第3話 ジェットパンチ

 ラウリー家に到着。何もなかったように静まり返っている。

四 駆を止めて家に近づく3人。モリヤがみんなを止めて一人で進む。すると玄関そばの茂みから、ワームのような肉塊怪物が襲いかかる。モリヤはトンボを切って、サッとよけ、拳を高速で打ち込む。刻まれ、熱を吹き出し、縮んで行く怪物。モリヤの指に鉄の爪のような武器が光る。

 シドが小型の無線で連絡する。

「おやっさん、いや、ソロモン博士。モリヤがボムモンスターをやりました。やはり傷をつけて圧力を抜けば、爆発せずに駆除できそうです」

「うむ、モリヤの中国拳法だな。シドもドリルショットを試してみろ」

「了解。よし、お嬢ちゃん、ここで待っていろ。このデカぶつから離れるんじゃないぞ。おい、ハンド、リタを守るんだ。わかったな」

シドの言葉に、大男はぶっきらぼうに答えた。

「わかった。ハンドはリタを守る」

シドとモリヤは、機敏な動きでラウリー家に入って行く。シドは上から落ちてきたアメーバ状の怪物をドリルショット一発で打ち抜く。

「あなた達って、いったい何者なの」

大男は黙ったまま答えない。シドが弟のキースを抱えて飛び出してくる。走って四駆に担ぎ込む。

「キース、平気なの」

「すぐにご両親を救い出す、待っていろよ」

「ありがとうございます」

再び家の中に戻るシド。怪物の叫び声、弾丸の音。すぐそばで妙な音がする。嫌な予感がして振り返るリタ。

「ちょっと、何でこんなところに……、キースが食べられちゃう!」

四駆の後ろから、鈍い音とともに、怪物が現れる。目も鼻もない大きな肉塊に恐ろしい口とでたらめな手足が生えた奴だ。動きは鈍いが、人間の匂いを嗅ぎつけ、迫ってくる。そして触手を伸ばし、キースの体に巻きつこうとしている。

「ちょっと、そこのデカぶつ、ハンドさん、あなた武器は無いの、何とかならないの」

リタ、怪物から、離れる。ハンド、リタを守ろうとするが、キースには近付かない。

「あんたも腰抜けの仲間なの、私の弟が怪物に食われちゃうでしょう」

「おとうと…?」

「ちょっと、便利屋さん、何でこんな役立たずを置いていったのよ」

リタは、四駆に積んであったカバンを引っ張り出し、怪物に投げつける。あたりに散乱する工具やメモなど。怪物は一向にひるまない。

「バカ野郎あっち行け、くたばれ化け物め」

工具等をぶつけるリタ、だが怪物は少しずつキースに近づいていく。ハンドに駆けよるリタ。

「ね、お願いだから、弟を助けて。ね、お願いハンドさん」

「ハンドは、おとうと……たすける……」

ハンドの目が金属的に光る。するとハンドの右腕が回転しながらジェットアームへと変化して行く。袖が破れ強力なアームウェポンが現れリタは言葉を失う。

「ロックオン完了。ジェットパンチ!」

ものすごい推進音とともに、右手が怪物に打ち出され、怪物は後ろの壁まで吹っ飛ばされて、しかも粉々に吹き飛んだ。あまりの威力に凍りつくリタ。シドとモリヤが両親を担いで出てくる。

シドが叫ぶ。

「どうした。何があったんだ」

振り返るハンドとリタ。

「派手にやりやがったな。まずい、はやくずらかろう。ハンド、お前!右手を早く回収しろ。今、イネスから連絡が入った、特殊処理班や、軍の部隊が、すぐそこまで来ているってさ。やつらに見つかると面倒なことになる…」

町の上空を飛ぶヘリ、全身防護服に身を包んだ特殊処理班の車両や、アキレスの部隊の乗った軍用車が住宅地を走り回る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る