第27話 商店街
封鎖地域に侵攻したリタたち。もとの繁華街のあたりで、ワームの群れと戦っている。レーダーにいくつもの赤い点がうごめいている。
リタが無線で指示をおくる。
「ハンド、右からワームが来るわ。エルンスト、左だけじゃなく後ろも気をつけて」
狭い裏通りから、昆虫型のワームが押し寄せるように突進してくる。それをソードで切るハンド。噴出する熱放射。
エルンストの左側から、大型のグールが2匹襲いかかるが、すぐそばに来るまで動かないエルンスト。後ろの狭い路地から、襲いかかる爬虫類型のワーム、エルンストがサッとよけると、2匹のグールはワームに噛み砕かれて、熱放射を撒き散らす。
エルンストの手がソードのように伸びて、硬質化する。ワームは真っ二つにされ,熱放射を勢いよく吹き出しながらしぼんで行く。
リタのドリルボットが進み出る。
「はい、仕上げの殺菌剤。これで4丁上がり」
リタのドリルボットから、殺菌剤が撃ちだされ、散らばった細胞のかけらは、溶けて行く。
リタが仲間に報告する。
「ルーク、レーダーに映った繁華街の怪物は一掃したわ。そっちはどう」
ルークが、通信に答えながら繁華街の奥を見る。物陰からデーモンの一団が、ジッとルークを見張るように見ている。
ボスらしいデーモンが、あざ笑うかのように牙をむく。
「こっちは、デーモンの群れに手間取っちまったよ。やつらはしたたかで、なかなかこちらの手に乗ってこない。逃がしたので、反対方向から追い詰めようと思う。そっちは例の怪しいマンション街に行ったらどうだい」
「わかったわ。了解。本部、こちらリタ、例のポイントB地点に向かいます」
誰もいない無人の街
ドリルボットに乗ってリタが進んでいく。
「怪しいマンション街って、うちの近所じゃない。何かたまらないわね」
ゆっくり進んでいくと、どこかでガチャンと音が聞こえる。
「何かしら、あっちは商店街の方ね」
リタは、ハンド、エルンストとともに、ドリルボットの外に出る。
あたりは、無人の商店街。人も怪物も何も見えない。風にはためく看板がある。
「ああ、角のパン屋さん」
パン屋の隣には肉屋、いつかの病室の弟キースの声が聞こえる。
「こんなたかいのじゃなくてさあ、ほら、角のパン屋のフランスパン、あととなりの肉屋の手作りコロッケもいいな」
リタには、ついこの間の商店街の様子が浮かんで見えてくるようだった。
「いつもここを通ると、おいしいパンの匂いがして、肉屋のおやじさんがお惣菜のおまけをしてくれて、花屋のおばさんが季節の花を店先に飾っていて…。」
無人の商店街に、風が吹き抜ける。
「私の街は、私の思い出は、あんなに幸せそうだった人たちは、いったいどこに行ってしまったの」
その時また、ガチャンと音が聞こえ、商店街の奥へと人影が走って行くのが見える。
「やっぱり誰かいる……。あっちは公園の方ね」
リタ、ハンドたちを引き連れ、ドリルボットに駆けもどり、大通りを走り出す。
リタが緊急連絡を入れる。
「ルーク隊員、聞こえますか。中央公園方向に怪しい人影、追跡可能ですか」
「了解。挟み撃ちにしてやる。ロビンのかたきだ」
遠くのビル街から、ルークのドリルボットが、急発進する。
中央公園へと進んでいくリタのドリルボット。
「この辺も、昔とほとんど変わっていない。ついこの間レベッカと歩いたのが夢のようだわ」
無人と化した中央公園。噴水や花壇もそのままだ。あの日のラッキーをつれて歩いた思い出の風景が、重なって見えてくる。
「いたわ。いったい、誰なの、どういうつもりなの?」
公園の小さな丘の上にカノウが立ち、商店街でくすねてきたのか、ソーセージをかじっている。リタが近付くと、妙な声で笑い出す。
「フハハハハ」
ドリルボットを降り、毅然としてカノウに迫るリタ。
怪しい不敵な笑いを浮かべるカノウ。
二人の距離はどんどん縮まっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます