第1話
「お嬢様…お食事の時間ですよ」
メイドがベッドの上で布団にくるまっている私に声を掛ける。
私は体制を変えることなく彼女に返事をする。
「ごめんなさい、私のことは放っておいて」
「しかし、もう何日も何もお召しになられていないじゃないですか。」
「何も食べる気がしないの、お願いだから放っておいて。」
メイドはなすすべもなく、部屋から出て行った。
婚約破棄を言い渡されたあの日から、
もう何もする気が起きない。
自分が悪いんだ。
婚約者だからこのまま結婚できるって…努力を怠った。
もし、もう少し早く前世のことを思い出して、
ここが小説の世界であることに気がつけたら、
何か変えることはできただろうか…
「…そんなことないか。」
前世でも似たようなことがあった。
自分の彼氏を、自分より美人で頭のいい友人にとられたことがある。
あの時も同じだ、付き合ってる事実にあぐらを描いて、
関係維持の努力を怠ってしまった。
小説の展開を知っていても、結果は同じだっただろうし、
彼らの気持ちを小説で知ってる分、動くことなんてできなかったと思う。
なんとも情けない話だ。
婚約破棄ともなれば、社交界では自分は笑われ者…行き場もない。
もう、立ち直れる気がしない。
…でも…前世のあの時は、
今と同じくらい落ち込んでたはずなのに、
次の日にはに立ち直ることができた気がする。
なんでだっけ…
確か、お兄ちゃんが何か差し入れを持ってきてくれたような…
赤い器に入った…こっちでは見たことのない料理…
あれは…なんだったっけ。
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