どっちを選ぶ?
蓬莱蒼璃
赤?緑?
私には結婚を前提にお付き合いしている同棲中の彼氏がいる。
「ただいま」
疲れた様子で、帰ってきた。
「おかえりなさい。ご飯にする? お風呂にする?それとも......」
「先にお風呂入ってくるよ。ご飯の準備頼むわ」
私の頭を撫でると、お風呂へ行ってしまった。
仕方なく、ご飯の準備をしようと冷蔵庫を開ける。
「なにこれ。空っぽじゃん」
そこには食べ物ではなく、飲み物で埋め尽くされていた。
今日の夜ご飯、何にしようか考えてるとお風呂から上がった彼氏の姿があった。
「久々にカップ麺でいいんじゃね?」
作るのめんどくさいって思ってたし、カップ麺美味しいし......。
「じゃあ、すぐそこのコンビニ行こ」
急いで支度をし、彼氏の手をとった。
息を吐いた瞬間、白くなる。
もうこんなにも寒い季節になってしまった。
コンビニは歩いて、2、3分なため、すぐに着いた。
「どれにしようか。いっぱいあるから、迷っちゃうね」
「これなんていいんじゃないか?」
そう言って、差し出されたのは緑のたぬきだった。
「じゃあ、私はこっちにする」
「じゃあ、買って帰るか」
レジ袋の中に赤いたぬきと緑のたぬきが仲良くしている。
「ただいまー。今からお湯沸かすから、準備してて」
「了解」
お湯を沸かす音。袋を破る音だけが響いてる。
静かな時間を過ごす。
「お湯沸いたよ」
「じゃあ。3分待とうか」
3分という時間は長いようで、あっという間だった。
彼氏と一緒に過ごす時間は無言でも居心地がいい。
「できたよ。食べよう」
蓋をめくる。温かい美味しそうな湯気が漂う。
2人で麺をすする。
美味しいという顔をしながら、食べる彼氏を横目に私も食べる。
「そっちも少しちょうだい」
「じゃあ、半分こな」
1人で食べるのも美味しいけど、2人で食べるともっと美味しく感じてしまうから、不思議だ。
「こっちも美味しいね」
「そうだな」
少し思い詰めた感じで言った。
沈黙が流れる。
その沈黙が怖かった。
「俺とこの赤と緑みたいにずっと一緒に居てくれないか?」
どっちを選ぶ? 蓬莱蒼璃 @SouriHourai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます