第3話

俺は布団に潜り込むと気絶する様に眠りに就いた。

もう、どうでもいいや。

『今はゆっくり休みたい。』そんな気分だった。


気が付くと午後4時を過ぎていてメッセージが届いていた。


『PCR検査の結果は陰性であると確定しました。』


ちょっとだけホッとした半面、今は動けない事の悔しさもこみあげてくる。

身体を起こしてみると朝より体温が下がったのか、寒気や頭痛も消えていた。

昼はサンドイッチしか食べていなかったのでなんとなくお腹も空いている。

そういえば食欲が出てくる事は回復している事だと言われた事があったっけ。


俺は病院から帰るときに買いだめした食料品をガサガサと漁る。

おにぎりと緑のたぬきに目がとまった。

そばってなんとなく健康的なイメージがある。

こんな事を思うのは俺だけか?

そういえば瑞希のメッセージに月見そばが振舞われるとか書いてあったのを思い出した。


みんなあの美味しいそばを食べているんだろうな。

そんな事を緑のたぬきにお湯を注ぎながら考えてしまった。

せっかくだから月見そばに近づけようと卵を割りいれる。

緑のたぬきから湯気が上がるとだしの香りも部屋に広がった。

でも、実家で食べた懐かしいそばとは少し違う。

思わずため息がこぼれてしまった。


カーテンを閉めようと窓から外を見ると月がもう上がっていた。

その月は少し欠けはじめているようだった。

きっとみんなも見ているんだろうな・・・


緑のたぬきのそばを一口すすったらスマホにメッセージが入ってきた。

瑞希が動画を撮って送ってくれたのだ。

中学時代の同級生も何人か写っていた。

卒業してまだ一年経ってないのに・・・

なんだか懐かしい。


俺は瑞希に『動画ありがとう、元気でたよ。PCR検査は陰性だったのでそのうち帰ります。』と返信しといた。


6時頃には月は影だけでほとんど見えなくなってしまった。

そしてまた月が現れ始めた頃、瑞希からもう一度メッセージが届いた。


〜~~~~~~~~~

お兄ちゃんはやく元気になってね。


神山さんといろいろお話し出来たよ~

お兄ちゃんの事いろいろ話しちゃた。

そしたら、ビデオ撮ってあるから大っきいスクリーンで観ようって言ってくれたよ。

神山さんが連絡先教えてくれた。

番号は070−XXXX−XXXXだって。

後で連絡してごらん。

それじゃ〜 頑張ってね。

〜~~~~~~~~~~


俺は瑞希に『ありがとう、頑張るよ。』って返信した。


俺の初恋はまだ終わっていない。

さぁ〜 一生懸命応援してくれた妹に報いる為にも頑張るぞ。

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君も同じ月を見てるんだね アオヤ @aoyashou

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