第70話 事後処理3

「ぐ……。痛い、熱い」


 その後、俺は甘んじて奴隷紋を受けた。

 正直、俺には首輪にもならないと思う。

 それに、この世界の『奴隷』は、俺の知識と異なっている。

 かなり甘いと言うのが本音だ。それと主人は、エレナさんだしね。


 最悪、〈奴隷紋〉を"収納"してしまえばいい。

 いや……、そんなことをしたら、マジに殺されそうだな……。

 う~ん。今は従おう……。


 そのまま、食事を貰いに行く。

 村民は、俺の首の奴隷紋を見ると、クスクスと笑い出した。

 伝わっているのか……。まあ、いいんだけど。


 煮込み料理を一口飲む。


「……食材が増えていますね?」


「ああ、他の街に行っていたからね。多少買い込んだんだよ。資金は、ダニエル様から頂いたと聞いているよ」


 俺の不在の間に、多少の変化があったんだな。情報を得ないと。

 その後、食事を頂いた。調味料が充実して来ると、味も大分変って来る。食事で悩んだことはないけど、始めの塩味のみに比べれば、十分だとも思う。


 食事を終えたら、エルフの奴隷の元へ向かう。やっぱり、痩せていた。

 果物を渡すと、喜んで食べてくれた。

 聞いてみるか……。


「エルフ族とは、協定を結びました。歩きなら帰れますけど、どうしますか? 馬は、戦利品として貰いますので返せません。それと、武器防具もですね」


「……私の裏切り、もしくは命乞いは伝わっている。この村に住まわせて貰えないだろうか? 仕事を与えて貰えれば、貢献してみせる」


 伝わっているんだ?

 でも、そうなると……。


「食事はどうしますか? 果物なんてないですよ? 海藻だけで生活できますか?」


「……今、種が手に入った。食事は、なんとでもしてみせるよ。居場所を提供して貰いたい。それと、こちらから提供できる物は、多いと思う」


 分からないな。


「まず収穫は、数年先じゃないのですか?」


「見せた方が、早そうだね」


 そう言って、牢屋に入れられているエルフが、種を地面に植えると魔力を放出し始めた。

 それを観察する。

 一分ほどだろうか……、芽が出た!?


「魔法ですか? それも、植物を成長させる?」


「その認識で合っているよ。ただし、『土地の力』を急激に消耗させる。多用はできない」


 植物魔法とでも言えそうだな。

 それと、腐葉土とか合成窒素肥料が必要そうだな。

 でも……、植物操作か。これも、考え方次第だな。

 場合によっては、開拓村が一気に成長できる可能性を秘めている。


「責任者に説明して来ます。その芽は、植え替えられる状態で止めておいてください」


「君が理解してくれるので、助かるよ。それと、私も多少の『科学』の知識を持っている。貢献はできると思う」


 今の開拓村には、持ち合わせていない知識と魔法か。それと、このエルフは、アピールが上手いと感じた。

 見習わないとな……。


「なにしているんですか?」


 ここで、エレナさんが来た。

 経緯を話す。

 そして、エルフが開拓村への移住の意志があることを伝える。


「……また、勝手なことをして!」


「話をしただけですよ? これからヴォイド様に伺いを立てたいと思っていました」


「……今のトールさんの主人は、私なんですけどね~」


「うぐ!?」


 ビリっと痺れた。感電とかスタンガンみたいな痛みだ。これが、奴隷紋の効果?

 ダメだ。まだエレナさんは、怒りが収まらないらしい。


「失礼しました。まず、エレナさんに話すべきでしたね」


「よろしい」


 ふう……。今後、面倒だな。





 ヴォイド様は、捕まえたエルフの開放を許可してくれた。

 これで、彼も村民だ。

 それと名前だ。村民で話し合って、『シュナイダー』とした。見た目から決めたそうだ。


 シュナイダーさんには、まず食料となる果物が成る植物の成長を依頼をする。

 彼は、色々な魔法の使い手だった。特に、水魔法と土魔法のレベルが高いのだそうだ。

 植物の成長は、彼の固有ユニークスキルによるらしい。こればかりは、俺にも分からない。


「どれくらいで、実が成りますか?」


「樹は一本でいいのだし、十日程度で、終わるだろう。この土地は、森も深い。土地の力も手に入りやすいしね」


 大丈夫そうかな? 科学の知識もあると言っていたし。

 その後、シュナイダーさんは、村民の手伝いに行ってしまった。もう人の輪に入っているのか。この数日で信頼関係まで築いていたのかな……。


 さて……、俺は止まっていた仕事を始めるか。

 雪も解け出したし、海への道を完成させてしまおう。

 その前に……、許可だな……。


「エレナさんを探さないと」


 俺は、村長宅へ向かった。

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