第13話 ゴーレム

アレックス研究所周辺、翌朝を迎えている。

警察や、マスコミが集まっている。

局長やアレックス博士

ドリルボットの3人の操縦士

シドとモリヤとエルンスト

リタとハンド

そして目の前に姿を現した、ドリルボット。

いよいよドリルボットがその真価を発揮する…。

ところがその時、遠くで何かざわめきがおこる。

局長がキョロキョロして立ち上がる。

「何だ、いったい何が起きたんだ」

警備隊員が駆けつける。

「そ、それが、すぐそばの工事現場の屋上で、不審人物が何かを叫んでいます」

「何?こんな、目と鼻の先で……」

ビルの工事現場の屋上に、あの怪しい作業員が立って、叫ぶ。

「もうおまえたちには、どうすることもできないぞ」

警備隊員が工事現場を取り囲み、呼び掛ける。

「ばかなことを言ってないで、早く降りてきなさい」

「おれが、はったりだけでこの場にいると思っているのか」

警備隊員が強硬姿勢を見せる。

「言うことを聞かないと実力行使でひきずりおろすぞ」

「もうおまえたちには何もできないんだよ。ここにあるのは、今までのあれじゃない。怪物だ。恐怖をふりまきながら歩く怪物だ」

「最後の通告だ、黙ってそこから降りてきなさい」

しかし、作業員はさらに大声で叫ぶだけだった。

「ハハハ、怪物さ。ゴーレムだ。おまえらすべて、逃げ出すがいい」

作業員は体にロープを巻きつけて飛び降りる。ビルの側面についていたビニールのカバーがロープに引っ張られ、はがれて行く。すると巨大なクリーチャーボムが姿を現す。

それは十メートル以上ある、手足の生えた釣鐘状の巨人、キノコの化け物だった。

局長が叫ぶ。

「こんな巨大なものが……。警察は、警備隊は、何をしていたんだ」

サキシマ特殊処理班司令が顔色を変える。

「こんな大きさのものが爆発したら、この付近一帯はこっぱ微塵になります。早めのご判断を」

局長が周囲に命令を出す。

「警察と連携を図り、この付近のすべての住民に避難命令だ」

周辺が大騒ぎになる。

サキシマが化学処理班に指示を出す。

「新型アキレス部隊すぐに処理に向かえ」

局長がもどかしそうに質問する。

「ドリルボットの実戦配備は?」

サキシマが下唇をかみしめる。

「まだ操縦適格者が一人もおりませんので……。ただ、すぐに対策会議を開いて、検討したいと……」

新型アキレス部隊、巨大な増殖体のすぐそばまで接近し、作業に入る。

だが次の瞬間、巨大な腕で吹っ飛ばされる。

シドが目を見張る。

「な、何だ、ありゃあクリーチャーボムが、爆弾が歩き出して暴れ出したぞ」

クリーチャーボムに、小さな頭と、手足が生え、まるで、巨人のように、ゆっくりと歩き出した。近くにいたアキレスは、吹っ飛ばされ、あるいは、下敷きになった。

逃げまどう人々、待機中のアキレス部隊もかけつけるが、どうにもならない。

サキシマがそれをみて呼びかける。

「局長、博士、極めて危険です。とりあえず一時退却して、ドリルボットの緊急出動の件も含めて、作戦会議を行いましょう」

局長がうなずいた。

「こんな巨大なものが爆発したら……。わかった、すぐに作戦会議だ」

局長は、博士、サキシマ、養成隊員とともに現場を離れて行く。だが、人気が絶えた広場で、無人のはずのドリルボットが突然動き出す。

養成隊員のケンがそれに気づく。

「た、大変です。ドリルボットが動き出しました」

サキシマが振り向く。

「隊員が誰か乗っているのか。アレックス博士、ドリルボットは遠隔操作ができるのですか」

アレックス博士が口早に答えた。

「近い将来は考えているが、まだ操縦者が乗らないと、動くはずはない」

「いったい誰が?」


ドリルボットの操縦席に、どっかりと腰を下ろしたリタ。

「うんうん、なんとかなりそうね。まったくこんな危機がせまっているのに、体裁気にするやつ、すぐ逃げ出す腰抜け野郎ばっかで話にならないわ。よっしゃあ、出撃よ」

操縦桿をぐっと引き、ドリルボット発進。巨大なキャタピラがうなりを上げる。

リタが通信機にむかってどなる。

「博士、イネス、どうやったら怪物をやっつけられるの。教えて」

ソロモン博士がモニターの向こうで怒鳴り返す。

「危険すぎる。失敗したら、町ごと吹き飛ぶぞ」

「私が聞きたいのはそんなことじゃない。怪物のやっつけ方よ」

イネスがそれに応える。

「やってくれたわね。もう止めないわ。今、大急ぎでアレックス・ラボから特殊処理班に送られた操作マニュアルをハッキングしているわ……。一通り操縦ができそうなら、まずは、ロックオンボタンを見つけなさい。モニターで確認できるはずよ」

「ええっと、こ、これだ。ありがとイネス」

ソロモン博士も、もう止めなかった。

「巨人の体の中心部を狙ってうまく穴を開けて、内部圧を減少させ、それから本格的な攻撃をするのだ。動きをとめるのなら足元に冷凍弾を撃つのがよいだろう」

「ありがと、博士。大好き!」

アキレス部隊が、ドリルボットが接近するのを見て、一時退却を始める。

「なんて大きいの。でも恐くなんてない。この世からひとかけら残さず消えてなくなれえ!ロックオン。冷凍弾発射!」

目の前に、ゴーレムが立ちふさがる。冷凍弾が命中し下半身が凍りつく。一瞬動きが止まる。

「中心部にドリルをロックオン。行っけえええ!」

ドリルがすさまじい回転でつっこみ、ゴーレムの胸に大きな穴が開き、内部からものすごい勢いで熱風が噴出する。

「うああああああああ!」

あまりの熱放射に、ドリルボットがグラリと傾く。

やがて、急激に内部圧が抜けたゴーレムが、膝をつく。

「よし、とどめよ」

ドリルボット、全速回転で怪物に突進。

「砕け散れええええ!」

ドリルが唸り、ゴリラのような腕がちぎれ飛び、さらに自在に動く二つのドリルが二度、三度と肉塊を粉々にしていく。

思った以上の威力だ。怪物をばらばらに粉砕していく。

さらにとどめの冷凍弾、細胞の動きが完全に止まる。

遠まきに見ていた人々が歓声を上げる。特殊処理班や警察が駆けつけてくる。

やがて、ゆっくりと静止するドリルボット。上部のハッチが静かに開いて、短髪の女性がスッと姿を現す。女性?どよめきが起こる。操縦席から外に出るリタ。だが、周囲を武装した特殊処理班と警察に囲まれる。

近づくヘリコプター、リタに向けられる銃口。だが、おそれることなく、立ちつくすリタ。

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