第9章 真実

役目



 エマは温かなベッドの上にいた。誰かに手を握られていることに気付き、ゆっくりと視線を動かすと、シアンの瞳と目が合う。自然と顔が綻んだ。


 あぁ、ハイネだと、心が安心する。


「エマ。初めて会った時から――君は、随分成長したね」


 ハイネは、優しく目を細めて言った。


「君と出会えて、僕は幸せ者だ。本当に……心から、そう思っているよ」


 どうしたんだろう。何故、突然そんなことを言うの。


 尋ねようとしたけれど、上手く口を動かせない。


「でも、僕の役目はもう終わった。君が望んだ通り、死の謎は解けたからね。それにエマは、もうひとりで歩いて行けるだろう?」


 役目? ひとりって、何……?


「君は僕の誇りだ。ありがとう、エマ。あ、――……」


 何かを言おうとして、ハイネは飲み込み、代わりにエマの額にキスをした。そして手を離し、立ち上がる。引き留めようとしても、力が入らない。


 去っていくその背中に、届かない。

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