4話 肝試しで大失敗

そして夜になる。

夜は林間学校恒例の肝試しが行われる。

林間学校は一人ずつが順番に決められたルートを通って戻ってくるというものだ。

しかし、ただ戻るだけでは面白くないので、先生が脅かす役になっている。


「順番が来たら呼びに来るから、それまでここで待機していてくれ」

「はい」

「了解です」

「わかった」

「じゃあ、俺は次の奴を呼んでくる」

「お願いします」


それからしばらくして、私の番になった。


「次、月村さん」

「はい」


私は立ち上がると、先生と一緒にコースの入り口まで移動する。


「気を付けて行ってこいよ」

「はい」

「じゃあ、スタート」

「行ってくるね」


私は一人で森の中へと入って行った。

しばらく歩くと、スピーカーから声が流れてきた。


『さて、いよいよ始まります。今年も楽しいイベントになりそうですね』


その声に思わず体がビクッとなる。


「うぅ~、怖いよぉ」


泣きそうになるのを堪えながら、必死になって歩いた。

すると、突然大きな音が鳴り響いた。


『キャァアア!』

「ひっ!?」


びっくりして腰を抜かしそうになった。


「な、何? 今の音?」


周りを見渡すけど、特に何もない。


「気のせいかな」


再び歩き出そうとしたその時、今度は後ろの方でガサガサっと物音がした。


「きゃっ! な、何?」


恐る恐る振り返ると、そこには黒い影があった。


「ひぃいいいっ!」悲鳴を上げてしまう。


そして、私は一目散に逃げだした。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


夢中で走り続けた結果、なんとかゴール地点に戻って来ることが出来た。


「お帰りなさい。早かったわね」

「そうですか」

「えぇ。でも、顔色が悪いわよ。どうかしたの?」

「いえ、何でもありません」

「そう。なら、良いんだけど」

「はい」

「では、次は渚ちゃんね。行ってらっしゃい」

「はい。行ってきます」


 渚ちゃんが出発するがすぐに大きな悲鳴が聞こえる。

渚ちゃんの声だった。


「嫌ぁあああっ!!」


私は嫌な予感がしてすぐに駆け出す。

そしてすぐに渚を見つける。

ただ渚は尻餅をついて倒れており、お尻には水溜りが広がっていた。


「渚ちゃん大丈夫?」

「う、うん。でもどうしよう……漏らしちゃった」

「とりあえずタオルを貸すから拭いて」

「ありがとう」

「ねぇ、何かあったの?」

「そ、それが、いきなり男の人が出てきて、それで驚いて転んじゃって、その拍子におしっこが出ちゃったんだ」

「そうだったんだ」

「ごめんね香穂子ちゃん。私のせいで肝試しが台無しにしちゃって」

「気にしないで」


それから私たちは着替えを持ってきてもらって、急いで更衣室へと向かう。

途中でお漏らしをからかう声があり、渚ちゃんは沈んだ表情を見せるが優しく励ます。

 そして更衣室につく。

幸いにも誰もいない。

私たちは濡れた服を脱いで新しい服を着替える。


「あの、本当に申し訳ありませんでした。私がドジだからこんなことに」

「もう終わったことだからいいのよ。それに、もし肝試しが中止になったら、みんながっかりするだろうし」

「それはそうだよね」

「まぁ、これで終わりじゃないし、またみんなで一緒に来ましょう」

「うん」


それから私たち二人は仲良く戻って来た。

するとまた騒ぎがあった。

 様子を見るとなんと凛ちゃんがスカートに染みを作りながら泣いていて、それを周囲が軽く笑っていたのだ。


「ちょっとあなたたち、何を笑ってるんですか?」

「だって、あいつさっきの渚の時みたいにお漏らししてんだよ」

「あはははははは」

「まったく、恥ずかしくないのかしら」

「ホントだよな」


私は怒りに任せて怒鳴ってしまう。


「ふざけないでください! どうしてそんな酷いことを言えるんですか!? あなたの方こそ恥を知りなさい!」


その言葉に、凛ちゃんをいじめていた人たちの顔色が青くなる。


「ち、違う。俺たちは別に」

「言い訳は無用です! 謝らないなら先生を呼びますよ」


私の剣幕に押されて、いじめっ子たちは逃げていった。

その後、凛ちゃんを更衣室に連れていく。


「ほら、早く着替えないと風邪を引いてしまいますよ」

「うん、わかった」

「それじゃ、着替えが終わったら皆で集合場所に戻りましょう」

「うん。ありがとう」

「いえ」

「それと、ごめんね。私のせいで迷惑かけて」

「気にしないで下さい。それよりも、これからも困ったことがあったら言ってください。力になりますから」

「うん、ありがとう」

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