箱
3.14
箱
最近、何か、遠近感がおかしい…。
すぐそこにコップがある。取ろうと手を伸ばすが以外と近くにあり手を伸ばすほどの距離では、無いと気がつく。
他にも今、目の前にいる人間は、本当に人間なのか…。いや、本当に今、目の前に存在しているのか。中でも怖いのは、常に誰かに監視されているような気がする事だ。勿論病院にも行った。しかし結局は、薬を処方され特に何も変わらない。
私は、生まれてから何年経ったのだろうか。途中までは、覚えているがそっからは、靄がかかったようにまるで分からない。時間の感覚が無いように感じる。毎日、同じ風景を見ているかのような退屈感。いや、閉塞感。朝ごはんを食べ会社に行きそしてまた家に帰り、ご飯を食べ寝る。その繰り返しだ。
そういえば食べ物を食べるときも食べてる気がしない。空気を食べているかのようだ。。
中でも寝るときなんかがおかしい。
いつも決まった時間になると突然睡魔が襲ってき、つい寝てしまう。
ただ疲れて寝てしまうのならまだ良い。だが私の場合、脳に直接、睡眠薬を入れているような感覚だ。
そしてまた朝が来る。
朝の感覚も、もう分からない。
「はははは!何だねこの文はw?」
「いやぁ、あの被験体、α S22379の部屋にあったノートですよw。と、いっても部屋なんてものは、無くただ機械と映像投写機があるだけのだだっ広い空間ですけどね笑」
「ああ、あれかっ!そろそろ壊れる時期かと思っていたがもうそこまで来ていたか!」
「ほら、見てください、」
「んん?これは、今の監視カメラの映像かね?。ほぉ~、また何か文字を床に書いておるなぁ、。むむ?!。突然、無作為に部屋の中にある物を投げ飛ばし始めたぞ!」
「そうです、やつは、もう気づいているのかもしれません。今、その彼女がいる世界は、全てホログラム、光だけで作られた世界なんだと。勿論、目に見えるものも、全て光の集合体。
他にも様々な能力がある。
例えば、今彼女がカバンを持とうとする。その瞬間、機械がその手に、その人間が思うカバンに対する質感、圧力、反発力、そのさまざまな事を計算しそれに見合った物質を手に触れさせる。するとまるで今、カバンを持っているかの様に感じられる。
そして彼女は、その見合った物質について計算をしている時間の間に、今、目の前にある物体を触れられるのか試しているんです。」
「だから突然、周りにある物体に触れようと暴れだしたのか。不規則に物を触れようとすれば、機械も計算する時間が遅れる。もしその計算している間に物体に触れればまるで手が物体に貫通しているのかのように見える。勿論そんなことが起きないように幻覚作用や判断力を鈍らせる薬を投与しているのだがな。そしてその薬も気体化させ目に見えないようにする。まぁその副作用で突然眠ってしまうがな。」
「ならもう、そろそろ処分でいいですかね?」
「うむ、そうじゃな。まぁよく長生きしてくれたわ。では、α S22379についての研究データをまた送っといてくれ。あっそれと処分については、また後日、連絡する」
「はいっ、了解しました。」
そう言うと年老いた研究者は、また長い廊下を歩いていった。
「はぁ、にしてもすごいな…。」
彼は、今、被験体β Q365594を上から眺めている。その被験体の周りには、機械しか無いが。科学は、高度に発達し人間を飼い観察する事だって出来るようになった。なぜそんなことをするのか…。それは、小学生が虫やバッタを取って虫かごに入れるような事と同じさ。
まず人間に幻覚、平衡感覚などを鈍らせる薬を気体化させ吸わせる。そしてその人間の周りにあるもの全ては、ホログラムで形成させる。そうまるで目の前にコップがあるかのように見せるのだ。
触れるときは、さっき研究者が言っていたようにその人間にコップの様な物質を手に触れさせるのだ。そうするとまるで今、目の前にコップがあり手に触れている、という錯覚を起こす。他にも様々な事をしているがそれは、やめておこう。非人道的すぎるからな。
「この被験体β Q365594もまさか自分がこうやって大勢の研究者に観察されレポートを書かされているだなんて想像にもつかないだろうな。」
するとその横で「ぴちょんっ」と水槽の金魚が跳ねた。
「この金魚も自分が人間と言う生物に飼われているだなんて思わないだろうな。」
「コンッ」と軽く彼は、指で水槽を叩いた。すると金魚は、驚いたようにぐるぐると泳ぎだす。
するとその瞬間、ガタガタガタ、研究所が少し揺れた。
「まさかぁ、はは…。」
そういうとまた研究者は、長い廊下へと歩いていった。
箱 3.14 @3140905
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