エンプティーメトロ、フューチャーエクスプレス

「……あの電車も違う」

私はここで電車を待っている。でも……必要な電車は見つからない。


この駅から出たい。

この駅はヤバイ。壁には亀裂が入り、苔が生えまくり。何なのか分からない液体が天井からポタポタと降ってくる。

この駅は絶対もうすぐ壊れる。その前に必要な電車を見つけなくちゃ。


でも……適当な電車に乗って『やっぱりこの電車は違う』と途中で降りたら、ここと同じような廃墟チックな駅でまた電車を待つことになる。そう、このメトロは本当のゴールこそ明るいのだ。


この駅が壊れたら迷惑がかかる……


白いワンピースの裾をぎゅっと握る。

「あれも違う。」

今日も何回も何回も呟くのだろうか……


どうせ電車が見つからないなら電車探しを諦めてこの駅を自分の手で壊してしまおうか。

私が立ち上がろうとした時。ふわっと私の長く黒い髪の毛が風になびく。


……電車。それは必要な。


「……やった。やっと見つけた!」

私は自信を持てた。髪を結い、電車に乗る。


電車が出発する。地下を走っていく。

乗ってると色々なことがある。

減速することもある。

他の電車に心を奪われそうになることもある。

明るい外が見えそうで見えないこともある。

でもその全てを我慢した。自分の電車に乗って自分の電車のゴールを掴みたい。


そして出てきた明るい場所。

そこの景色は綺麗だった……

たまに汚くなるけど、それでも美しい景色。色々な困難を乗り越えて掴んだ電車のゴール。結った髪が風になびく。


これが私の乗ってきた電車……


空っぽの地下鉄エンプティーメトロを抜けた、将来への特急フューチャーエクスプレスのゴール。

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