#02 不穏



 俺は学校に着くとトイレに駆け込み、直ぐにサヤちゃんにメッセージを送る。


「タカコのバカが、土曜日デートしたこと察知してた。 アイツの口は羽毛よりも軽いから、何か聞かれても教えないでね」


「うん、わかった。気を付けるね」


 多分タカコは、俺から何も聞き出せないと分かったら、サヤちゃんから何か聞き出そうとするだろう。


 トイレから出て自分のクラスに向かい教室に入ると、さっそく俺の席に座ったタカコが隣に座るサヤちゃんに話しかけていた。



「サヤちゃん、ホントにチン毛マンと映画見ただけなの? 高校生のカップルが映画見ただけで終わりなんてありえないでしょ?」


「もうホントだから。 映画見て少しお喋りして帰っただけだから」


「いや~、信じられないなぁ。ホントはエッチなことでもしたんじゃないの???」


 急いで近寄り、後ろからタカコの右肩をガッツリと掴んだ。

 そして掴んだ手に力を込めながら「おいお前いい加減にしろよ? お前にかんけーねーだろ。俺たちに構うな」と怒りを抑えながら低い声で言うと


「痛い痛い!肩痛い! 女の子に乱暴するなんてサイテー!」と大声で騒ぎだしたので、腕掴んで無理矢理立たせて、持ってたカバンで背中押しやって、「あっち行け!シッシッ!」と追い払った。




 サヤちゃんと付き合い始めて初めての学校で、ホントだったら二人でテレながらも甘ずっぱい時間を過ごすはずだったのに、バカのせいで空気最悪。


 俺もサヤちゃんもタカコの目を警戒して、お互い会話がぎこちないし、恋人らしいこと何も無いまま一日が終わった。


 本当は二人で一緒に帰りたかったけど、タカコの目があるから、誘うことも出来なかった。







 それからしばらくそんな調子だった。


 サヤちゃんとは毎日学校で顔を会わせるのに、ぎこちない会話。

 でも、隣の席から僕にだけ微笑みかけてくれるのが救いだった。


 タカコは教室では相変わらず俺やサヤちゃんにつきまとい、しつこく聞き出そうとしていたが、その度に本気で怒り追い払った。



 だからサヤちゃんとは、学校であまり喋れない分、家に帰ってからは沢山通話やメッセージで会話したり、1度夜中に家を抜け出してサヤちゃんの家まで会いに行ったりもした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る