ハーメルンの死神② 一万円札と百円玉

「なんだ、これっぽっちしか入ってないのかよ」



泣きわめく相手。

「やめて」と言われて、やめる馬鹿がいるか。

「返して」と言われて、返す馬鹿がいるか。

他人の宝は、自分の宝にしてしまいたい。

だが今回のターゲットは、少ししか持っていなかったんだ。

明日たくさん持ってくるように脅す。

それは、あっけなく簡単だった。

例えそのまま殺したって、俺は未来ある子供だから許される。

大人にしか見向きしない甘い世界。




毎日のように続く。

俺はこの数日間で何粒の涙を見ただろう。

分からないが、宝だけは数えられる。

確かに数えることができる。

また一人、ターゲットになる。

子供のうちにしかできない体験。




でもそんな甘い世界を不満に思ってる奴もいるらしいな。




突然の問い。


「あなたが落としたのは、この一万円札ですか?この百円玉ですか?」


……いつの間に落としていたんだ。

おそらくどっちも俺の財布から落とした。

数えてみたら、確かに一万円と百円、足りなかった。

毎日のように数えて優越感に浸るのが大好きだから、数は覚えている。

これは、どっちも俺の宝。

……金。


「どっちも俺の金だ」


「ウソつき」


どうしてそんなことが言えるのだろう。

冗談はよしてくれ。


「冗談ではありません。これは……のお金です」


……俺が金を奪った奴の名前。

どうして知っているんだ。


「じゃ、僕もあなたからカツアゲしてよろしいですか?」

「……それで『いい』って言う馬鹿がいるか。」

「ですよね~」

「……なめやがって」




俺は殴ろうとした。

だが、奴は消えた。

逃げたのか。

否。




「あなたのような悪人に、命を持つ資格はない」




もう、遅い。

俺はあっけなく、カツアゲされた。

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