3話 林間学校の幕開け
それから私は林間学校に向かった。
バスに乗ってしばらくすると、隣に座っていた子が話しかけてきた。
「ねぇ、月村さん」
「はい」
「さっきの話なんだけど、本当に大丈夫だと思う?」
「うーん」
正直わからない。
でも、今更頼んでしまった以上、もう後戻りはできない。
「多分大丈夫じゃないかな」
「本当かな」
「だって、保険委員のあなたが何とかしてくれるでしょ」
「まぁ、それはそうだけど」
「なら、きっと大丈夫だよ」
「だと良いけど」
そんな話をしているうちに目的地に到着した。
「それでは、皆さん降りてください」
私たちは荷物を持って降りた。
天気は晴天で林間学校日和だった。
「みんな揃ったな。よし、行くぞ」
「はい」
私たちのグループはバスを降りると、まずチェックポイントであるキャンプ場へと向かった。
「ここが最初のチェックポイントだ。スタンプを押しておいてくれ」
「わかりました」
「それと、トイレに行きたい者は行っておくように」
「はい」
「あと、水分補給をしっかりとな」
「はい」
「じゃあ、出発!」
いよいよ始まった。
私は緊張しながらもグループについていった。
山道を歩いていると、段々と尿意が強くなってきた。
(うぅ……やっぱり漏れちゃうかも)
私は前を歩く人に気づかれないよう、そっと股間を手で押さえた。
「月村さん、どうしたの?」
隣の子に声をかけられた。
「ううん、何でもない」
「そう、ならいいけど」
「心配してくれてありがと」
「どういたしまして」
私はまた歩き出した。
しかし、一向に尿意が治まらない。
むしろ強くなっている気がする。
「月村さん、大丈夫?」
「え? うん、大丈夫」
そう答えたものの、とても我慢できそうにない。
私は立ち止まって周りを見渡した。
近くにトイレはない。
この辺には公衆便所もない。
「ちょっと待ってて」
私はそう言うと、グループの子たちに言った。
「ごめんなさい。私、体調が悪いみたいだから、先に行っててくれる?」
「え、そうなの。わかった。じゃあ、先に行くわね」
「お願いします」
「無理しないでね」
「わかってます」
グループの子は先に歩いて行った。
これで一人になった。
「ふぅ、やっと行ける」
私は近くの木陰へと移動して、そこで用を足すことにした。
ズボンを脱ぎ、パンツに手をかけたその時だった。
「月村さん」
「きゃっ!?」
突然声をかけられたので、驚いて悲鳴を上げてしまった。
振り向くと、そこには凛ちゃんがいた。
「り、りんちゃん。どうしてここに?」
「どうしてって、私もトイレ行きたかったからよ」
「そ、そうなんだ」
「それより、こんなところで何やってるの?」
「え? 別に何も……」
「嘘ね。何を隠してるの?」
「な、何にも隠してなんか……」
「そう、ならいいけど」
「う、うん」
「とにかく、早く済ませましょう」
「そうだね」
私たちは急いでその場を離れた。
「ねぇ、月村さん」
「何?」
「さっきのことなんだけど、おねしょとか言ってなかった?」
「う、うん」
「どういうこと?」
「実はね……」
私は林間学校の朝にお漏らししたことや、保険委員の子に相談したことを話した。
「そういうことだったの」
「うん」
「でも、そんなこと言って大丈夫なのかしら」
「大丈夫じゃないと思う。でも、もう頼んじゃったし」
「そうよね。それに、こういう時こそあなたがしっかりしないと」
「そうだけど」
「大丈夫よ。私がついてるわ」
「ありがとう」
「気にしないで。それよりも、もうすぐトイレに着くわ」
「本当だ」
私たちがトイレに入ると、そこは誰もいなかった。
「ラッキー、貸し切り状態だ」
「良かったわね」
「うん。じゃあ、一緒に入ろうか」「えぇ」
私たち二人は個室に入った。
「ふぅ、間に合った」
「本当にギリギリだったわね」
「だね。凛ちゃんのおかげだよ」
「どういたしまして」
その後何とかグループに合流することが出来た。
「遅いぞ」
「何かあったのか?」
「んー、まぁな」
「言えないような事?」
「違うって」
「じゃあ、なんなの?」
「それは……その、あれだ。色々あるんだよ」
「そうか」
「ふぅ、それじゃあ行くぞ」
こうして、私たちはスタンプラリーを再開した。
スタンプを五つ集めた後、最後のチェックポイントへと向かった。
「ここが最後になる。みんな準備はいいな」
「はい」
「よし、出発!」
チェックポイントは山の頂上にある。
道が険しく、途中で何度も休憩しながら上を目指した。
そして、ようやく山頂に着いた。
「着いたぜ」
「意外と楽勝だったな」
「あぁ」
「皆さん、頑張ってください」
「おう」
「わかりました」
こうして無事にスタンプラリーは終わる。
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