第21話 番外編 お返しは複雑なお味


犬獣人達の朝は早い


まず朝起きたら顔を洗い、歯を磨く。

そしてその後犬獣人50名が寝泊まりしてる建物の中の掃除と外の掃除


その時近所の人達と少し会話をする


「ねえギンくん聞いてよ!この前ブーさんがやってくれた畑ね

もう芽が出てるのよ凄くない?あの人は本当に獣人なのかしら、、ひょっとしたら神様の使いなのかも」


「アハハ、、流石ブー様ですね」


うん、ブー様だから驚かない!あの方は本当に凄いお方だから


掃除と挨拶が終わると広場へ行き

朝食を作ってるブー様とイガーさんのお手伝い


「おはようございます!お水をテーブルに255個用意しますね」

「おはようギン、ヤマト」

「おう、早いな今日も」


早いのはお二人の方だよー何でもうスープが出来上がってるの?新人の僕らの方が遅いってどーゆー事!起きたの朝の4時だよ!早過ぎだよーお2人は


なんて言えない!明日はもっと早く起きなくては


「あー今朝もスープ美味しい。なっヤマト」

「うん!お米ってのも入ってて腹持ちいいし、何より温まるよね」

「この茶色いお味噌汁って奴にも最初は驚いたけどさ、もうコレじゃないと物足りないよね」

「うん、この前飲んだカルビスープってのも美味しかった。本当この村は食べ物は美味しいし、強くなれるし最高だよ」

「ああ、そうだな。来てよかったよ」

「さっ片づけ手伝ってイガーさん宅の火鶏の世話だ」

「ああ、今日は蹴られないようにしよう」

「意外と強いからなーあの鶏達」

「ケツ向けるとすぐだぜ、ホント困るよ」


料理をもらって、食べ終わったら各自洗って逆さまにしておく

この村ではソレが当たり前

小さい子も頑張って洗い物をしている


前の村ではこの村で当たり前にある蛇口って物が無かったから中腰で痛くなって困ったが

この村は色々な所に便利な物がある


キュッて捻ると水が出る、、本当に最高だ!

コレに慣れたら集落の洗い方が辛くなりそうだ


「あ、ヤマト悪いトイレ行ってくる!先行ってて」

「ああ、わかった」


しかしこのトイレも素晴らしい


集落では外の地面に穴を開けて、終わったら埋めるだけだった


だからたまに洞窟の中まで臭いが届く時があって本当に辛かった。


だけどここのトイレは木のクズと微生物ってのが

排泄物を処理してくれるみたいで嫌な匂いが無い


むしろ爽やかなハーブって薬草みたいな香りがする


多分コレもブー様なのだろう


ホントに色々な事を知っていて勉強になる


僕はブー様に仕える為に産まれて来たのかもしれない


そういえば、この前ブー様に「ハーブって良い香りですね」と言ったら

「それなら今度鶏の香草パン粉焼きを作るよ」と言われた


えっ、香草??鶏肉のパン粉焼き、、気になるー


ブー様のことだ絶対美味しいに決まってる、、


「一生付いていくぞー」


ドンドン、「叫んでないで早く出してくれ」





「コッコッコッコッ、、、コアアアアッー!」


「おっとあぶねー!へっへーん!イガーさんほど早くないけど僕らも犬獣人だ。

多少は動けるんだぜ!、、イタッ!」


避けた先でベチンッと衝撃がきたからやられたー!と思い振り向くとシタリ顔の火鶏


「コアアアアッ!」


「何なんだ全く!飯と水と掃除をしてるんだろっ!

そんなに怒るなら帰るぞ!」


「コッ?、、コッ、、、コッ、、コッ」


お!離れた、、これなら大丈夫だな


しかしこんなにおっきな玉子を産むなんて凄いな!

自分の顔くらいある卵を持ち上げて満足気なヤマト


コレを入れたスープの美味しい事!あとこの前ブー様が作ってくれた目玉焼きなる物も美味しかった!

ああ、この村に来れて本当に良かった!


「えっと、、その暖めてる卵はダメなんだよね?」


「ケアアアアッ!」


一生懸命暖めてる足下の卵を指差しながら聞いたら盛大に怒られたヤマトであった


「ごめん、ごめん、冗談だよ!いっぱい産んでね!いつもありがとう!また明日ね」


「コッ、コッ」


今4匹で暖めてるのが6個だから春には10匹になるんだね!

その次の年には16?そして22?

あっ、でも子供も成長したら赤ちゃん産むから、、

わあ〜火鶏がたくさんになるな!

毎日玉子を食べられるかも!そう思いながらニンマリ口角を上げるヤマトであった


そう言えばこの前ブー様が「この玉子で今度ふわとろオムライスと茶碗蒸し作るからねー」と言っていた


オムライスと茶碗蒸し、、とても気になる!


あっ!あともし僕がブー様の蜂みたいに従えるなら火鶏がいいな!

仲良くなって乗ってみたい!

きっと速いだろうなー!


そしえその上からクナイを「ハッ」と投げる


カッコいいだろうなー





豚獣人の朝はのんびりだ!

「ウゥッ、、腹減った、、、」

「スンッ、スンッ、、おい!良い匂いがしないか?」

「ああ、朝食ってヤツだ」

「早く行って食べ尽くさねば」


「お前達!!いつまで寝てやがる!さっさと起きてブー様を手伝うぞ!」


「、、、、おはよ、、トンゴ!ハァーねむっ」


「兄者、、リーダーである兄者がそれでは示しがつきません」ハァーと盛大に呆れて見せるトンゴ


「ブモーホッホ、、朝は苦手でな」


「笑い事ではありません!さあ早く」


「おう、、むっ、、何やら良い匂いがするな」


「皆先に食べております、我ら豚獣人が最後ですぞ」


「なにっ!それでは我らの分が無くなってしまうではないか」


「ですからっ!早く行きましょう」


「、、むう、もっと早く起こしてくれてもよかろう」


「俺は兄者の母上ではないっ!!」


「、、うっ!わかったからそう怒るな」


「いいから早く顔洗ってこーい」


「、、う、うむ、、」ドタドタと走りながら支度をする豚獣人達


重い物を運んだり、セメントを混ぜたり、力仕事はお手の物だが

朝は苦手みたい


毎朝怒る事になるトンゴはどうにかしてこの遅刻癖を治したいと真剣に悩むのである


そしてソレをブー様に相談したら皆んなが家から出るまで鳴り続ける強力な目覚ましをノム爺から貰える事になった!


「ありがとうございます!コレで皆さんに迷惑かけなくて済みます」ペコペコと頭を下げるトンゴ


しかし部屋が暖かくなる赤い魔石やら

目覚まし時計なる物を作ってくれたり

あっ、勿論食事は毎回美味しいわ、、つくづくこの村は凄い


この前なんか牛獣人のトムさんに呼ばれて行ってみれば

「モッツァレラ」なるチーズを手伝ったがアレは凄かった。

牛のお乳が温かくて柔らかいのに弾力があるではないか

アレを切って塩を振って食べた時の幸せったら、、


あぁ、、涎が、、


その事をブー様に話したら

「トンゴはチーズが好きなんだね!それなら今度ピザとチーズフォンデュにしよう!きっと気にいるよ」

と言われた


ああ、、ピザとチーズフォンデュなる物を早く食べたい、、、





「フー、、朝からお腹いっぱいになってしまった」


自分は底なしなのではないか?と疑って生きてきたが

人並みに満腹というものがあるのだな、と

この村に来て初めて知ったトンガである


もっとも2リットル近くお味噌汁を飲んだのだから当然といえば当然か、、


「しかも美味い!美味すぎる!

このスープも肉と野菜の旨味が茶色い味噌なる物と合わさって旨味の足し算が凄い」


しかも今度は大食い大会!とは


我のための大会ではないか


ブモーホッホ!どんな食材が来ようとも

このトンガ、必ずや優勝してブー様に認めてもらうとしよう


「たくさん食べて良いからね」と、我にいつも優しいブー様


あの方は神様だ


獣王神様がこの世に遣わした使いなのであろう


一生付いていきますぞ!ブー様


この村へ来て本当に良かった。


しかしこの前教えてくれた「ビーフシチュー」なる物が気になりますぞ!

「お肉がねートロトロなんだよ!もう歯がいらない位、、、」


「ブモー」思い出したら涎が出てきましたぞブー様


ビーフシチュー、、ビーフシチュー、、ビーフシチュー


「オムライス、茶碗蒸し」

「鶏の香草パン粉焼き」

「ピザ、チーズフォンデュ」


「「「「な、なんだ」」」」


「3人は何の魔法を唱えている?」

「ギンこそ何を喋ってたの?」

「兄者、、涎が、、」

「ブモー、、ビーフシチュー食いたい」



「「「「アッハッハ」」」」


「なんだお主らもブー様の料理の虜だったか」

「無論、この村は素晴らしい」

「そうだな」

「もはや故郷より良いのは明白」

「そうだな、、しかし我らは与えてもらうばかりでブー様にお返しはしてるか?」


トンガが気付く!


「え、、お返し?」

「ブー様へ?」

「いつもお世話になっておる」

「そのお返し?」


「「「「、、どうしよう、、、」」」」


4人は困った。ブー様にお返し?


一体何を贈れば喜んで貰えるのか検討がつかない


獲物を内緒で狩ってくるか。いや、喜ぶがそれではないな


なんだ?なんだ?、、我らは何をブー様へお返しが出来る?


悩んでも悩んでも出てこない4人


しかしとうとうヤマトが切り出しました


「あの、、美味しい料理は如何でしょう?」

「むっ?」

「美味しい物か」

「ブー様が喜ぶ食べ物」


そしてまた沈黙、、、



「はっ!そう言えば以前イガーさんが

ブーはハチミツってのに目がないんだ、と言ってましたね」


「ああ、俺がゴールデンにやられた時にすぐハチミツポーションなる物をくれたっけ」


「それだ!美味しい料理にハチミツポーションをかければ最高ではないか」


「うむ、美味しい物と美味しい物か、、それなら最高になるな」


「よーしっ皆んなで料理だー」


「「「「オー」」」」


「、、、」


「、、で、ハチミツポーションはどこだ?」


ズコッ




結局4人はイガーさんに相談して


イガーさんがブー様のハチミツをこっそり持ってきてくれる事になった


「ああ、流石イガーさん!ありがとうございます」


「イッシッシッシ、面白そうだから俺もやるぜ」


「ですが料理は我らにお任せください!これはお返しですから」


「ふーん、アイツはそんなお礼なんて望んでないけどな」


「しかし、我らがお礼をしたいのです」


「ま、その気持ちは嬉しいだろな」


「良かった」


という事でイガーは基本見てるだけになった!

ホントは料理なら色々手伝いたいのだが、いかんせん4人が手伝わないでと言うので仕方ない


「塩焼きだけじゃ物足りないないな!」

「そうだな、それだけだと一口だ!もっと食いたいよな」

「あのね、トンガさんとトンゴさんみたいにブー様は食べませんから」

「そうだな、俺たちより少し多いくらいか」

「ブーが食べないのは後でハチミツをいっぱい飲む為だぞ」


「「「「ええええー」」」」


イガーが衝撃的な事を言ったらしい


「じゃあハチミツ主体で考えた方がいいのかな」

「お味噌汁みたいに肉とか野菜入れようぜ」

「じゃあ、フルーツとかも」

「お米はいいな、腹持ちがいい」



え、ちょっとやばいんじゃないの?とイガーは思ったが

面白そうだから黙ってた


もちろん後ろの茂みに飛んでって隠れてゲラゲラ笑ってたけどね




ーーープレゼント渡す当日ーーーー


「あ、あの、、、ブー様」


「んー?なあに?ギン」


「ちょっと宜しいでしょうか?」


夕食も終わり、皆んなでまったりとしている時

今が最高の瞬間だと4人は判断した  


「「「「あの、、これ、、我々4人からの気持ちです」」」」


ブーの目の前に出された物、、、それは、、、



デカいスープ皿にお肉、野菜、フルーツ、お米、生卵、雑草、魚の目ん玉、なんかの骨、そして、、、それらを浸すハチミツらしき液体、、、


「ヒッ、、、、」


「「「「どうぞ遠慮なく食べてください」」」」


もはやイガーは遠慮なく笑い転げている


「アーハッハッハ、、イーシッシッシ、、、毒だ、、毒だ」


4人が顔を上げてブーを観ると


ゴゴゴがゴォぉぉぉぉ!!!ととんでもない魔力と殺意


「「「「ヒッ!」」」」


最初こそ驚いたブー、それだけならよかった

だがしかし!!よく観るとハチミツが使われているではありませんか。


それがいけなかった

ビーが大事に集めたハチミツをこんなゲテモノ料理にかけた

それこそが1番ブーが怒ってる原因である


「貴様らには、、、死を」


当然イガーも仲間だとみなされ


獣化したブーに追いかけ回されたのは言うまでもない


「「「「ギャー、、助けてー、、殺されるー」」」」


「待てーハチミツを盗んで使った罰だーオラァッ」


ドゴーンッと凄まじい土煙と音が村中に響き渡る



「「「「ギャー、、許してくださいー。。ブー様ァァァァー」」」」





イーシッシッシ、、だから俺が手伝うって言ったんだよ!アイツらアホだな


イーシッシッシ、、ヤベッこっち来た、逃げろ



「待てーイガー、、貴様も、、潰す」


「ヘヘッ、、やーなこったー」




結局スキル森之王を使われてどこからともなく現れた木の枝に捕まり呆気なく終わった4人のお返し大騒動


ブーに捕まったあとは


村中に響き渡るほど強いお尻ペンペンをされた5人



「「「「「ごめんなさい、もうしません、許してー」」」」




チャンチャン






「仕方ない、、コレからは僕とイガーで料理も教えていくからね!

今まで以上に頑張るように」


「「「「ハイッ」」」」



「えー、俺は料理作りたいのに、、、」


ゴチるイガーであった


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