第4話

「長年私は皇太子殿下に尽くしてきた…

だから婚約破棄された時…辛かった…

でも、恨めない…資格がないのよ。」


私は膝の上に手を置き、握り拳を作る。

その上に、ポタポタと水滴が落ちた。


「彼女は…自慢の友達でお似合いの2人だもの…

身分も養子も頭も、礼儀作法も……私に、勝てる要素が何もない。」


私は知ってる…


小説の主人公は…彼女は、

友人が婚約者だと知って身を引こうとした。


ただ、それを分かっていても想いを止められないほど強かった。

そして、向こうが侯爵令嬢で私より身分が上で


勝ち目などなかった。


「長い間一緒にいたのに、受け身で、積極的にならなかった…私が悪いのよ」


私の言葉を聞いたメイドは、

私の肩に置いていた手に力を入れ、励ますようにさすった。


「どうかご自身を責めないでください…

婚約破棄されても毅然と対応したのはご立派でした。

今はいっぱい泣いて…気持ちが晴れたら、笑顔を見せてくださいませ。

旦那様も心配されて…だからこのお料理をお持ちしたのですから。」


私はそれを聞くと、彼女の胸に飛び込み、うわーんと大きな声で泣いた。


うどんを食べていると、冷えた心が溶けるような…そんな気がした。

そしてだからこそ、今こうして自分の心境を素直に話せているのだと思う。


そして、忘れていたことを思い出すことができた。



自分のことを誰かが見放したとしても、

必ず心配してくれる人がいることを。


そしてそれは…とても幸せなことだ。





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