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「な、なんじゃこりゃ!」


 我ながらヒミコの時と、まったく同じリアクション。

 

 それもそのはず。その箱の中身が、やはり人の成れの果てのようでいて、これまた等身大の人形だったからである。


 うむ。なにやら振り袖姿の美少女人形が、かっと見開いた目で一点を見つめたまま、その箱の中に横たわっているのだ。


 う〜ん、そうだったか。やっぱり中身は人形だったか。


 で、あらためて見るに、それはあの市松人形のような、おかっぱのロングヘアなれど、顔立ちについては目がパッチリとしていて現代風である。


 ヒミコとはまた一味違って、なんともキュートな、おそらく10代後半くらいの設定かな。これは。


「いやま、ここにあるということは、古い物には違いないはずだが…それにしては、出来が良すぎるなー」


 おや、なんだこれは?


「ああ、こりゃひょっとして、ネジ巻きかな?」


 そう、玩具等ゼンマイ仕掛けのネジを巻くのに使う、あの双葉・・状の、しかもビッグサイズの金属製が、その人形の頭の裏に見え隠れしているのだ。


「なるほど、つまりは等身大の《カラクリ人形》なのかも知れんな、これは」


 で、このネジ巻きでゼンマイを巻いて動かすのだろう。きっと。


 そこで、興味本位。ひとまず私は、その人形を箱から取り出してみることにした。


 もし本当にカラクリ人形なら、ちょっと動かしてみたい気もするのでね。


「よっこら…と」


 うむ、割と重いが、ヒミコに比べれば半分もないかな。こりゃ。


 さて、まもなく私が、その人形を床に立たせようと試みれば…はい、ご覧の通り。それはスタンディング機能付きである。


「ふむ、ちょうど《お太鼓》のところに、ゼンマイの差し込み穴らしきものがあるな」


 それを膝立ちで窺う私。


 ああ、これは間違いなさそうだ。


 という訳で、箱の中に残った例のネジ巻きを手にしたが私は、それをその穴に差し込んでみた。


 うん、ぴったり。ではでは、巻いてみよう。


 かりっかりっかりっ…


 すると同じくして、


 うぃぃぃーん…かたかたかたっ…


 と、音を立て立て動き出したぞ。その人形が、本当に。


 おっと、どっこい。それだけじゃありません…!

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