第4話 巨大キノコ

 ここは、中央情報局の司令室。壁にたくさんのモニター画面が並び、そこに今回の爆発事件のいろいろな場面が映し出されている。情報局局長とアレックス・ラボのアレックス博士がそれを見ている。

 特殊処理班の司令のサキシマ技術官が説明をしている。

「予想通り爆発から生まれたボムモンスターは、普通の銃弾や重火器を使うと爆発や誘発を起こす可能性が高く、今回も第一爆発地点の公園で駆けつけた軍の発砲により最初の爆発。その衝撃を受けて、近くで二次的な爆発が起きてしまいました。非常に危険です」

 局長がサキシマ技術官に尋ねる。

「銃を使うと危険? ではどのような処置が適切なのかね」

「小さな個体なら物理的に切り刻み、固い外殻を無効にし、さらに冷凍処理や薬品処理が有効です。近いうちに強力な薬品も実践で使えるようになります」

すると情報局長が慎重に言葉を選びながら尋ねた。

「それで、今回の事件はやはりレベル9から盗まれた遺伝子情報と細胞のサンプルによって引き起こされたものなのかね」

「はい、遺伝子がすべて一致いたしました。テロ組織のやつらがレベル9のサンプルをもとに作ったのが、今回のバイオボムに相違ありません。」

「もともと、体中のどの細胞にも融合、変化できるスーパー汎用細胞として、世紀の発明と言われたものだったがこんなことに利用されるとは…。だが、実際あの細胞は増殖暴走することがわかって、封印されていたのだが…。」

「まさに増殖暴走した結果が、あの手足の生えた肉塊です。爆発のあと、ちぎれた肉塊が増殖し、固い外殻を持った怪物となって歩き出す。動く爆弾です。」

アレックス博士が、大きくうなずく。

「そこで、アンドロイドを開発した私の出番というわけか」

「今回もアキレスのセラミックカッターが、現場では大活躍でした。しかし、見ていただきたいのはこちらです」

アレックス博士が画面を見て動揺する。

「こ、これは……」

画面に美しい花に囲まれた郊外の公園が映る。その画面の奥に、3m以上ある巨大なキノコ状の物体が確認できる。

「例の花屋の軽トラックを追跡し、テロ組織のアジトを突きとめたのですが、すでにもぬけのからで……。でも堆肥を作っていた小屋の中で、巨大な増殖体が発見されました。このクラスになると外殻が分厚く、アキレスのセラミックカッター程度では切断が難しく、また時間もかかり、このあたり一帯を吹き飛ばすほどの爆発力を考え合わせると、もはや今の装備ではとても……」

「なるほど、そこでこの巨大なクリーチャーボムにも対応した装備を開発しようということなのだね」

「はい、効率よく迅速に誘爆せずに目標物を処理できる装備が必要なのです」

局長が博士に頭を下げる。

「アレックス博士、無理なお願いですが、この中央情報局も最大限の協力をいたします」

「わかりました、さっそくとりかかりましょう」

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