きつねとたぬきの物語
白熊男
旅立ちの日
灰色の大きなおうちには赤いきつねと緑のたぬきがいました。
二人は同じ日に生まれ、同じように育てられました。
「明日はやっと外の世界に行くことができるんだな!」
緑のたぬきはそう言いました。
「そうね、外はどんなかんじなのかしら」
赤いきつねは緑のたぬきにそう答えました。
「そうだな、やっぱりおしゃれなたぬきやきつねがいるんじゃないか?」
「そうね、みんなおめかしして外の世界にいくものね」
赤いきつねも緑のたぬきも明日がとても楽しみでした。
次の日、朝早くに赤いきつねと緑のたぬきは起こされました。
「なんだなんだ?」
「きっとおめかしするのよ。外の世界にいくみんなは、きまって朝早くからおめかししていたでしょう?」
「そうか、もうすぐだもんな!」
部屋に連れていかれた赤いきつねと緑のたぬきはさっそく着替えさせてもらいました。
赤いきつねも緑のたぬきもお互い自分のおめかしした姿を見せたくてうずうずしています。
着替え終わった赤いきつねと緑のたぬきはさっそくおめかしした姿を自慢しました。
「見て! かっこいいだろう」
「ほんとうね。緑のたぬきにぴったりだわ。でもわたしのほうがずっと素敵よ」
「ほんとうだね! 赤いきつねにぴったりだ。でも、ぼくだって負けていないぞ」
赤いきつねと緑のたぬきは顔を見合わせるとくすくすと楽しそうに笑いました。
そろそろ外の世界に行く時間です。
「どきどきするな」
「えぇ、どんなところに行くのかしら?」
そして、二人で一緒に言いました。
「「どこに行くとしてもずっといっしょだよ!」」
初めて乗り物に乗った赤いきつねと緑のたぬきはきらきらした大きなおうちにやってきました。
「ここが新しいおうちなのね」
「大きなおうちだな!」
赤いきつねと緑のたぬきは嬉しそうにとびはねました。
数日後、赤いきつねと緑のたぬきは大きなものに掴まれました。
「わわっっ!?」
「あわてないで、きっとこれからお仕事なんだわ」
「そうだったな! これはお仕事が始まる合図だったよ」
赤いきつねと緑のたぬきは初仕事に大張り切りです。
赤いきつねと緑のたぬきはひとつのおうちにつきました。
「ここで仕事をするのか?」
「えぇ、そうよ。がんばりましょう」
「あぁ、そうだな!」
その後、赤いきつねと緑のたぬきは狭くて暗い場所で会いました。
「真っ暗でよく見えないぞ?」
「そうね、それになんだか眠くなってきたわ」
「なんだか、からだが温かいぞ?」
「わたしもよ」
その場に沈黙が訪れます。
緑のたぬきが口を開きました。
「ぼく、赤いきつねのことずっと好きだったんだ」
「あら、そうなの? わたしもよ」
赤いきつねと緑のたぬきは微笑みあいました。
幸せの満ちた空間で、赤いきつねと緑のたぬきはぽかぽかしながら深い眠りにつきました。
その時、
「ふぅ、おいしかった」
そんな声が外から聞こえてきたような気がします。
きつねとたぬきの物語 白熊男 @sirokumaotoko
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