったかッ!!!!!!?いや、もしかしたら────!!!』
独りでそんな反省の数々を繰り返していると、ふと"ある実験"の事を思い出す──アズリエルの配下であるオブシスダイモンの一件についてだ。
『・・・・そうだ・・・。不味いぞ・・・・!!アズリエルの奴は、俺があのオブシスダイモンの手下を無断で、物質界に強制召喚した事を知らない・・・・・!!!!あのイカレた
『・・・いや、もしかしたら俺の企みも想定済みだとしたら・・・・!!?それを口実にして俺を殺し、アイツに忠実なダイモンの手下の誰かに騎士の座を与えて、きっと何かをやらかすつもりなんだ・・・!!!そうだ!!そうに違いないッッ!!!』──トレルマリキシアンは"いつも"の統合失調症と妄想癖を発揮して、勝手に震えて怯え始める。そして──
『・・・ママ・・・・ママッ!!ママああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!俺アイツに殺されちゃうよママああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!!!』────狂った叫びを上げ始める。
『どうしようママああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァッッッ!!!!!僕まだ死にたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!まだ世界という世界を"飢饉"で滅ぼしてないし、いろん奴をいろんな形で"餓死"させて殺したいのに、まだ殺されたくないよママあああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!』
──そう叫びながら、トレルマリキシアンはその鋭い爪で自身の顔を容赦なく掻き毟り、室内に容赦なく黒い血液が飛び散る。それだけでは飽き足らず、トレルマリキシアンは己の指を容赦なく貪り喰らい始めるが、引き裂き喰らい尽くすと同時に彼の顔や指は"完璧に再生"する──そして
『『・・・・ト、トレルマリキシアン様・・・。た、只今戻りました・・・・。』』──物質界に派遣したエロダイモンの姉弟が、タイミング悪く帰還し──
『うるせえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!俺とママが話している神聖な時間にクソ共が土足で踏み込んだあげく、話しかけてくるんじゃねええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!』──そう言い放つや否や、トレルマリキシアンは女性のエロダイモンを容赦なく頭から貪り喰らった。
『あ・・・姉うヴェ──!!!??』──驚愕する間もなく、弟と思わしきエロダイモンも眼前の狂人によって無慈悲に屠られ、引き裂き、喰われる。
狂気に満ちた忘我へと陥ったトレルマリキシアンが、かつて生物だったものを一心不乱に賞味していると──彼の腹の中から女性の声が響く。
『アハハハハハッッ!!!哀れだねぇ・・・アタシの可愛いトレルマリキシアン・・・・!! お前の愛しい"ママ"なんて、もう既に存在しないだろうに──』 ──そんな女性の声は途中で掻き消される。
『だから、うるせぇんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!クソ忌々しい死にぞこないの淫売がああああああああああああああああああああああァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!俺がママと一生懸命お話ししてる最中だろうがああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!!!』
──彼が明確な意思の力で腹の中にいる"ナニカ"を強制的に黙らせると、激怒の発作は更に悪化し、遂には研究室内を盛大に壊し始める。
そして、彼が冷静さを取り戻した頃には、領土内に設けられた研究室の一画は完璧に消滅していた。
『・・・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・!!』
『──でもまぁいいか。失敗も成功の母というくらいだし、仮にアズリエルが難癖をつけてくれば、僕が直々に撃退すればいいだけだ──うん!!何の問題も無い!!』
破壊の限りを尽くした挙句、殺処分した"ママ"はおろか喰い殺したダイモンの姉弟の事など既に忘れつつある彼は、いつもの平静さを取り戻し、何事も無かったかのように破壊した研究室を一瞬で元に戻す。
『そうだ!!そんな事よりも予てより目を付けていた、"あの惑星"での計画をそろそろ成就させよう!!──"収穫すべき魂"はもう充分繁殖したことだ・・・!!』
『オイ!!誰かいるか!?』
『──お呼びでしょうか?トレルマリキシアン様。』──彼のいつもの"発作"に慣れきっている、ダイモンの配下が何処からともなく現れる。
『まずは手始めだ。"あの惑星"に災害と蝗の群れを差し向けた後、現地の連中と協力して飢餓と死をばら撒け!! 言っておくが可能な限り表に出るなよ!!? "今はまだその時じゃない・・・・!!"』
『恐れながら、トレルマリキシアン様・・・。"あの惑星"とはどの惑星で? 何分手を付けている計画が大量にあるので、
『決まっているだろう!? 今、最も旬なあの
『・・・・それは何処でございましょうか?』
『──地球──!!何も知らない無知な人間どもが我が物顔で蔓延っている、最も終末に近い
──終わり
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