正義のためなら人を殺しても構わない奴ら

ウソツキヒーロー

「……行ってきます」

私は音葉おとは。女子高生。


学校に、行きたくない。


私はクラスメイト全員からいじめられている。

周りの大人になんて言えない。怖いから。いじめられるから。

もう嫌だ。死にたい。



学校に着いた。

「よぉボサボサ!」

クラスのリーダーの女子『理香』が話しかけてくる。私の髪の毛はボサボサ。だからこんなあだ名がついた。

「返事しねーしw耳悪www」

「聞こえねーフリする弱い奴なんだよw」

「っていうかコイツは変人だろw」

「「「「「あははwww」」」」」

最悪。先生早く来てくれ。先生が来たら大人しく席に座るんだ。

「そーいやお前の家貧乏だっけw」

嘘が上手い男子『創太』が笑う。

「な……そんなこと……」

「ないなんて言わせねーよ?黙れボサボサ!」


「え~アイツ貧乏だったんだ」「ヤバイヤバイ」「駄目だコイツ」


ひそひそ。

ひそひそ。


やめてくれ。

このいじめは理香が提案した。創太が嘘でエスカレートさせた。

他の奴はそれを黙って信じこむだけ。

みんな騙されていることに気付かず愚かだ……。


ガラッ


先生が来た。みんな静まる。猫被りやがって。



「今日は転校生を紹介する」

え?転校生?最悪。いじめっ子が増える。

「入ってこい」


ガラッ


「どうも!正美です!正義感強いよ!よろしく!」

正義感……!

「じゃあ席は……音葉の隣で。」

「はいはい!あの娘ね!」

みんなまたひそひそ。辛いが、幸いにも正美さんには聞こえてなさそう。

「よろしくね!音葉ちゃん!」

「よ、よろしく……正美さん……」

「じゃあ転校生も紹介したし授業を……」

こうして授業が始まった。



休憩時間。

「正美さん!」

「正美ちゃんでいいよ。何?音葉ちゃん?」

正美さ……ちゃんがいじめっ子達にそそのかされる前に。

「相談があって……校舎裏行こう!」

「え?う、うん」

いじめっ子達に気付かれないよう私と正美ちゃんは校舎裏へ行った。



「実は……」

私は全て打ち明けた。正美ちゃんは相づちを打ってくれる。

優しい……。

「……ってわけで。」

「そうなんだ。大丈夫。私が何とかするよ!」

張った声に自信を持った。



休憩時間はまだ残っていた。

「あーボサボサ!正美ちゃん!」

理香……正美に早速『ちゃん』付けて仲良くなる作戦か……!

「ボサボサといるといいことないよ?こっちおいで?」

舌打ちしたいのを全力で抑えた。

正美ちゃんを見る。

『これがいじめか』と言うようにニヤリと笑った。そして言った。


「私は音葉ちゃんに『創太は変態』っていう情報を貰っただけ。」


教室が静まり返る。

全員創太の方を見た。

「え……俺……」

「ボサボサ……本当かそれ……?」

正美ちゃんが私の脇腹を肘でつつく。

「う、うん。」

「確か理香の体操服を……」

「嗅いでた。私見たもん。」

私は正美ちゃんの嘘に乗るしかなかった。自分でも何言ってるか分からない。

「そ、そんなこと……!」

「ないなんて言わせねーよ?黙れ変態!」

創太が言葉を失う。

少し頬緩んだ。が……


「ボサボサもボサボサ。キモい場面見るんじゃねー。」


理香……!

正美ちゃん……正美ちゃん!?すごい形相で理香を睨んで……

「創太は仲間外れ。もちろんボサボサも。」

みんな信じこんでいる。私は呆然とするしかなかった。



次の日から創太は不登校になった。


そしてまた次の日。クラスメイトが数人不登校になった。


またまた次の日。またクラスメイトが数人不登校になったのは言うまでもない。



ついに一気に減って私と正美ちゃんと理香の3人という域にまで達してしまった。

先生が唖然とする。急に教室を飛び出した。

「どう……して……」

それしか言えなかった。

「アイツらは私が仲間外れにした。ボサボサもとっとと不登校になれ。」

へ……?


理香も教室を出て、私と正美ちゃん2人きり。


「助けて正美ちゃ……」


「とうとう3人か!私の嘘も上手いな!待ってろ音葉!リーダーをその部下が倒してやる!」


……へ?へ?まさかみんな正美ちゃんの嘘で不登校に……?

「でも……でも……」


「私は正美!正義感強い!ヒーローだもん!」


私は頷くしかなかった。

しばらくして理香と先生が帰ってきた。

クラスは一旦解散ってことになった。



私は別れたフリして正美ちゃんについていった。

気付かれないように……。

空地に理香が立っている。正美ちゃんはそこに入った。聞き耳を立てる。


「遅かったね正美ちゃん。何の用?ボサボサがやっぱり気に食わない?」

「いじめ、やめろ!」

「……成る程。まだアイツの味方か。もうすっかりやめたかと思った。」

「生意気だね!私はヒーロー。あんたを綺麗にしてあげる!」


正美ちゃんが何かを取り出した。

よく見た私は……驚いた。

「正美ちゃ……それ……」

「理香?何を怯えているの?音葉の方がよっぽど怖い思いをしていたのに。」


正美ちゃんが持っていたのは女ヒーローが使いそうな桃色に光る杖。

理香に向かって勢いよく振り下ろす。


呻き声も上げず倒れた悪。

悪の被害者はただただ立ち尽くすだけ。

紅く染まってレベルアップしたヒーローは密かに微笑んだ。


私は喜んでいいの?

彼女は正義のヒーローなの?それとも……

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