第14話 カリバン

郊外の緑の多い道を走るマービン電気の車。

町の住民に、道を聞きながら、地図を片手に走って行くリーガンとマービン。

やがて、こぎれいな別荘風の建物に近づく。通りがかりの住民を見つけ、リーガンが走り寄る。そしてあわてて話しかける。

「すいません。このあたりに、ハロルド・ライアンというご老人がいませんかねえ。仕事を頼まれましてねえ」

住民がうなずきながら答える。

「ああ、薬草採りのライアンじいさんねえ、家はそこだよ。そういえば最近、かわいいお孫さんが来ていたみたいだけど、ここ2・3日見ないねえ」

「ありがとうございます」

「よし、いよいいよ謎が解ける。いくぞ、リーガン。」

マービンが後ろから追いついてくる。

ドアを叩くリーガン。誰もいないようだ。

「おや、鍵が開いてる」

マービンが、ドアの取手を押す。

「ライアンさん入りますぞ。マービン電気のものです。ライアンさんおりますか」

中に入って行くと机の上に何か紙が乗っている。読み上げるリーガン。

「やつらがここをかぎつけたらしい。しばらく旅に出る一週間以内にスクラップ業者が来て、研究所の中のものをすべて処分してくれるだろう。なにかとっておきたいものがあったら、なんでも持っていきなさい。愛するヴァイオレットへ」

マービン社長が腕組みをした。

「本当におらんようじゃのう。さて、どうしたものか」

リーガンは興味津々だ。

「研究室に有る物って何でしょうかね」

「捨てていいがらくただろう、どうせ」

二人で奥のドアを開ける。すごい設備があり、目を見張る。

リーガンのテンションがあがる。

「す、すごい設備だ。これを捨てちゃあ、もったいないですよ」

「ううむ。マービン電気でリサイクルして、有効活用すべきだろうな。うん、そうしよう、うん、さっそく手配しよう。」

「さすが、おじさん。尊敬します。」

その時、マービンが素っ頓狂な声を上げた。

「あ、ありゃあ、何だ」

マービンが、部屋の奥を指差す。そこには寸胴短足の、旧型ロボットが安置されている。リーガンが駆け付けて、スイッチを入れ、キーボードををいろいろと叩く。

すると、ロボットの目が光り、ゆっくりと動き出す。

「おおすごい。さすがリーガンだ。いいぞ」

そして、ロボットは、丁寧に挨拶をする。

「…おはようございます。私はカリバン。なんなりとお申し付けください、ご主人様…」

「あはは、こいつなかなか愛嬌あるじゃねえか」

リーガンとマービンの目が輝きだす。

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