8話 おねしょ部屋の事実

それからは事件が特に起こらずにキャンプファイヤーが始まった。火をつけると、キャンプファイアーの周りに皆が集まってきてフォークダンスが始まる。

私も凛と渚と一緒に輪に入る。


「あ、香穂子ちゃんも来たんだ」

「うん、一緒に踊ろう」

「そうだね、今日くらい楽しまないとね」


私達は踊り始める。

 そしてダンスも終えると入浴も終えて夜になる。

私達は先生に言われた別室に向かう。そこは布団が多く敷かれており、既に何人か寝転んでいた。

 当たり前だが全員女子で学年の女子は全員で80人ほどなのだがその半分以上、45人ほどがこの部屋にいた。

私は思わず先生に訪ねる。


「なんでこの部屋はこんなに……もしまたおねしょしたら大変な事になるんじゃ……」


 私は心配を口にする。


けれど先生の返事は意外だった。


「大丈夫よ。この部屋の子達はおねしょが心配な子ばかりだから。言わばあなた達の仲間よ」「え?そうなんですか」

「そうよ。さっきお風呂で言ったでしょ。おねしょが恥ずかしくて言い出せないって」


そういえば言っていた気がする。


「確かに言ってましたけど」

「この子達は同じ悩みを抱えた子達だから大丈夫でしょ」

「でもおねしょで悩んでいる子達ってこんな多いなんて……」

「実はね。中学生でおねしょに悩んでいる女の子って凄く多いのよ」

「そうなんですか?」

「あまり表に出ないけど少なくても半分以上、もしかしたら8割以上の女の子がおねしょに悩んでるかもって説もあるのよ」

「そんなに……」

「そしてそのおねしょに悩む子はある特徴があるんだけどわかるかしら」

「特徴ですか」

「そう、その子達はみんな自分に自信が無い子が多いの」

「自分に対して自信が持てないってことでしょうか」

「そういう事。それで自分の失敗を隠すために周りの目を気にするようになって余計に自分を追い詰めてしまうの」

「じゃあ、この部屋にいるのはそんな子達と言うことですね」

「正解。香穂子ちゃんは頭がいいのね」

「いえ、それほどでは」

「そしておねしょに悩んでいる子はみんな内気でおとなしい子達でもあるの」

「それなら私達とも仲良くなれますかね」

「どうかしら。でも仮に一晩でも仲良く話せばきっと友達になれるわよ」


私達は先生と話をしながら就寝の準備をする。

しかし私は先生の言葉が少し引っかかった。


「ねえ、渚。私達と同じで明日香ちゃんもこの部屋にいるのかな」

「どうだろう。わからないや」

「いたとしても明日香ちゃんには話しかけにくいよね」

「まあ、そうかも」

「明日香ちゃん、まだ起きてるのかな」


私はふと明日香ちゃんの事を思い出す。

明日香ちゃんとは結局あれっきり話す機会が無かった。

そもそも明日香ちゃんの性格を考えると私達のグループに加わる事も難しいだろうし、無理して会話する必要も無いと思うのだけれど、それでも彼女の事がどうしても気になってしまう。


「あの、先生」

「何?」

「ここにいる人達の中に明日香ちゃんという人がいるかもしれないのですけど、どこに居るのかわかりませんか」

「明日香ちゃんね、彼女はおねしょはしてないらしいからこの部屋にはいないわ」

「そうなんですか。良かった」

「でも、彼女も香穂子ちゃんと同じように体調を崩したみたいだからね。だからもしかすると今夜あたりにおしっこを我慢できずに布団の中でお漏らししているかもね」

「え!? それは本当ですか!」

「さあ、どうかしら。とにかく今は疲れたでしょうからもう休みなさい。明日は朝早く起きるのよ」

「はい、分かりました。渚、そろそろ寝ようか」

「うん、そうだね。私も眠たくなってきたよ」


私達は布団に入る。

私は隣の布団に寝ている渚を見る。

「林間学校も今日で終わると思うとちょっと寂しいね」

「そうだね。明日は朝起きたらあとは帰るだけだし」「なんだかんだ言って楽しかったね林間学校は」

「そうだね。来年の修学旅行も楽しみだね」

「そうだね……zzZZ」

渚はすぐに寝息を立て始める。

私もすぐに眠くなって眠りにつく。

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