第26話 メタルタイタン
東海岸のとある港の朝。
霧笛が響く。鉛色の海面がゆれる。
港に怪しい貨物船がつく。いくつものコンテナがクレーンで下ろされる。
空港にいた黒いカバンの男がコンテナのそばに行き、そっとささやく。
「おいおい、もう少しの間だけ静かにしてくれ。おまえさんにはいろいろ苦労させられたが、別れとなると寂しいもんだねえ」
やがて、コンテナは、白いトラックに積まれる。トラックの運転手がニヤッと笑って黒いカバンの男に合図する。
黒い鞄の男は冷ややかに笑う。
「あとは、あいつがうまくやってくれる。我々の神の計画はここに完成を迎えるのだ」
白いトラックはすべるように動き出した。
アレックス・ラボのロボット工場
サキシマ、アレックス博士の前に、ケン、ルーク、リタが並んでいる。
サキシマがみんなに言い聞かせる。
「……というわけで、巨大生物の手先、あるいは何らかの悪意を持った人間がロビンの調査したマンション街のあたりに潜んでいる可能性がある。もし、本当に助けなければいけない市民がいたら、それは私たちではなく、軍の装甲車がすぐに確保するので、すみやかに連携をとるように」
隊員たちは声をそろえた。
「ラジャー」
「あと、アレックス博士から、重要な話がある」
アレックス博士が後ろの壁のスイッチを押すと、工場の奥のロボットドックが見えてくる。
ケンが目を見張る。
「おお、これは!」
ロボットドックでは、3体のロボットが、急造されている。巨人のような一台はほぼ完成し、最終調整が行われている。
アレックス博士がロボットを指し占めす。
「最近の巨大生物の進化は著しく、トロルなどはドリルボットでまともに正面からぶつかっていくと、かなりの危険を伴う。そこで、アキレスやドリルボットの優れた点を活かし、このメタルタイタンを開発したのだ。実践にあわせていろいろなタイプを開発しているのだが、もっとも汎用性の高いMT11タロスが、試験運転のレベルまで完成した。ケン隊員には、タロスの実践訓練を今日から行ってもらう。いいね」
ケンが元気よく進み出た。
「はい、期待に沿えるようにがんばります」
サキシマ、近くのマップを指し示す。
「さて、ルークとリタの両隊員は、今日からいよいよ封鎖地域だ。未知の巨大生物が数多くいることが予想される。心して駆除、処理にあたるように」
「ラジャー」
便利屋サムの事務所
みんなで静かに、コーヒーを飲んでいる。
ソロモン博士がしみじみつぶやく。
「仕事が無いのは仕方ないとして、あの台風娘がいないとなんと静かなことよ」
イネスが事務所を見回す。
「そうね、ハンドもエルンストも連れて行かれて、寂しくなっちゃったわね」
「今頃どうしておるかのう」
イネスは、いたずらっぽく笑うと、モニター画面を指差す。
赤い点が点滅しながら、マップ上を移動している。
「はいはい、リタは今日は、封鎖地帯の東部をパトロール中、ハンドとエルンストも一緒です。なんなら緊急回線をつないで、声も聞けますよ」
「いや、元気でやってるならいいんじゃよ」
その時、シドの携帯に緊急の連絡が入る。
シドがあわてて立ち上がる。
「なんだって。わかった。すぐ対応する」
ソロモン博士が声をかける。
「どうした、何か事件か」
「謎の白いトラックが検問を突破し、バリケードを破って封鎖地域に向かって暴走しているそうです。ここから近いので、追跡の応援を依頼されました」
「なんだって。封鎖地域に!モリヤと一緒に行ってくれ」
シドがバタバタとあわて出す。
「は、はい。あの高速四駆お借りします。中央検問所から飛ばせば先回りできる、行くぞ」
モリヤも飛び起きる。
「おう」
シドとモリヤ、飛び出していく。
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