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「あの〜、あなた様が、ワタシを起こしてくれたのですか〜」


 そ、そうなんですよ。なんと、この人形と来た日には、私の方へ向き直ると共に喋ったんですよ。しかも、瞼だの口だの動かしながら。


「そ、そのようだが…キ、キミは、いったい何者だい…?」


 膝立ちのまま、少し距離を開けながら、私は彼女・・に尋ねた。


「はい〜、ワタシは史都しとです〜。かつてこのお屋敷で、永きに亘ってお茶汲みをしていた、伽羅倶利カラクリと呼ばれる人形です〜」


 ふむ、やはりカラクリ人形といえば、お茶汲みが定番か。


 だが、それがこうして会話まで出来るなんて…表情こそ固定されたままだが、その滑らかな手振りといい首振りといい、まるで現代のアンドロイドみたいだ。


 ただ先にも言ったが、こうしてここにあるということは、それが新しいものでないことは確か。


 となると、過去にもそんな技術があったことになるが…う〜む、凄い。


「おかげさまで、こうしてまた動くことが出来ました〜。どうもありがとうございます〜」


「い、いや、礼には及ばんが…」

  

 しっかし、ほんとよく出来てるなー。その場に正座するや史都とやらが、ぺこりと頭まで下げてきたわい。


「でも、史都さんとやら。実のところ当家では、お茶汲みとかは間に合ってるんで…」


 というより、《人形》が間に合ってるんだけどな。リリィもヒミコもいることだし…


「そうなんですか〜。でも、こうして一度巻いたからには、このワタシのゼンマイが切れるまで、およそ30年ほどかかります〜。なので、せめてそれまでは、あらためてこのお屋敷でお役に立ちたいと存じますが〜」


「な、なにっ、30年だって!?」

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